つと蛇(ツトヘビ)
いわゆる「ツチノコ」に類する呼称の一種である。「ツトッコ」、「槌蛇(ツチヘビ)」などとも言う。「ツチノコ」というのは槌(横槌)に似た形状を指していると思われるが、「ツトヘビ」の場合は藁苞に似た形状を指しているようである。藁苞というのは藁で造られた包装で、納豆を入れる藁容器のイメージが分かりやすいだろうか。呼称としては、古くは【一宵話(ひとよはなし)】の「異人」の項にも【封はツトヘビ、ソウタの類ならん】との記述がある。エピソードは駿河の話であるが、著者の秦鼎(はた かなえ)は美濃出身で尾張藩に仕え、編者の牧墨僊(まき ぼくせん)も尾張藩士である。東海地方では、ある程度馴染みのある名称だったかもしれない。外見の特徴は(個々には様々だが)ツチノコと似ているが、「竜神である」とか「毒がある」など、今日では、あまり印象にない特徴の記録も多い。新城市に伝わる話では、【長さ1~2尺(約30~60㎝)の太いものを目撃した後、寝込んでしまったので寺の人に見てもらうと、それは「ツトヘビ」というもので、竜神だから祀った方がよいと言われ、盛大にお祀りをした。今でも柿平に2匹居るという】【蛇の頭だけになったものが死なずに尾が生えたものだともいう。山や沢にいて強い毒を持ち、噛まれると命はない】、他にも【東門谷へ行く道で、ある男が藁を打つ槌ぐらいの大きさで、丈60㎝ほどのツト蛇(ツトヘビ)を見たという。(愛知県新城市)】や【大倉には太さ5寸・長さ1尺程の大きさのツト蛇(ツトヘビ)がいる。これはゴロンゴロンと転がっていく。昼に見た人は白かったと言い、夜に見た人は青かったという。田代と大ヶ蔵連の境にもいるという。(愛知県豊田市小原町)】や【ツチノコ(ツトヘビ)を見たという人がいる。(愛知県豊田市)】や【つと蛇(ツトヘビ)は太くて短いので、はって進めず横に転がって進む。それを見た者は悪寒に襲われたり、発熱したりした。(愛知県豊田市小原町)】や【薪を切っていたら、上のほうから大きな木が落ちてくる。よく見るとそれは大きなつと蛇(ツトヘビ)だった。(愛知県北設楽郡)】などの話がある。奥三河を中心に、愛知県の各地でこの呼称の記録が残る。
出典:
怪異・妖怪伝承データベース
日本怪異妖怪事典 中部(笠間書院)
作者ひとこと:
つと蛇のデザインは、藁苞の様な体の怪蛇の姿に描きました。
