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2019年10月28日月曜日

「チーローニア」



チーローニア

オーストラリアの先住民であるアボリジニの伝説に登場する、人間を貪り食う恐るべき怪物。チーローニアは犬の頭と人間の体を持った獣人の姿をしており、この怪物の腕は地面に引きずる程長い。首の皮はたるんでおり、たるんでいる皮が腹まで垂れ下がっている。いつもチーローニアはナラボー平原で人間を狩っては貪り食っていた。ある深刻な旱魃の時、人々は水を求めて、この辺りで唯一の水場に集まっていると、そこに雄のチーローニアが現れた。チーローニアを見て震え上がっている人々を尻目に、この怪物は屈んで水を飲み始めた。しかし大量に水を飲んだせいで嘔吐した。チーローニアが口から吐き出したのは、この辺りで行方不明になっていた人々の頭蓋骨や骨の残骸だった。チーローニアは周りで見ていた人々を睨みつけ、「今見た事を他で話したら生かしておけぬ」と言い放つと、茫然と立ち尽くす人々を残して水場から立ち去った。その晩、人々はこの人食い怪物から家族を守る為には何が出来るかを相談した。そして、この状況を救えるのは呪医である「ウィンジャーニング兄弟」をおいて他にいないという結論になり、さっそく兄弟は呼ばれて、人々からこの辺りの部族を守ってほしいと依頼された。それからウィンジャーニング兄弟の指示の元、人々は枝を集めて、集まった枝は水場に2列に積み上げられた。その後、人々は水場近くの岩陰に隠れ、戦士達は積み上げられた枝の山の背後に隠れて身構えた。夜が明け始める頃、チーローニアの群れが藪を抜けて、この水場に向かって来た先頭のチーローニアは水場近くの積み上げられた枝の山付近に来た瞬間に、ウィンジャーニング兄弟の一人が投げたブーメランによって、首を刎ねられた。続くチーローニア達もブーメランによって全て頭を刎ねられた。チーローニアを全て倒すと、倒されたチーローニアの尻尾が切り取られ、尻尾は枝の山に並べられた外から見ると、あたかもチーローニア達が獲物を追い詰めているかの様に見せたのである。間もなく、残っていたチーローニアが獲物を探して、この水場にやって来たが、積み上げられた枝の山の辺りに来た途端、隠れていた人々の棍棒はこの怪物の頭蓋骨を打ち砕いた。このチーローニアが死んだ後、今度はこのチーローニアの妻である雌のチーローニアがやって来た。しかしこのチーローニアも隠れていた戦士達によって体を切り裂かれた。こうしてチーローニア達は皆殺しにされたが、雌のチーローニアは事切れる前に子供を産んで、この子供が母親の腹から出て来た。しかし人々はこの子供を見逃してしまった。この子供は怪物蛇に変身して茂みの中へと這っていった。チーローニアはいなくなったが、今度はこの怪物蛇が人間を食べる様になった。

出典:
神魔精妖名辞典
世界の怪物・神獣事典(原書房)

作者ひとこと:
チーローニアのデザインは、犬頭の怪人の姿に描きました。

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