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2020年3月14日土曜日
「牛神」
牛神(ウシガミ)
日本で信仰されている神。今は農耕も機械化されて、日本では田畑で働く牛の姿を見る事はほとんど無くなった。しかし、戦後の高度成長期までは、牛は農業を支える重要な労働力として農民に親しまれ、農家の生活を支えていた。それだけに、人々は普段から牛の安全や無病息災を牛の守護神に祈願した。牛の守護神とされているのは、牛馬守護の「馬頭観音」や農業神として信仰される神々など様々だが、特に「牛神」として祀られる神も各地にみられる。近畿地方の農民の間で信仰されている農業神に「野神(ノガミ)」と呼ばれる神様がいる。この野神は本来、水神・農業神としての性格を持っており、豊作を守り、農耕の貴重な労働力である牛馬、特に牛を守る霊力を発揮する神であるともされている。野神の祭日の5月5日の節句には牛を連れてお参りし、牛の無病息災を祈願する習慣もある。この地方には野神の信仰と重なるように、牛神が数多く祀られている。おそらく牛神は元々、野神の一機能として信仰されていたものが、野神から次第に分かれて独立した名称で祀られるようになったものではないかと考えられる。そのきっかけは、自分の飼っている大事な牛が死んだ時に、その牛の霊を鎮魂する為に、野辺に石碑を立てて祀った事である。牛神の本性は農業神であり、牛の霊でもあるのだ。牛神が祀られている場所は、一般に村境、道の辻、山の麓、丘の上などである。その様な場所に「牛神」「牛神さま」と刻んだ石碑を納めた小祠が建っている。他にも石碑だけがぽつんと立っていたり、村境や、山と里の境にあたる場所にある塚や特徴のある樹木(松の老木など)が牛神とされている場合もある。牛神の祭日は、だいたい旧暦7月7日で、この日を「牛の盆」「牛の節句」と呼んで、牛に御馳走を食べさせたりして、牛神にお参りする。この祭りの主役が子供達である事も特徴で、子供達が麦藁で作った牛の人形を牛神に供えたりする習慣もある。もちろん、普段でも新しく牛を買った時、飼っている牛が妊娠した時、仔牛が産まれた時、牛が病気になった時など、ことあるごとに牛神に守護をお願いするのである。牛神は牛の安全や健康を守る神であり、そのご利益は牛の安全、無病息災、安産、仔牛の成育であるとされる。更に農業での豊作や、人々の家内安全にもご利益のある神でもあるとされる。また、牛神を祀る場所は、境の神や道祖神、馬頭観音などと共通する所が多い。これは牛神が境界神としての性格も持っているという事である。
出典:
日本の神々 多彩な民俗神たち(新紀元社)
作者ひとこと:
牛神のデザインは、沢山の御幣や大きな鈴などを付けた、牛の頭の姿の神に描きました。
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