ページ
▼
2020年3月16日月曜日
「犬頭霊神」
犬頭霊神(イヌカシラレイシン)
日本で信仰されている神。犬頭霊神は福神であり犬の霊であるとされ、犬を守り福をもたらす神であるとされている。古くから人間と共同生活を営んできた動物の中でも、犬は狩猟や警備などの役割と共に、精神的な面において人間と強い繋がりを持ってきた。特にその忠誠心の強さは、人間の心の支えとなり、時には人間の危難を救ったりして、多くの忠犬伝説などを生んでいる。また、その本性として備えている優れた嗅覚などからも霊力を持つと考えられてきた。不思議な神通力を発揮する霊的存在としての犬の伝説も生まれ、神に祀られる例も多い。特に霊威を発揮したと語られるのが白犬で、その白犬が神格化されたものが「犬頭霊神」と呼ばれて、愛知県岡崎市宮地町にある神社「糟目犬頭神社」の祭神とされている。社伝によれば、元は領主の飼っていた白犬であったといい、この白犬の伝説が残っている。天正年間(1573~1592)のこと、領主の「宇津左衛門五郎忠茂」が、愛犬の白犬を連れて狩りに出かけたところ、山中で邪気にあたって急に眠気に襲われ、近くの大樹の下で横になった。すると急に愛犬が耳元で激しく吠えた為、心地良い眠りを邪魔された事に激怒した忠茂は、刀を抜くなり犬の首を討ち落としてしまった。その途端に胴体から切り落とされてしまった犬の首は飛び上がって、樹上にいた大蛇に噛み付き、堪らず大蛇が落下した所を忠茂が刀で大蛇を斬り殺した。愛犬は、樹上から忠茂を眠らせて飲み込もうと狙っていた大蛇から主人を守ろうとしていたのである。それを知った忠茂は犬の忠義に感銘するとともに、はやまった自分の行為を悔やみ、その犬の首を葬った場所に社を建て、手厚く祀ったという。家の経済的困窮を助けて福(富)をもたらす話など、類似した忠犬伝説は各地に見られ、犬塚などと呼ばれて祀られている場合もある。また昔話や民話では、犬が地下から金銀財宝を掘り出す不思議な神通力が語られている。犬頭霊神の信仰も、犬の優れた忠誠心と富をもたらす神通力がミックスされて、招福の霊験があると信じられているのである。犬頭霊神は、犬の安全、福徳招来、家内安全などにご利益のある神であるとされている。
出典:
日本の神々 多彩な民俗神たち(新紀元社)
作者ひとこと:
犬頭霊神のデザインは、御幣と大きな鈴が付いた注連縄を付けた、頭だけの白犬の姿の神に描きました。
0 件のコメント:
コメントを投稿