ページ

2021年6月6日日曜日

「うんなん神」


うんなん神(ウンナンガミ)

日本で信仰されている神。日本は川や池沼が多く、そうした水辺に色々な水に関する神様が祀られている。うんなん神もそうした神霊で、「ウンナン」とは神の使いのウナギの事である。うんなん神の信仰は、東北地方の宮城県、岩手県を中心に広がっており、その大きな特徴として、古くから田の神として信仰されてきた「ホウリョウ神(法領神)」とうんなん神は兄弟神とされ、場所も近くに祀られる事が多い。ということは、うんなん神は田の神とも血縁関係といってもいいような、共通した機能を持っていると考える事が出来る。また、うんなん神が祀られている場所は、多くが湧水池、田んぼの近くの川や用水の側であったり、あるいは落雷があった跡などである。そうした要素から考えて、うんなん神の基本的な神格は水の神、田の神、雷神ということになる。トータルに見れば、農作物の成育に関係する農業神的性格を持っているということだ。ウナギは、縄文時代から食べられていた事が分かっているし、「万葉集」にも、夏痩せに効く栄養豊富な食物と考えられていた事を示す歌が読まれている。精力がつくとして生殖器崇拝と結び付き、夫婦円満や子宝などの信仰(虚空蔵菩薩信仰の一形態)の対象にもなっている。とにかく、その独特な姿や生態の不可思議さから、古くからなんとなく神秘的な目で人間に見られてきたのである。特に農民の間では、ウナギが洪水のたびに現れるので、これは洪水の権化なのではないかと考えられた。実は、川の氾濫後の水の引き際に、ウナギが田んぼに取り残されるのであるが、人々にとっては、恐ろしい災害をもたらす神の使いの様に思えたのだ。そこで、ウナギを神様として祀り、洪水を制御してもらおうという気持ちが生まれたのである。人々のそうした切実な思いに応じて、ウナギを神使とする虚空蔵菩薩信仰が結び付き、修験者や民間宗教家によってうんなん神として祀られる様になったと考えられている。うんなん神にまつわる伝説も、水の神の化身である竜や蛇、洪水、落雷といった農作に纏わるものが多い。特にその信仰の中心にあるのは、洪水の被害を回避し、救済してほしいと願う農民の願望である。なお、ウナギが虚空蔵菩薩の使いであると説かれる事から、ウナギを食べないという禁忌もあり、それに付随して、もしもそれを破ったりすると目がつぶれるなどの伝承もある。

出典:
日本の神々 多彩な民俗神たち(新紀元社)

作者ひとこと:
うんなん神のデザインは、龍の角の様な長い2本の触角が生えている鰻の様な姿の神に描きました。

0 件のコメント:

コメントを投稿