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2022年9月26日月曜日

「鎌鼬」


鎌鼬(カマイタチ)

窮奇、構太刀とも書かれる。日本各地で古くから知られている妖怪で、旋風(つむじかぜ)に乗って来ては人を切る魔獣である。野外で知らない間に鋭利な刃物で切った様な傷が出来るのは、この鎌鼬の仕業とされた。「想山著聞奇集」によれば、鎌鼬による傷は最初は痛みも出血もないが、後に激痛と大出血があり、死に至る場合もあるとしている。傷の大きさは大小色々で、白い骨が見えたというケースもあったらしい。傷は下半身に受ける事が多い事から、鎌鼬そのものは1尺(約30㎝)程しか飛び上がれないのではないかと記している。鎌鼬の伝承は北海道から本州、四国にかけてみられ、特に雪国に多い。地方によって、鎌鼬の正体が異なり、岐阜県の飛騨では鎌鼬の正体を3人の神として、1人目が人を倒し、2人目が切りつけ、3人目が薬を塗っていくので、切られても出血しないのだという。愛知県東部では、鎌鼬は旋風に乗って横行するもので、人の生き血を吸う為に傷つけるという。ここでは飯綱(イヅナ)とも呼び、昔、飯綱使いが弟子に飯綱の封じ方を伝授しなかった為に、逃げた飯綱がこうして悪さをするのだと伝わっている。「北越奇談」には、この現象は鬼神の刃に当たった事によるもので、故に構太刀と称するとある。現象そのものは同じでも、その正体などの説明は一様ではない事が分かる。また、何故か暦に関係した言い伝えもあり、新潟県西頚城郡や長野県北安曇郡では、暦を踏むと鎌鼬にあうと言い、東北地方には、鎌鼬の傷は古い暦を黒焼きにして、傷につけると治るとする土地があったという。鎌鼬は旋風中に真空空間が発生して起こる現象と言われるが、実験で証明されたわけではなく、いわば俗説にすぎないようである。鎌鼬は、両前足が鎌状になった鼬の妖怪であるともされる。非常に動きがすばやく、風の様に通り過ぎるとも言われてる。また、若いカップルがオープンカーで高速道路を走っていた時、女性の首が切断された。これは「カマイタチ」という怪異によるものなのだと言う。「学校の怪談大事典」(学校の怪談編集委員会編)に載る。同書には他に、腕をトラックの外に出して運転していた男がその腕をカマイタチによって切断された という話が載る。「怪異百物語6」(不思議な世界を考える会編)には、竜巻に入るとカマイタチに切られる、突風や旋風に当たると血は出ず痛みはないのに切り傷ができている、といった怪が報告されている。

出典:
日本妖怪大事典(角川書店)
図説 妖怪辞典(幻冬舎コミックス)
日本現代怪異事典(笠間書院)

作者ひとこと:
鎌鼬のデザインは、前脚が鎌の刃になった鼬の姿の妖怪に描きました。

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