ページ

2022年10月18日火曜日

「ヴァーマナ」


ヴァーマナ

インド神話に登場する神の内の1柱。ヴァーマナは「ヴィシュヌ」の化身(アヴァターラ)の内の1体である。宇宙維持の神であるヴィシュヌは、世の中が乱れて危機が訪れるたびに、様々に姿を変えて天下り、危機を解決する。ヴィシュヌの第五の化身が「小人の化身」ヴァーマナである。ヴァーマナは矮人、つまり小人の姿だが、妖精の様な手のひらサイズではなく、小柄な人間の少年と同じくらいの大きさである。このヴァーマナの神話は聖典「リグ・ヴェーダ」の「ヴィシュヌは全世界を三歩で歩く」という讃歌をベースにしており、「バーガヴァタ・プラーナ」などに登場する。その神話によると、「ダイティヤ」と呼ばれる巨人族の王「バリ」は、苦行によって神々を超える力を得て、天界・地上・地下の三界を支配した。この時、無垢の女神「アディティ」が神々の救済をヴィシュヌに願うと、ヴィシュヌはアディティの息子の少年僧ヴァーマナに化身してバリを訪ねた。僧の来訪を喜んだバリが「望みのものをなんでも与える」と言うとヴァーマナは「自分が三歩で歩けるだけの場所がほしい」と望んだ。小柄なヴァーマナに油断していたバリが、この望みを承諾すると、ヴァーマナは途端に巨大化。一歩目で地上を、二歩目で天界を踏み越えた。三歩目については諸説あり、三歩目は許してバリを地下に追放したとも、三歩目でバリを踏み潰したとも伝わっている。または、ある時、強力で賢明な悪魔バリが神々の長である「インドラ」の都を占領し、世界を我が物とした。そこでヴィシュヌは小人のヴァーマナの姿となってバリのもとを訪れ、「私が三歩で歩けるだけの土地をください」とバリに懇願した。バリは笑って、この懇願を承知するや、ヴァーマナは本来の巨大なヴィシュヌの姿を現した。何しろヴィシュヌと言えば、ヴェーダの昔から「三界を三歩で闊歩する」と言われた神である。ヴィシュヌは二歩歩くだけで世界を歩き尽くしてしまい、「さて、三歩目をどうしよう」と笑って言った。バリは跪いて自分の額を差し出し、その三歩目を受け止めた。そこでヴィシュヌもその神妙な行いを称えて、バリの王国までは取り上げなかったとも伝わる。

出典:
東洋神名事典(新紀元社)
ゼロからわかるインド神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
ヴァーマナのデザインは、背中に光背を持った小人の姿に描きました。

0 件のコメント:

コメントを投稿