ページ

2022年10月21日金曜日

「ルドラ」


ルドラ

インド神話に登場する神の内の1柱。ルドラは暴風を司る神である。このルドラは、赤褐色で屈強な体をもち、黄金の光を放ちながら、雄豚に乗る姿で描かれる。このルドラは破壊、暴風を象徴する神と言われているが、ただ破壊するだけではなく恵みをもたらすという面も併せ持っている。ルドラは、破壊行動を起こして、時には人々の命を奪う一方、薬を用いて人々の病を治療する素晴らしい薬師でもあった。この事から、破壊の暴風を巻き起こしながらも、同時に恵みの雨を降らせて湿潤な気候をもたらし作物を育てる、東南アジアの季節風モンスーンを神格化したものだと言われている。このルドラは、ヴェーダ時代(バラモン教)の神で「アスラ」に属する神であるという。ルドラの出生には複数の説がある。一説では、創造神「プラジャーパティ」を父、暁の女神「ウシャス」を母とすると言われているが、「プラーナ文献」によると創造神「ブラフマー」から生まれたとされる。ブラフマーは4神を創造したが、彼らは消極的で子孫を残そうとしなかった。そんな様子に立腹したブラフマーが怒りの炎に包まれて真っ赤になったその時、怒るブラフマーの強い思念から、太陽の様に強く光り輝くルドラが生まれた。また、別の物語によると、ブラフマーが自分の子を望んでいたところ、ブラフマーの膝上に青い顔色の子供が出現した。この子供は名前を欲しがって大声で叫んでいたので、ブラフマーは「ルドラ(叫ぶ、ほえるもの)」と名付けた。また、このルドラは、破壊神「シヴァ」の原型であると考えられている。「プラーナ文献」の中には、シヴァがルドラの事を自身の化身であると発言している記述がみられる。シヴァには「踊りの王」であるという一面があるが、ルドラも同じ様に歌や踊りの王とされている。ルドラは「リグ・ヴェーダ」に登場する暴風神である。ルドラの身体は赤褐色で、その身体を黄金の飾りで装い、手に持つ弓矢で敵を屠る。また時に、雷を象徴する「金剛杵」を持つ事もある。ルドラは、暴風雨神群「マルト」達の父でもある。一般にルドラは、破壊と恐怖の神とされるが、その一方で病を治療する神でもあり、ルドラの医薬によって百歳の長寿に達する事が祈願された。「リグ・ヴェーダ」においてはそれほど重要な神ではないが、後世シヴァとしてヒンドゥー教の主神となった。「ヴィシュヌ・プラーナ」によると、ルドラはブラフマーの怒りから生まれた。荒れ狂うルドラの体の半分は男性で、半分は女性であった。ルドラは自分自身を男と女に分け、更にそれらを十一に分割した。

出典:
神の文化史事典(白水社)
ゼロからわかるインド神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
ルドラのデザインは、四本の腕にそれぞれ、弓矢、金剛杵、三叉槍を持った鬼神の姿に描きました。

0 件のコメント:

コメントを投稿