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2022年12月29日木曜日

「猿猴」


猿猴(エンコウ)

日本の中国、四国地方に伝わる妖怪。「エンコ」「エーコ」とも言う。この猿猴は河童の類である。特に広島県、山口県、高知県に色濃い分布が見られる。猿猴は、「金物や蓼、人間の唾などを嫌う」「腕が伸縮する」「牛馬に悪戯する」「人間を襲って尻を抜く」、といった河童と同じような性質が語られ、猿猴は主に河川や池などにいるものとされるが、沿岸部の村では海にいるものとしている。文久3年(1863年)、土佐(高知県)幡多郡間崎の漁師達が生け捕ったという猿猴は、1歳くらいの童子の様だったという。鰻の様にぬめぬめした肌を持ち、顔と手の形は猿、指には長い爪があり、両足は人間に似ているが足首には爪が4つある。頭には長い毛が生え、顔の色は赤熊(しゃぐま)の様で、この猿猴に鯛をやると引き裂いて食ったそうである。桂井和雄の『土佐の山村の「妖物と怪異」』には、同じ土佐での変わった事例が見える。高知県長岡郡吉野川流域で、夜に漁り火をつけて川底の鰻などを捕っていると、市松人形(女の子の人形)が流れてきて、これを金突きで突くとにっこり笑ったという。この流れて来た市松人形は猿猴が化けたものとされる。河童と同じように、猿猴は好んで女性を犯す。猿猴の子供は頭に皿があり、歯が1本生えて産まれてくるといい、こうした子供は焼き殺すとされている。土佐には猿猴と同じく河童の類として「シバテン」という妖怪が伝わっているが、土佐郡土佐山村ではシバテンが旧暦6月7日の祇園の日に川に入って猿猴になると言われており、この日には川に好物の胡瓜を流すという。また、山口県萩市大島では「タキワロウ」という、山に3年、川に3年棲む妖怪がいて、これが海に入ると【エンコ】になるとされている。ここではエンコはよく唄を歌うと言われる。広島県広島市内には猿猴川という川が流れているが、ここの猿猴は老婆や若い女に化けて男を誑かすという。この川に河童に似た妖怪が出た事から、この妖怪を猿猴と呼ぶようになったという説もある。

出典:
日本妖怪大事典(角川書店)

作者ひとこと:
猿猴のデザインは、猿の様な姿をした河童に似た妖怪の姿に描きました。

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