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2020年2月29日土曜日
「あかなし様」
あかなし様(アカナシサマ)
日本で信仰されている神で、愛知県新城市玖老勢字小林で祀られている。あかなし様は千年以上の年を経た大蛇の神であるという。その昔、塩谷の人達が山仕事に出掛けた。そして一日、山仕事を終えて帰ってくる途中、水無沢に欅の大木が倒れているのを見かけ、その内一人の人が「おい、この欅の大木を辛灰にするといいぞ」と言い出したので、他の人達もこれに賛成し、この欅の大木を焼く事になった。辛灰というのは、欅、栗、樫などの木を焼いて作った灰の事で染め物の媒染剤として使われ、商品価値があり何よりな収入になった。そこで、この欅の大木も辛灰にしようと焼く準備をしだしたが、この欅の大木には大きな穴が空いていたので、この穴に枯木や落ち葉を詰めて、欅の大木に火を付けて帰って来た。翌朝、人々は早速、昨日火を付けて来た欅の大木のある水無沢へと向かった。そして欅の焼け具合はどうかなと思いながら、大木の側へと寄って行ってみると、欅の大木は綺麗に灰になっていた。人々は「おーい、具合よく焼け取るよ」、「そりゃあよかったな」などと言いながら、背負子に付けてきた袋を下ろして、袋に灰を詰め始めた。しかし、この灰は妙な事に生臭い匂いを発していた。更に灰の中からは何かの骨も出て来た。人々は不審に思いながらも、集めた灰を入れた袋を背負子に背負って、それぞれ家に持ち帰った。ところが、その日の晩から、辛灰を取りに行った人々に熱が出てうなされ出した。この熱が三日経っても、四日経っても治らなかったので、家の人達が心配しだし、近くの行者の所へ行って、行者にこの熱を診てもらった。すると行者は「これは古い長虫(蛇)の祟りだ」と言ったので、山から持って帰って来た辛灰を調べてみると、辛灰の中から骨が沢山出て来た。「これは鳳の窪の大蛇を焼き殺した骨だぞ」、「大変な事をしたものだ。この骨を全部集めて供養しない事には祟りが解けんぞ」と言い出し、人々は辛灰の中の骨を全部拾い集めて、その骨を石棺に入れて塩谷の一角に埋め、鳳来寺の念成坊に大蛇の供養を頼んだ。念成坊は大蛇に「浄障無垢大善神」の戒名を授け、この大蛇を丁寧に祀った。すると、あれ程うなされていた病人達はすっかり全快し、塩谷の人達は皆ほっとした。それからは、盆の15日が来ると、集落中の人がこの大蛇を祀った「浄障無垢大善神」=あかなし様の前に集まり、松明を焚き鉦を打ち鳴らしながら「鳳の窪の欅のもとに納まりて、今じゃ垢なし大明神」と唱えながら大蛇の供養をするようになった。
出典:
東三河を歩こう
作者ひとこと:
あかなし様のデザインは、大蛇の姿に描きました。年を経た古い大蛇という事で、下顎に髭が生えています。
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