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2020年10月28日水曜日

「媼」


媼(オン、オウ)

中国に伝わる怪物、妖怪の一種。媼は、羊、もしくは猪に似た姿をしており、地中に棲んでいる。人間の死体が埋葬されると媼は地中を移動して、その死体の所へ行き、その死体の脳味噌を食べる。秦の穆公(ボクコウ)の時代、陳倉(チンソウ。陝西省宝鶏市)の住民が地面を掘って、地中から異様な生き物が掘り出された。この生き物は、羊の様な猪の様な姿の奇妙な生き物であった。人々は、この奇妙な生き物を穆公に献上しようと、この生き物を引っ張って連れて行く内に、その道中で二人の子供に出会った。子供は、この奇妙な生き物を見て、人々に「これの名前は媼です。これは地中にいて、死人の脳を食べます。これを殺すつもりなら、この媼の頭に柏(ヒノキ類)の枝を突き刺せば媼は死にます」(媼の首に檜や児手柏の枝を突き刺すと媼は死ぬ、という説もある)と言った。すると媼が言い返し「あの二人の子供は名前を陳宝(チンポウ)と言って、男の子供の方を捕まえた者は王者になれるし、女の子供の方を捕まえた者は覇者になれるのだ」と言った。これを聞いた陳倉の人々は、媼を置き去りにして二人の子供を捕まえようとした。すると二人の子供の姿は雉となって飛んで逃げ去った。この事の次第を陳倉の人々が穆公に報告すると、穆公は、この報告を聞くとすぐに、大勢の人を集め、その二羽の雉が逃げた先の山を大々的に山狩りをした。そして遂に雌の雉を捕まえた。すると捕らえられた雌の雉は石に姿を変えた。そこで、その石を渭水の畔に祠を建てて、その中に置いた。一方、雄の雉は南方へと飛んで逃げて行き、落ち着いたのが河南省雉県の地であった。この様な事があった後より、雌雉が変じた石を祀った祠の祭日に、祠で祭祀が行われる度に雉県の方から、長さ十丈余りの赤い光が飛んで来て、祠の中に差し込み、雄雉の鳴き声が響く。

出典:
フランボワイヤン・ワールド
思いて学ばざれば(「光武帝と雉」のページ)
幻想世界の住人たちⅢ<中国編>(新紀元社)

作者ひとこと:
媼のデザインは、猪の牙と羊の角と体毛を持った姿の怪物に描きました。地中にいる妖怪なので、地中にいる虫の姿もイメージした姿にしました。

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