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2021年4月13日火曜日

「サンバイ様」


サンバイ様

日本で信仰されている神。サンバイ様は稲の豊穣の守り神で、田の神信仰の一形態である。季節が定期的に巡って来る様に、田の神も稲作の時期が始まると共にやって来る。昔から人々は、そうした神様の去来に合わせて、農事の折り目に田の神祭りを行って来た。一定の時期を外せば作物の順調な生育が妨げられ、秋の収穫も見込めなくなるから、神祭りは非常に大切な農作業の指標でもあったのだ。田の神祭りは、特に田植えの時期に盛んに行われる。この時期に中国・四国地方を中心とする西日本で田の神として祀られるのがサンバイ様である。サンバイ様という呼び名の「サンバイ」には、「三祓」「三束苗」という字が当てられる。これはサンバイ様への供物として三束の稲苗を捧げる事とも符合するが、その意味としては、「三」という数が強大なエネルギーを導く力があるという解釈もある。例えば、神道では「住吉三神」や「宗像三女神」などの有力神がいるし、仏教でも「三心(浄土への往生に必要な三つの心の事)」や「三途の川」など、非常に重要な意味を持つ数として使われている。また、一方でこのサンバイ様は片足神だとも言われる。一本足に象徴されるのは山の神であるから、山の神が水の神として里に降って田を潤し田の神となるという連関が成り立つ。サンバイ様を祀る行事は、一般に田植えの前後の二回行われる。最初は苗代の種蒔きの時に行う場合もあるが、初田植えの時が多い。これを「サンバイオロシ」と言い、降臨する田の神を迎え祀る事を意味している。そして二回目は田植えが終わった後に祀り、これを「サンバイアゲ」と言い、神様を祀りあげて丁重にお送りするのである。この時サンバイ様を祀る場所は、水田で最も重視される水の取り入れ口(「ミトグチ」とも呼ばれる)である。サンバイ様を祀る習慣のない地方では、普通この場所で「水口祭(ミナクチマツリ。田の神が降り立つ重要な場所が水口である。旧暦4月、苗代に種蒔きをする。その時に苗代の水口に棒を立て、その割口に焼き米をはさんだり、水口にヤマブキやツツジの花を供える風習が各地にある。また、田植えの時に水口祭をする地方も多い)」が行われる事が多く、祭祀の意味としてはほとんど共通している。祀る方法は、水口の畔に盛り土をして、そこに花のついた栗の枝などの木を挿し、三束の苗と供物を供えるといったものである。中国地方の田植え歌に唄われるサンバイ様は、季節によって姿を変える事が示されている。それによれば、正月には年神、三月には田の神、七月には七夕様として降臨するそうである。普通田の神というのは、常在するのではなく農事の折節に去来するとされており、その役割に応じて呼び名が変わるのは、ごく当たり前の事である。七夕様になるのは、疫病神や畑作物の収穫の守り神といった性格と関係が深い事を表すものである。さらに、歌の中にはサンバイ様が稲霊の婿神だと唄うものもある。また、子供が授かるようにと願う呪文の中に、サンバイ様の名が登場する事もあり、サンバイ様が稲霊として持つ生命力が、子授けの力として信仰される事もあるようである。

出典:
日本の神々 多彩な民俗神たち(新紀元社)

作者ひとこと:
サンバイ様のデザインは、頭から稲が生えている一本足の神の姿に描きました。

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