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2022年7月28日木曜日

「エリス」


エリス

ギリシア神話に登場する、不破と争いを司る女神。ホメーロスの叙事詩「イリアス」では、エリスは戦神「アレス」の妹とされ、ヘーシオドスの「神統記」では、エリスは夜の女神「ニュクス」が一人で生んだ娘とされている。ヒュギーヌス「神話集」では、夜のニュクスと闇のエレボスの娘に不和「ディスコルディア(エリス)」が生まれたとしている。エリスは戦場では、血と埃にまみれた鎧を着て、手には槍を持ち、口から火炎の息を吐く。またエリスは、通常、有翼の女性として描かれる。エリスは多くの災いの神々達の母となり、「ポノス(労苦)」「レーテー(忘却)」「リーモス(飢餓)」「アルゴス達(悲歎)」「ヒュスミーネー達(戦闘)」「マケー達(戦争)」「ポノス達(殺害)」「アンドロクタシアー達(殺人)」「ネイコス達(紛争)」「プセウドス達(虚言)」「ロゴス達(空言)」「アムピロギアー(口争)」「デュスノミアー(不法)」「アーテー(破滅)」「ホルコス(誓い)」を生んだ。ウェルギリウスによると、冥界の門の近くには有象無象の「オネイロス達(夢)」が絡まるニレの巨樹があり、周りには冥界の神々や怪物達が住み、血染めの紐で蛇の髪を結んだエリス(ディスコルディア)も、そこに住んでいる。ヘーシオドスは教訓詩「仕事と日々」の中で、二種のエリスについて書いている。片方のエリスは、忌まわしい戦いと抗争を蔓延させる「残忍なエリス」だが、もう片方のエリスは、夜の女神ニュクスが生んだ長女であり、怠け者も相手への羨望によって切磋琢磨する闘争心を掻き立てる、益のある「善きエリス」がいるとした。エリスは「イソップ寓話」にも不和や争いの寓意として登場している。ヘラクレスが旅をしていると、狭い道に林檎に似たものが落ちているのを見て、踏み潰そうとした。しかしそれは倍の大きさに膨れ、もっと力を入れて踏みつけ、棍棒で殴ると、更に大きく膨れ上がって道を塞いでしまった。呆然と立ちつくすヘラクレスのもとに、女神「アテナ」が現れて言った。「およしなさい。それはアポリア(困難)とエリス(争闘)です。相手にしなければ小さいままですが、相手にして争うと大きく膨れ上がるのです」。アントニヌス・リベラリス「変身物語集」では、パンダレオスの娘「アエドン」と大工「ポリュテクノス」は仲の良い夫婦だったが、「ゼウスとヘラよりも深く愛し合っている」と自慢したため、女神「ヘラ」の怒りを買い、エリス(夫婦の不和)を送り込まれた。散逸した叙事詩「キュプリア」によると、エリスは女神「テティス」と「ペレウス」の結婚式に招かれなかった腹いせに、「最も美しい女神に」と記した黄金の林檎を宴の場に投げ入れ、「ヘラ」「アテナ」「アフロディーテ」の三女神の争いを引き起こした。その結果、三柱の女神は、トロイアの王子「パリス」による裁定(パリスの審判)を仰ぐ事になり、トロイア戦争の遠因を作った。「イーリアス」では、トロイア側で激昂するアレスと、アカイア側で鼓舞するアテナの二神の戦いに、恐怖「デイモス」と敗走「ポボス」、アレスの妹であり戦友のエリスが加わる。エリスは飽くこと無く猛り狂い、両軍の兵士達に敵意を吹き込み、普段は小柄だが、争いが膨らめば大地に足をつきながら頭は天に届くほど巨大な姿になり、軍勢の中を駆け巡った。3日目の早朝、ゼウスはエリスに「戦いの兆し」を持たせ、エリスはアカイア軍の船に立ち、すさまじい大声で雄叫びを上げると、兵士達は闘争心と不屈の気力が湧き、戦いを好む様になり、アカイアとトロイア両軍の荒れ狂う戦闘を見て、エリスは大いに喜んだ。またアテナが纏う「アイギス」の姿の描写に、総が垂れ、縁には「ポボス(敗走)」が取り巻き、表には「エリス(争い)」「アルケ(武勇)」「イオケ(追撃)」に怪物ゴルゴーンの首がある。鍛冶の神「ヘパイストス」が作ったアキレウスの盾にも、人間共の激しい闘いに「エリス(争い)」と「キュドイモス(乱闘)」と「ケール(死)」といった神々が参戦する様が描かれている。これに似たものにウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」があり、ヘパイストス(ウゥルカーヌス)はアフロディーテ(ウェヌス)の息子「アイネイアス」のために盾を作るが、その盾の表にアレス(マルス)とエリニュス達と共に、裂けた衣を纏ったエリスと、その後ろに女神「ベローナ」が血色の鞭を持って従い、戦闘のただ中で荒れ狂う姿が描かれている。

出典:
Wikipedia

作者ひとこと:
エリスのデザインは、頭に林檎を載せ、片方の翼を背中に生やした姿の女神に描きました。

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