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2022年10月24日月曜日

「降三世明王」


降三世明王(ゴウザンゼミョウオウ)

密教における尊格である明王の内の一体。降三世明王は、サンスクリット語での名前を「トライローキャヴィジャヤ」と言い、原義は「三つの世界(過去・現在・未来の三世と貪・瞋・痴の三つの煩悩)を降伏するもの」という意味である。ゆえに尊名を「降三世」、あるいは「勝三世(ショウサンゼ)」と訳す。また、降三世明王のサンスクリット語名を「トライローキャ・ヴァジュラ」とも言い、「トライローキャ」は「三界(さんがい)・三世(さんぜ)・三毒(さんどく)」、「ヴァジュラ」は「堅固な力で降伏する」という意味をもつ。「三界」とは、「欲界(よくかい)・色界(しきかい)・無色界(むしきかい)(仏教におけるこの世界のすべて)」の事、「三世」とは、「過去・現在・未来」の三つの世界、「三毒」とは、最も克服すべきとされる三つの煩悩「貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚癡(ぐち)」の事を指す。つまり降三世明王は、いつでもどこでも、人々の煩悩を打ち砕き、救済する明王なのである。降三世明王の像の形は、1面2臂像、1面4臂像、3面8臂像、4面8臂像などが諸々の経典儀軌に説かれる。一般には、「降三世成就極深密門(ごうざんぜ じょうじゅごくじんみつもん)」にもとづいて、正面を3目とする3面8臂の立像で、胸前において左右第1手で降三世印を結び、他手には戟・弓・金剛索・金剛杵・箭(矢)・剣を持ち、足下には外教の最高神「大自在天(ダイジザイテン・シヴァ)」とその妃「烏摩(ウマ・ウマー)」を踏まえる姿が多い。なお、例外として1面2臂の坐像として表される場合があり、「現図胎蔵界曼荼羅(げんずたいぞうかいまんだら)」持明院のなかに、あるいは、9世紀後半に円珍(えんちん)が中国・唐より持ち帰った「尊勝曼荼羅(そんしょうまんだら)」のなかに見る事ができる。後者を彫刻で表したものに大阪・金剛寺木像(鎌倉時代)がある。降三世明王は五大明王の一角を担い、五大明王の中では東方に位置する明王である。密教では、この降三世明王の真言を用いて、悪人調伏や障礙を除く修法が知られている。また、この降三世明王は「阿閦如来(アシュクニョライ)」の「教令輪身(きょうりょうりんじん)(教えを実行するために変えた姿)」であるとされる。また別の説では、降三世明王は「大日如来(ダイニチニョライ)」の教令輪身とも、「金剛薩埵(コンゴウサッタ)」の教令輪身ともされている。降三世明王は、インド神話に登場する「シュンバ」と「ニシュンバ」というアスラ族の兄弟が仏教に取り込まれたものであると言われている。インド神話によればシュンバ・ニシュンバは暴虐の限りを尽くし神々を圧倒したものの、「シヴァ」、或いはシヴァの配偶神である「カーリー」に殺されたとされている。仏教では仏法に帰依しない大自在天と烏摩に対して、金剛薩埵が「オン ソンバニソンバ…」で始まる真言を唱え、「阿修羅(アシュラ)」の姿、つまり降三世明王になって、大自在天と烏摩の二人を踏みつけ降伏させたとされる。シュンバとニシュンバは「孫婆菩薩(ソンバボサツ)」と「爾孫婆菩薩(ニソンバボサツ)」の名前でも密教に取り入れられている。

出典:
神魔精妖名辞典
東洋神名事典(新紀元社)
エソテリカ事典シリーズ(1)仏尊の事典(学研)
仏教画伝極彩色で蘇った一〇八の仏尊(GB)

作者ひとこと:
降三世明王のデザインは、三つの頭を持ち、八本の腕にそれぞれ武器を持っている明王の姿に描きました。

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