礒撫(イソナデ)<磯撫>
日本に伝わる怪物、または怪魚の一種。竹原春泉「絵本百物語 桃山人夜話」にある。それによると、肥前松浦の沖(長崎県、佐賀県)に、北風が強く吹く時に現れる怪魚。礒撫という怪魚は、鮫の様な大きいもので、鉄の様な針が逆さまに生えた尾を持っている。礒撫は通りかかる船があれば、その針が逆さに生えたような尾で船の中の人を撫で、海中に落として食ってしまうという。「本草異考」の「巨口鰐(キョコウガク)」というのもこれである、などとしている。この礒撫は、鮫の様な姿をした人食いの怪魚である。尾鰭には針の様な細かい突起がびっしりと生えており、この尾鰭で撫でられた者は、この突起に引っ掛けられて海中に沈められるという。また礒撫は、船に近づく時にはほとんど波を立てず、海面を撫でる様に現れるとも言われている。三重県にも「磯ナデ」という怪魚が伝承されている。磯ナデは、三重県熊野市、紀北町などに伝わる怪魚である。「民俗採訪」昭和34年度号によると熊野市荒坂では、磯ナデは尾の長い鮫で、磯端を尾で打つといい、海辺で死んだりすると「磯ナデになでられたんだろう」と言われる。「紀北の民話」7号によると、海山町(現・紀北町)には次のような話がある。昔、小山浦のある母親が子供を連れて浜でツマデ(流木)を拾っていると、波の中から大きな尻尾が現れ、渚で遊んでいた子供をさらって海中に引き込んだ。不意の出来事にただ驚いていると、怪物は200mほど沖の海面に姿を現し、子供を高々と差し上げて見せた。これがイソナデだといい、この家では代々ツマデ拾いをしないという。
出典:
日本妖怪大事典(角川書店)
図説妖怪辞典(幻冬舎コミックス)
日本怪異妖怪事典 近畿(笠間書院)
作者ひとこと:
礒撫のデザインは、尾鰭に細かい針の様な突起が無数に生えた鮫の様な姿の怪魚に描きました。
0 件のコメント:
コメントを投稿