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2023年5月21日日曜日

「垢嘗」


垢嘗(アカナメ)

「垢舐(アカネブリ)」とも言う。浴室に出るとされる妖怪で、舌で垢をなめるという。鳥山石燕(とりやま せきえん)「画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)」や、それを参照したらしい、おもちゃ絵・かるた・絵巻物(「日本の妖怪」「妖怪見聞」)などに描かれているのが確認できる。甘泉堂から売り出されていた「化物かるた」の読札には「なめたやなめたや垢なめ小僧」(「日本の妖怪」)とある。妖怪たちについてを論評した山岡元隣(やまおか げんりん)「百物語評判(ひゃくものがたりひょうばん)」(巻二)では、「垢ねぶりは風呂屋や屋敷の浴室に出るが、どうしてそんな名前なのか」といった内容の質問で取り上げられており、「物から生じた存在は、その物を食べて生きると考えられている。垢から生まれた存在なのでそういう名前なのだ」といった内容の答えを示している。浴室で垢をなめるという妖怪の存在が少なくとも知られていたことがわかるが、これに先行する「アカナメが出た」「アカナメはこういうもの」といった具体的な話が幅広く伝わっていた痕跡はあまり確認することは出来ず、画像妖怪としての利用も石燕の絵を直接参考にしたほんの一部の作品以外はほとんどみられないため、どのような要素を持つ妖怪として実際あつかわれていたかについては、不明な部分がまだ多い。垢嘗に、話と絵がつけられた稀な確認例には江戸(東京都)に出たとされる「日東本草図纂(にっとうほんぞうずさん)」(巻十二)の「垢舐(アカネブリ)」がある。垢嘗は鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれた妖怪。石燕による解説は一切ないが、山岡元隣「古今百物語評判」には「垢ねぶりの事」という項があり、これが垢嘗の事であると思われる。「古今百物語評判」によれば、垢ねぶりというものは古い風呂屋や荒れた屋敷に棲む化け物で、塵や垢の積もったところから化けて出たものだとしている。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)
日本妖怪大事典(角川書店)

作者ひとこと:
垢嘗のデザインは、垢をなめるための長い舌を出した妖怪の姿に描きました。

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