乾麑子(カンゲイシ)
中国に伝わる怪物、妖怪の一種。乾麑子は、中国清代の文人・詩人の「袁枚(エン バイ)」の文言小説集「続子不語」に登場する。動く死者である。乾麑子とは、鉱山の中で死んだ人間の死体が変化した動く死者で、同じく動く死者である「僵尸(キョウシ、キョンシー)」に類似したものである。ただし、死体が動く様になる原因が僵尸と乾麑子とでは異なる為か、乾麑子は、生きている人間を襲ったり、災いをもたらしたりする僵尸の様な残虐さは持ってはいない。この乾麑子は、特に雲南省の鉱山の中によく出没したという。鉱山で働く鉱夫が、鉱山の落盤事故などで生き埋めになり、そのまま死んでしまった死体が土の中で、土と鉱物などに含まれる金属の気によって数十年もしくは百年もの間養われるものがある。この様な死体は体が損壊する事無く維持され、人間としては既に死んでしまっているが、土や金属の気によってやがて新たな生命を得て、死体が動き出すのである。こうして乾麑子は出来上がるのだが、この乾麑子は土中で土と金属の気によって生命を与えられているから、乾麑子が鉱山から出て外気に触れてしまうと、たちまち死んでしまう。暗い坑道の中で頭に明かりを付けて働く坑夫達は、時折、坑道の中で乾麑子に出会う事がある。乾麑子は生きている人間とあまり異ならない姿をしており、人間の言葉も喋れるのだが、明らかに生きている人間では無く、死体であるという事は分かる。乾麑子は、人間と出会った場合、いつも寂しい地下で生活しているので、生きている人間に出会った事を非常に喜び、生きている人間に煙草をねだる。煙草を貰って吸った後に、今度は一緒に外に連れ出して欲しいと懇願する。そこで連れ出すと乾麑子に約束しないと、乾麑子はその人間に死ぬまで纏わり付いてくる。乾麑子と人間が出会った時、人間の方が多ければ問題は無いが、もし乾麑子の方が多い場合には、外に連れ出すと約束しないと、乾麑子達に纏わり付かれて動けなくされ、乾麑子達の住処の穴の中に引きずり込まれてしまう。しかし一方で、坑道で働く坑夫達にとって、乾麑子に出会う事は幸運な事でもある。乾麑子達は長く地下に住んでいるので、どこに金銀の鉱脈があるかを知っている。出会った乾麑子に鉱脈が何処にあるかと聞けば、乾麑子は快く鉱脈まで導いてくれる。そして、教えられた所を掘れば、必ず金銀を掘り当てる事が出来る。乾麑子に頼まれて、乾麑子を外に出す事になった者は、まず自分が駕籠を使って坑道から外に出る。次に、その駕籠に乾麑子を乗せて引っ張り上げ、空中で駕籠を支えている縄を斬る。乾麑子は哀れな事に、地面に落ちてもう一度死ぬ事になる。ある人が本当に乾麑子を外に出した事がある。外に出た乾麑子は、外気の風に当たると、着ていた衣服や肉体は崩れ落ちて全て水になってしまった。この水は生臭い匂いを発し、この水の匂いを嗅いでしまった人々は全員、病気になって死んでしまった。以来、この水の匂いを嗅いで死ぬ事を恐れた坑夫達は、駕籠の縄を斬って乾麑子を処分してしまうようになった。乾麑子を処分する方法は、もう一つあり、坑道で乾麑子と人間が出会った時、人間が乾麑子よりも多い場合に、乾麑子を捕らえて、その手足を縛って動けなくし、そのまま土の壁に押し付け、中から出てこられないようにその周りを泥で塗り込めてしまうという方法である。また乾麑子が祟らない様に、乾麑子を塗り込めた場所の上には灯台の様に明かりをつけるのだという。
出典:
神統録@ウィキ
幻想世界の住人たちⅢ<中国編>(新紀元社)
作者ひとこと:
乾麑子のデザインは、動く死体というのをイメージした姿に描きました。鉱山の中で、土や金属の気によって生きているというので、体から結晶化した鉱物が生えています。
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