タナトス
ギリシア神話に登場する、死そのものを神格化した神。このタナトスは、夜の女神「ニュクス」が一柱で生んだ息子、または、幽冥の神「エレボス」と夜の女神「ニュクス」の間に生まれた息子であるとされ、タナトスは眠りの神「ヒュプノス」と双子の兄弟である。タナトスを「亡者の王」や「ハーデース(同一視して)」と呼ぶ事もある。タナトスは概念的な存在で、古くはその容姿や性格は希薄であったが、次第に「柔和で優しいヒュプノス」に対して「鉄の心臓と青銅の心を持つ非情な神タナトス」とされ、タナトスは人間にとっても神々にとっても忌むべき者となった。タナトスの姿は有翼で、手に剣を持ち、黒い服を着た蒼ざめた老人であるとも、ヒュプノスによく似た青年であるとも言われている。タナトスは寿命を迎える人間の髪を剣で一房切り取り、冥王「ハデス」に捧げ、魂を冥界に連れて行き冥界の住民とする。英雄の魂は「ヘルメス」が冥府に運び、凡人の魂はタナトスが冥界へ運ぶともされる。太陽はタナトスとヒュプノスの姿を見ようとはせず、ヒュプノスとタナトスは大地の遥か下方の奈落「タルタロス」の領域に館を構えて住んでいる。または、冥界の門の近くにある「オネイロス達(夢)」が絡まるニレの巨樹の周りにタナトスとヒュプノスは住むとも言われている。ホメーロス「イーリアス」第十六歌では、「ゼウス」の息子「サルペドン」が死ぬ運命にある事を知っていたゼウスは、「アポロン」に遺体を清めさせた後、タナトスとヒュプノスにサルペドンの亡骸をトロイアからリュキアへと運ぶように命じた。エウリピデスの悲劇「アルケースティス」では、ペライ王「アドメトス」の妻「アルケースティス」が夫の身代わりに死ぬ事になったが、約束の日の丁度の時に館に来たタナトスは、運命の女神「モイラ」達を騙して人間の寿命を変えさせたアポロンを非難する。タナトスは「アルケースティスの魂は奪われる」とアポロンから予言されても聞く耳持たず魂を連れて行こうとするが、そこにアドメトスの友人「ヘラクレス」が館を訪れ事情を知ると、ヘラクレスは、タナトスからアルケースティスの魂を力でもって奪い返した。また「シシュポス」がゼウスの怒りを買った時、連行しようとするタナトスをシシュポスは罠にかけて捕らえた。タナトスが捕らえられた為、地上の人間達が死ななくなり、これに気付いた戦神「アレス」はタナトスを助け出し、冥界に連れて行った。「イソップ寓話」一三三・薮医者では、薮医者に「お前は明日には死ぬ」と言われた病人の男が快復し、その後、薮医者に会った男は「冥界でタナトスとハデスが最近、人が死なないのは医者の所為だと怒り、帳面に医者の名前を書き出していましたが、私は貴方(薮医者)だけはいわれの無い罪です、と言っておきました」と話した。「イソップ寓話」七八・老人と死では、老人が薪を担いで歩いていたが、老人は疲れて荷物を下ろすと自暴自棄になって、死神に呼びかけて助けを求めた。すると老人の目の前に本当に死神が現れ「自分に何か用か?」と尋ねると、老人は慌てて「荷物を持ち上げてもらうためです」と答えた。アイリアノス「ギリシア奇談集」第2巻35話「死と眠りは兄弟なること、ゴルギアースの死」において、レオンティノイのゴルギアースの最晩年、体は弱り、いつの間にかうとうとする状態で病床にあった時「眠りの神は、私を兄弟神に引き渡し始めた」と親友に言った。一説にはタナトスは、女神「レーテー」と兄弟であるとも言われる。また、ヒュプノスとタナトスの兄弟は後に、ドイツにおいて「ザントマン」とその弟の死神のモデルとなった。
出典:
Wikipedia
作者ひとこと:
タナトスのデザインは、カラスの頭と翼を持った神の姿に描きました。
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