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2022年11月30日水曜日

「イア」


イア

フィジーのロトゥマ島に伝わる悪霊の一種。このイアは、礁のウナギの姿をしている。この礁のウナギの姿をしたイアを、ある特定の場所で見てしまうと、そのイアを見てしまった人間は死んでしまう。

出典:
幻想動物の事典

作者ひとこと:
イアのデザインは、縞模様のあるウナギの姿の悪霊に描きました。

2022年11月29日火曜日

「イゲボ」


イゲボ


作者ひとこと:
イゲボのデザインは、三つの目と口のある鬼火の様な怪火の姿に描きました。

2022年11月28日月曜日

「アダマストル」


アダマストル

喜望峰(南アフリカ共和国西ケープ州ケープタウンにある岬)にいるとされる精霊である。このアダマストルは、災厄を予言すると言われる。また、このアダマストルは、喜望峰を越えようとする船に災難を予言する守護精霊であるとも言われている。

出典:
通信用語の基礎知識
神様コレクション

作者ひとこと:
アダマストルのデザインは、全身が鱗に覆われ、頭に角を生やした魔物の様な姿をした精霊に描きました。

2022年11月27日日曜日

「アタクサク」


アタクサク


カナダ北部一帯やアラスカ州、グリーンランドに居住する民族であるイヌイットの神話に登場する精霊。このアタクサクは幸運の化身である。北部インディアンの神話では、このアタクサクは太陽の神格化として登場する。

出典:
神様コレクション

作者ひとこと:
アタクサクのデザインは、球状の精霊の姿に描きました。アタクサクの周りから放射状に色とりどりの紐が伸びて、太陽の様になっているイメージで描いてみました。

2022年11月26日土曜日

「アポパ」


アポパ


作者ひとこと:
アポパのデザインは、体の色が黒く、耳の尖った小人姿の妖魔に描きました。

2022年11月25日金曜日

「アッポッシャ」


アッポッシャ


作者ひとこと:
アッポッシャのデザインは、着物を着た、大きな目と口を持った鬼の様な姿に描きました。

2022年11月24日木曜日

「アマメハギ」


アマメハギ


作者ひとこと:
アマメハギのデザインは、鬼の様な姿の妖怪に描きました。

2022年11月23日水曜日

「アパテー」


アパテー


作者ひとこと:
アパテーのデザインは、一つ目の女神の姿に描きました。周りには飛び回る目玉の姿をした災いを司る魔物を描きました。

2022年11月22日火曜日

「天津甕星神」


天津甕星神(アマツミカボシノカミ)


天津甕星神のデザインは、背中に星(妖しく光輝いているイメージ)が光背の様にある神の姿に描きました。

2022年11月21日月曜日

「天羽槌雄命」


天羽槌雄命(アメノハヅチオノミコト)


作者ひとこと:
天羽槌雄命のデザインは、星々を織り込んだ織物を腕として持っている神の姿に描きました。

2022年11月20日日曜日

「化蛇」


化蛇(カダ)

中国最古の地理書とされる「山海経」の[中山経]に言及されている怪物、または幻獣。化蛇は、凶兆となる生物の内の一つである。化蛇は、陽山という山を流れる、伊水(伊河)の支流である陽水という川に棲息している。この化蛇は、頭は人、体は豺(サイ、山犬)で、全体としては蛇の姿をしており、翼も持っている。化蛇は、喚く様に鳴くという。この化蛇が現れた国は洪水に見舞われるとされる。

出典:
神魔精妖名辞典

作者ひとこと:
化蛇のデザインは、人間の様な頭、山犬の胴体と脚で翼を生やし、長い蛇の尾を持っている怪物の姿に描きました。

2022年11月19日土曜日

「ケツァルコアトル」


ケツァルコアトル

メソアメリカ地域の神話に登場する神。ケツァルコアトルという名前は、ナワトル語で「美しい羽毛を持つ蛇」という意味である。「ケツァル」はエメラルド色の鮮やかな羽毛を持つ実在の鳥。「コアトル」はガラガラヘビの事である。神であるケツァルコアトルは「羽根の生えた蛇」の図像でオルメカ時代からメソアメリカ全体で知られ、豊穣と関係する。風、金星、水などと結びつく事もあり、属性には地域ごとに大きなバリエーションがある。また、同じ名を持つ文化英雄も存在する。ケツァルコアトルは、ユカテク語で「ケツァル(蛇)」を意味する「ククルカン」という呼称もある。ケツァルコアトルの最古の図像の一つはオルメカ文化のラ・ベンタ遺跡で発見された鳥と蛇とが合体したもの。メキシコ中央高原ではテオティワカン遺跡のケツァルコアトル神殿が古く、そこには、保存状態のよい「羽毛を持つ蛇」の彫像が見られる。ケツァルコアトルが擬人化される場合、一般に「風の仮面」をつけ、長い鼻もしくは鳥の嘴をつけ、頭にはトラ皮の円錐形の帽子を被っている。属性が変わると、巻き貝や星を連想させる道具を手に携える。ある神話ではケツァルコアトルは、「テスカトリポカ」と共に天空、大地、天の川を創造し、後に太陽に変身したと語られる。他の神話では、大地と天空を分離させ、彼ら(ケツァルコアトルとテスカトリポカ)は天空を支える大木になったとも説明される。一方、ケツァルコアトルは、地下界に下りて行き、死の神「ミクトランテクトリ」を騙し、死者の骨を盗み出し、その死者の骨に精液をかけて、新しい人類を創造している。また、赤蟻が巣から脱穀したトウモロコシの粒を運ぶのを観察し、創造されたばかりの人類がトウモロコシを食糧として入手できるように支援する。16世紀の古文書によると、ケツァルコアトルの熱心な信奉者であった司祭王「セ・アカトル・トピルツィン・ケツァルコアトル」は、神話上の都市トランに君臨し、国を繁栄させていたが、神「ウィツィロポチトリ」を支持する反対勢力の罠に掛かり、酔った勢いで姉妹の「ケツァルペトラトル」と近親相姦の罪を犯してしまう。その罪に恥じいった司祭王は、再来を約束し、東の赤い土地を目指して出立する。この神話の最後の部分は、16世紀にアステカ人がスペイン人と遭遇した際に、白人を「帰還してきた神」と理解した根拠となった。

出典:
神の文化史事典(白水社)

作者ひとこと:
ケツァルコアトルのデザインは、鳥の翼と尾羽を持った蛇の姿の神に描きました。

2022年11月17日木曜日

「夔龍」


夔龍(キリュウ)

中国神話に登場する神獣、または怪物。夔龍は一本足の龍である。「山海経」の「大荒東経」には、【東海に流波山があり、この山は海に入り七千里、この山には野獣が住んでおり、形状は牛の様で体は蒼身で角は無く、蹄のある足は一本足であった。海水に出入りする時には大風大雨を伴い、その身体から発する光は太陽や月と同じで、その咆哮は雷鳴と同じであった。名を夔と言った。黄帝は夔を得て、その皮で太鼓を造り、雷獣の骨で造ったバチでその太鼓を叩くと、雷鳴の様な音が五百里の外まで響き渡った。これを用いて天下に威を示した】とあり、「夔(キ)」の事が書かれている。この様に山海経の記述では夔は牛の様な怪物であると書かれているが、古代では夔と言えば蛇や龍の形状として描かれる場合が多く、書物にも龍として書かれている場合が多く見られている。殷の晩期と西周時代には青銅器の装飾で「夔龍紋」は主要な装飾の一つであった。夔龍紋の多くは口を大きく開き、尾を巻いている細長い形状として青銅器に装飾されている。この夔龍は一本足の龍とされる他にも、帝「舜(シュン)」の二人の家臣の事を指しているとする場合もある。夔龍の内の夔は楽官で、龍は諫官であったとも言われている。「書・舜典」には、【伯が稽首の礼で夔龍に譲った】とある。「孔伝」には、【夔龍は二臣名】と書いている。また「夔」という漢字は、古代中国においてかなり大切な意味を持っていたと考えられている。帝「俊(シュン)」や、帝舜、帝「嚳(コク)」は元々、「夔」という神が分かれた存在であるという解釈もある。古籍中には夔が蛇の形状で登場している場合がある。「説文解字」には【夔、神魅也、龍の様で足は一つである】とある。殷時代の末期と西周時代の青銅器に夔は主要な装飾の一つとして用いられてきた。多くは口を張り裂けんばかりに開けて尾を巻いている細長い形である。その姿は青銅器の形状にあわせて描かれている。青銅器上の龍紋はよく夔紋や夔龍紋と呼ばれている。宋代以来の記録中では、青銅器上で表現される一本足で爬虫類の形状をした装飾の図柄は全て夔と称された。これは【夔一本足】という文献の記述によるものである。実際、一本足の動物が二本足の動物の側面に描かれている場合は、夔紋という呼称は用いられずに、この場合は夔龍紋や龍紋と呼ばれている。夔竜文(夔龍紋)は、中国の殷・周代の青銅器に用いられた文様の一種である。龍身で足が一本、角と手がついている架空の動物で、口が上下に反り返っているものを夔竜(夔龍)、上唇が下に曲がって嘴状になっているものを「夔鳳(キホウ)」という。夔竜文は側面獣形の文様で、多くは雷文とともに用いられる。殷から西周前期の文様では一対の夔竜が絡み合う形であるが、西周中期以降では単独、または連続の文様として表現され、夔竜は胴長となり後方に反転したもの、蛇身に近くなったもの、両頭がS字形になったものがある。

出典:
プロメテウス
コトバンク

作者ひとこと:
夔龍のデザインは、三本爪を持った一本足だけを持った龍の姿に描きました。

2022年11月16日水曜日

「ケモシ」


ケモシ

モアブ(死海の東側)人の主神。「列王記下」第3章27節によれば、戦勝祈願の為に、皇太子がケモシの人身御供にされた事があった。また、このケモシは、「ベルフェゴル」の事だとも言われている。「士師記」第11章24節によれば、ケモシはアンモン(死海の北東の地域)人にも崇拝されていた事がある。旧約聖書「民数記21:29」では、モアブ人は「ケモシの民」と呼ばれている。「列王記下3:27」には、ケモシに対し人身御供が行われたと書かれている。「ソロモン王」は、ケモシの祭壇を建てた(列王記下11:7)。しかし「ヨシュア」はこれを破棄した。19世紀フランスのコラン・ド・プランシーは、ケモシを「へつらいの魔神」とし、地獄会議のメンバーとしている。

出典:
幻想動物の事典
幻想世界の住人たちⅡ(新紀元社)

作者ひとこと:
ケモシのデザインは、牛の頭と四本の牛の腕を持ち、蛇の下半身を持った魔神の姿に描きました。

2022年11月15日火曜日

「トゥルパ」


トゥルパ

出典元に情報がありません。誰かご存知の方がいましたらコメントください。

作者ひとこと:
トゥルパのデザインは、頭に孔雀の羽の冠を被った、神または精霊の姿に描きました。

2022年11月14日月曜日

「ネアック・ター」


ネアック・ター


カンボジアを中心とするクメール人における土地の精霊、土地の神。ネアック・ターという名前は、クメール語でネアックは「人」の一般的呼称、ターは「祖父」という意味である。大木や大石、蟻塚などの近くにネアック・ターの祠が作られ、その祠の中に自然石や木でネアック・ターの像(しばしば男女一対)が祀られる。ネアック・ターは稲作の祭や雨乞の対象となり、ネアック・ターに水牛の供犠が行われるが、以前は人身供犠が行われていたとも言われる。ネアック・ターは、土地を拓いた祖先、いわば村立ての遠祖を表わすとも考えられ、また、「シヴァ」の象徴「リンガ」が安置される事も多く、ヒンドゥー教との関連も指摘されている。またネアック・ターは、人々を加護する存在として、民間伝承にもしばしば登場する。

出典:
神の文化史事典(白水社)

作者ひとこと:
ネアック・ターのデザインは、槍を持った精霊、または神の姿に描きました。

2022年11月13日日曜日

「ハントゥ・アナク・グア・バトゥ」


ハントゥ・アナク・グア・バトゥ

マレーシアに伝わる「ハントゥ(ハンツー)」と呼ばれる霊魂、精霊、妖怪に相当する霊的存在の一種。このハントゥ(ハンツー)は、マレーシアの一部である西マレーシア(「半島マレーシア」とも呼ばれている)に住んでいるマレー人の民間伝承では、悪い精霊の総称とされる。このハントゥ・アナク・グア・バトゥは、鍾乳石のお化けである。

出典:
ピクシブ百科事典(「マレーシアの妖怪」のページ)

作者ひとこと:
ハントゥ・アナク・グア・バトゥのデザインは、鍾乳石に手足がある様な姿の精霊、または妖怪の姿に描きました。

2022年11月12日土曜日

「アル=ラート」


アル=ラート

イスラム教以前にアラビアの北部・中央部で崇拝された女神。「アラット」とも呼ばれる。メッカ近郊のタイフで信仰されていた女神で、タイフでは白い花崗岩がアル=ラートの御神体とされた。信者、特に女性達はこの石の周りを巡って、アル=ラートを崇めた。アル=ラートに関する詳しい記録は残っていないが、おそらくアル=ラートは大母神であり、大地を司る女神であったと考えられている。このアル=ラートは、最高神「アラー」の三人の娘の神の内の一人であり、後の二人は「マナト」「アル=ウッザ」である。アル=ラートは太陽、月ないし金星と関係がある女神であるとも言われている。また、このアリラト(アル=ラート)は、アッシリアやバビロニアの影響を受けた女神であるとも言われており、ギリシア神話の女神「ウラニア」や、パルミラの大女神「アラート」と同一視される事もあった。

出典:
神様コレクション
神魔精妖名辞典

作者ひとこと:
アル=ラートのデザインは、背中に月輪があり、手に椰子の葉を持った女神の姿に描きました。

2022年11月11日金曜日

「ダイジン」と「すずめの椅子」


ダイジン

「すずめの戸締まり」に登場する存在。扉が存在する場所に現れては、主人公である岩戸鈴芽(イワトスズメ)たちを翻弄する、人間の言葉を話す白い猫。手のひらサイズの小さな体で、骨張ってげっそりと痩せていた。しかし煮干しを与えただけで、枯れ木のようだった痩せこけた体が、大福のような肉づきになった。黄色い目はビー玉のようで、真っ白な毛並みの中で左目だけが黒い毛で囲まれ、片目だけを殴られて隈取りされたようである。登場直後での感想は、鈴芽いわく、ずいぶんと哀れを誘う顔つきだという。


すずめの椅子(スズメノイス)

「すずめの戸締まり」に登場する存在。黄色いペンキが塗られた、木造りの古い小さな椅子。災いが出てこないよう、開いてしまった扉に鍵をかけて回る「閉じ師」の仕事をしている宗像草太(ムナカタソウタ)が、とある拍子に、岩戸鈴芽が幼少期に使っていた子供用の椅子に憑依(?)してしまった姿。口はないが、会話は可能のようだ。背板には、目に見立てて彫った凹みが二つあり、脚は一本欠けている。ダイジンによる呪いだと考え、白い猫を追いかけるもフェリーで見失い、もとに戻すため椅子の姿のまま、草太は鈴芽とともに、ダイジンが向かったであろう愛媛へ行くこととなった。

出典:
『小説 すずめの戸締まり』新海誠(角川文庫)

2022年11月10日木曜日

「バイラム」


バイラム

出典元に情報がありません。誰かご存知の方がいましたらコメントください。

作者ひとこと:
バイラムのデザインは4つの目を持ち、背中に翼を生やしており、斧と刀を手にした神の姿に描きました。

2022年11月9日水曜日

「ジャルニマータ」


ジャルニマータ

出典元に情報がありません。誰かご存知の方がいましたらコメントください。

作者ひとこと:
ジャルニマータのデザインは、頭に冠か帽子の様なものを被った石の精霊をイメージした姿に描きました。

2022年11月8日火曜日

「ドクラタドゥー」


ドクラタドゥー

出典元に情報がありません。誰かご存知の方がいましたらコメントください。

作者ひとこと:
ドクラタドゥーのデザインは、頭に冠を被り、猿の様な長い尾を二本生やした神の姿に描きました。

2022年11月7日月曜日

「ラクシュミー」


ラクシュミー

インド神話に登場する神の内の一柱。ラクシュミーは、幸運・美・豊穣・王権の女神である。ラクシュミーという名前は「幸運」「繁栄」という意味である。また別名を「シュリー」ともいう。またラクシュミーは「吉祥天(キッショウテン、キチジョウテン)」として日本にも伝来した。「ラーマーヤナ」やプラーナ諸文献以降に「ヴィシュヌ」神の妃としての地位を確立した。しかし元来は独立した女神であった。リグ・ヴェーダに属する「シュリー・スークタ」では、泥と共に住むことを祈願され、牝牛の糞の中に住むとされる。二大叙事詩やプラーナ諸文献では、神々が不死の飲料「アムリタ」を得る為に「アスラ」と協力して海を攪拌した時に、ラクシュミーは海から誕生した。ラクシュミーは水と関わりが深い女神である。「ガジャ・ラクシュミー」と呼ばれる図像では、ラクシュミーは、池の中央に咲く蓮の上に坐し、四方にいる象達が鼻で支えた水瓶から彼女に水を注いでいる。ラクシュミーは幸運と豊穣を司る女神である。豊穣から転じて富も司る。ラクシュミーは、元は運命の女神だったが、豊穣の女神シュリーと統合された。ラクシュミーは優雅で気品ある美貌をもち、「乳海攪拌」で誕生し、彼女を維持神「ヴィシュヌ」が妻とした。ヴィシュヌが化身(アヴァターラ)となって神話に登場すると、ラクシュミーは、その妻や恋人に化身して常に寄り添う。ラクシュミーは、仏教では富の女神である吉祥天と漢訳される。ヒンドゥー教の創世神話である乳海攪拌の際、14の貴重なものの一つとして誕生したのが女神ラクシュミーである。プラーナ文献「ヴィシュヌ・プラーナ」によれば、ラクシュミーは聖仙「ブリグ」の娘として生まれ、呪いから身を隠す必要ができた為、彼女は乳海に避難していた。破壊神「シヴァ」や魔族「アスラ」は姿を現したラクシュミーに求婚したが、先にヴィシュヌが彼女を妻にしてしまう。出し抜かれたシヴァは蛇の魔族「ナーガ」を噛んで悔しがったという。ヴェーダ時代にはラクシュミーは、運命を司る女神とされた。聖典「リグ・ヴェーダ」では幸福の意味だったが、「アタルヴァ・ヴェーダ」になると幸運と不運の女神となる。後のプラーナ文献「パドマ・プラーナ」では、ラクシュミーの姉「アラクシュミー」が不運の女神とされた。また、元々は、ラクシュミーは、豊穣と幸運の女神シュリーとともに太陽神「アーディティヤ」の妻とされていたが、後世にラクシュミーとシュリーが同一視されるようになり、時代を経てラクシュミーに統合された。この為、乳海攪拌にはシュリーが登場するものと登場しないものがある。彼女の夫ヴィシュヌは様々な化身となって多くの神話に登場するが、ラクシュミーもそれに対応する化身となって夫に寄り添った。叙事詩「ラーマーヤナ」では、ヴィシュヌの化身である主人公「ラーマ」の妻「シーター」に化身している。シーターは畑の畝から誕生したが、これはラクシュミーがシュリーと同一視された結果、豊穣を司る大地母神として崇拝された事に由来している。この他にもヴィシュヌが「クリシュナ」に化身すれば、その妻「ルクミニー」と恋人「ラーダー」に、ヴィシュヌが「パラシュラーマ」に化身すれば、その妻「ダーラニー」に化身した。ヴィシュヌの隣にいる美女は全てラクシュミーの化身なのである。ラクシュミーは豊穣を司る事から富の女神としても崇拝される。絵画では蓮華の花や霊水「アムリタ」の瓶を手にした図柄が多い一方、右手から金貨をあふれさせている図柄もよく見られる。時代が下ってラクシュミーは仏教に取り入れられると、吉祥天と漢訳された。吉祥天の夫は武神の「毘沙門天(ビシャモンテン)」だが、毘沙門天のルーツはインド神話の富の神「クヴェーラ」であり、吉祥天は富を司る面が強調された女神といえる。

出典:
神の文化史事典(白水社)
ゼロからわかるインド神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
ラクシュミーのデザインは、頭に蓮華を模した冠を被り、四本の手に蓮華の花、水瓶、宝珠を持った女神の姿に描きました。

2022年11月6日日曜日

「クリシュナ」


クリシュナ

インド神話に登場する英雄、または神の内の1柱。クリシュナは「ヴィシュヌ」の化身(アヴァターラ)の内の1体である。宇宙維持の神であるヴィシュヌは、世の中が乱れて危機が訪れるたびに、様々に姿を変えて天下り、危機を解決する。ヴィシュヌの第八の化身がクリシュナである。クリシュナは、叙事詩「マハーバーラタ」で、英雄「アルジュナ」の導き手となる。クリシュナの肌の色は浅黒く、非常にハンサムな容姿で女性にモテた。信仰面では、形式や身分にとらわれず、ただ神を信じ愛する事を説く「バクティ(信愛)」思想を軸とする。クリシュナの生涯は、マハーバーラタなどに描かれていて、そのいずれもが豊かなエピソードに彩られている。クリシュナの出生のエピソードでは、ある時、悪王「カンサ」は、ヤーダヴァ族の「ヴァースデーヴァ」と妻「デーヴァキー」の8番目の子供に殺されるという予言を受けた。そこでカンサは、ヴァースデーヴァとデーヴァキーを監禁し、産まれてくる子供を次々に殺した。8番目の子供が産まれる時、ヴィシュヌが姿を現し、カンサにバレないように子供をすり替えよと夫妻に命じた。一方カンサは、予言の子供が逃げたと知り、追っ手として女悪魔「プータナー」を放った。牛飼いの村の牧人「ナンダ」の妻「ヤショーダー」の子にすり替わっていたクリシュナに、プータナーは毒の乳を吸わせようとしたが、何といってもヴィシュヌの化身であるクリシュナには神通力が備わっていた。クリシュナは毒もろともプータナーの命も吸い出したので、プータナーは絶命してしまった。こうしてクリシュナは牛飼いの村ですくすく育つ事になる。幼児時代には、ヤショーダーがつくっていたバターを盗み食いするなど、悪戯好きな面が顔を出す。成長すると、全裸で沐浴する牧女達の服を奪って困らせるといった悪戯もしているが、牧女達はイケメンなクリシュナに夢中で、逆に喜んだらしい。クリシュナのこうした茶目っ気のある性格も、クリシュナの人気の理由の一つだとか。絵画などでは、とびきりの美青年として描かれ、1万6千人もの牧女の妻を娶った話や、愛人「ラーダー」との情愛物語なども人気だという。ある時クリシュナは、雷神「インドラ」への崇拝を示す祭の邪魔をし、怒ったインドラが大雨を降らせた事があった。ところが、クリシュナはゴーヴァルダナ山を持ち上げて、その下に人々や家畜を避難させ、それを見たインドラは逆にクリシュナに畏敬の念をもったという。また、破壊神「シヴァ」の炎に焼かれた愛の神「カーマ」が、クリシュナと、その妻「ルクミニー」との間の息子「プラデュムナ」として転生し、魔族「シャンバラ」を倒すというエピソードもある。一説では、クリシュナは実在した宗教的指導者を神格化した神ではないかと考えられているという。それまでの神々以上に、クリシュナが人々に加護を与える最高の神として地位を再構築するかのようなエピソードがみられるのは、新興宗教の勢力をヒンドゥー教に取り入れようとした為ではないかという。さて、そんなクリシュナは青年時代、大勢の聴衆の前で、悪王カンサを遂に打ち倒した。クリシュナの名声が広がるにつれ、自分を殺すのがクリシュナであると悟ったというカンサは、クリシュナを格闘技大会におびき出し、クリシュナと悪魔や巨人を対戦させたのだ。しかし、クリシュナはこれら刺客達を難なく破って、遂にはカンサを玉座から競技場に引きずり落とした。そしてカンサをいとも簡単に踏み殺したという。中年以降のクリシュナは、マハーバーラタに描かれたクル族の大戦争「クルクシェートラ」の大決戦において重要な役割を果たす。それは、パーンダヴァ勢に加勢し、迷えるアルジュナ王子を精神的に導いて彼に勝利をもたらすというものだ。そんなクリシュナの哲学の粋を集めたのが、クリシュナ信仰の教典とされるマハーバーラタの中の一章「バガヴァッド・ギーター」。タイトルは「神の歌」という意味で、そこには一族同士で争う事に悩み、いい結果になるはずがないと戸惑うアルジュナ王子の疑問に対するクリシュナの答えが、ことさら詳しく書かれている。非常に哲学的で深淵な言葉が綴られているのだが、単純に言えばクリシュナは「今いる立場から逃げたり、行為に結果を求めたりするのは間違っている」として、アルジュナを鼓舞している。人は誰しも身分や仕事などの社会的な地位、いわば義務がある。その義務を果たしながらでも、最高神に捧げる気持ちで「行為」を行い、結果に対する執着を離れてすべてのものに敵意のないこと。それこそ心を平穏にし、永遠の境地に達する為に必要だという。これは元々は、クシャトリヤ(王侯・武人階級)に向けたものであったようだが、身分を超えた人のあり方と救済を説いたこの書は、広くインドで受け入れられた。クリシュナの最晩年は、不運にも猟師に鹿と間違われて、唯一の弱点である踵を射られて死んだ。

出典:
ゼロからわかるインド神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
クリシュナのデザインは、横笛をもった神の姿に描きました。

2022年11月5日土曜日

「阿弥陀如来」


阿弥陀如来(アミダニョライ)

阿弥陀如来は、その寿命が無限である事から「無量寿如来(ムリョウジュニョライ)」とも称し、またその光りが無限に十方世界を照らす事から「無量光如来(ムリョウコウニョライ)」とも称し、西方極楽浄土の教主とされる。阿弥陀如来の阿弥陀はサンスクリット語の「アミターバ」、または「アミターユス」の音写。阿弥陀如来は、インドから中国、朝鮮半島を経て、日本にも早い時期に信仰、作例ともに伝わったとみられる。「無量寿経(むりょうじゅきょう)」「観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)」「阿弥陀経(あみだきょう)」の、いわゆる浄土三部経を主たる典拠として、阿弥陀如来が念仏を行う衆生を救って必ず極楽に往生させるという第十八願に代表される「阿弥陀如来の四十八願」をもとに、死後の安楽を約束し極楽往生をかなえる仏として、中国では曇鸞(どんらん)・道綽(どうしゃく)・善導(ぜんどう)らによって信仰が広められた。特に日本では、平安時代に末法思想が広まり、さらに法然(ほうねん)・親鸞(しんらん)達により浄土教が発展して以降、現代にいたるまで、最も一般的に信仰される仏の1つとなっている。その姿形にはいくつかあり、時代の変遷による流行も見られる。独尊でつくられる場合もあり、また、脇侍として「観音菩薩(カンノンボサツ)」「勢至菩薩(セイシボサツ)」を従える場合も多い。さらに、二十五菩薩を従え、雲に乗って往生者を迎えにやって来る。まさに「聖衆来迎(しょうじゅらいごう)」の様子を表す場合もある。あるいは、当麻曼荼羅(たいままんだら)に代表される阿弥陀浄土変相図(浄土曼荼羅)中に、西方極楽浄土の教主として表される例も数多い。右手で施無畏印(せむいいん)、左手で与願印(よがんいん)を結ぶ阿弥陀像が7世紀につくられる。これらは施無畏・与願印の通仏相のため、独尊では「釈迦如来(シャカニョライ)」などと見分けがつかないが、脇侍が冠の正面に化仏(けぶつ)・水瓶(すいびょう)を付けているため観音・勢至菩薩とわかり、したがって中尊が阿弥陀如来と判明する。これと同様に古くからあるのが、両手を胸前で構える転法輪印(てんぽうりんいん。説法印(せっぽういん)ともいう)を結ぶ阿弥陀如来像である。平安時代初期以前の像に多く見られる。平安時代に密教がもたらされたのにともない、観想の対象として、新たに密教の曼荼羅中に阿弥陀像にもとづいて造像が行われるようになった。坐像で、両手を腹前で法界定印(ほっかいじょういん)の様に結ぶが、第2指を曲げるのが特色で、これを「阿弥陀の定印」と呼んでいる。この定印像は、きわめて多くの作例が残されている。一方、末法思想の流布にともない、阿弥陀の来迎という事が注目されるようになった平安時代後期には、来迎の姿の阿弥陀如来像がつくられるようになった。これの印相は施無畏・与願印に似ているが、第1指ともう1本の指を捻じるのが特色で、来迎印(らいごういん)と称している。来迎印像は、定印像とともに最も多くつくられた像の形である。また、九品往生の考えをもとにして、必ず極楽往生できるように、9体の阿弥陀如来像を並べた「九体阿弥陀像」もつくられた。特殊な姿の阿弥陀如来像としては、善光寺式阿弥陀三尊、宝冠阿弥陀像、裸形阿弥陀像、斜め後ろを振り返った、見返り阿弥陀像などがある。この見返り阿弥陀像は、京都・禅林寺永観堂を中興した永観(えいかん)が念仏修行の行道をしていた際に、阿弥陀如来が壇上から降りて永観を先導したところ、驚いて永観が立ち止まり、阿弥陀如来が振り返って「永観遅し」と言ったときの姿をとどめたものという。

出典:
エソテリカ事典シリーズ(1)仏尊の事典(学研)

作者ひとこと:
阿弥陀如来のデザインは、坐っており、後ろに光背がある如来の姿に描きました。

2022年11月4日金曜日

「イツパパロトル」


イツパパロトル

アステカ神話に登場する神の内の一柱。イツパパロトルという名前は「黒曜石の蝶」または「鉤爪のある蝶」という意味である。このイツパパロトルは、アステカの神々の中で最も恐れられた女神の一柱である。元々イツパパロトルは、北方の非定住民族の重要な女神であったと考えられる。イツパパロトルの手足はジャガーの爪を生やし、目と羽根、触角は蝶の様である。その羽根の先端は鋭く尖ったナイフとなっている。イツパパロトルは骸骨で獰猛な女性の姿をしており、手足にはジャガーの爪を生やし、目と羽根、触角は蝶の様である。その羽根の先端は鋭く尖ったナイフとなっている。またマシュトラトルという腰巻を身に着けている場合もある。イツパパロトルの起源は出産時に死亡した女性が変身して魔物となったと説明される事がある。このイツパパロトルは、日蝕や52年ごとに到来する宇宙の危機に際して、人間を食べてしまうと言われる魔物「ツィツィミメ」の一人でもある。神話によるとイツパパロトルは、神々の起源の場所、天空の楽園「タモアンチャン」から追放されている。このイツパパロトルは、石刀(マクアウィトル)の翼を持つ女神であるとも言われている。イツパパロトルは、楽園タモアンチャンを象徴する女神で、この女神は一般的にジャガーの鉤爪を持つ骸骨という恐ろしげな姿で描かれ、背中に生えた翼はアステカの戦士が用いた石刀(マクアウィトル)で出来ている。イツパパロトルは「黒曜石の蝶」であるが、図像では翼は蝙蝠や鷲の要素が大きい。神々により最初に創造された女性「オショモコ」は蝶の属性を持つとされ、イツパパロトルと関連性があると考えられている。またアステカでは、蛾や蝶は、燃え盛る火に飛び込む事から、炎および自己犠牲を伴う勇敢な行為の象徴とされたため、イツパパロトルは軍神であるともされた。その為、戦士達は蝶を模った飾りを身に着け、死後の魂は蝶となり楽園へ旅立つと信じていた。イツパパロトルの夫は「イツラコリウキ(テスカトリポカの化身であるとも言われる、石と冷気の神)」、息子は「ミシュコアトル(ケツァルコアトルの父であるとも言われる、狩猟と戦争の神)」である。イツパパロトルは、アステカ暦ではコンドルを支配し、西に配当される1の家・トレセーナを司る。この位置は出産で死んだ女性の死霊「シワテテオ」に捧げられており、日食の時に人を喰うツィツィミメとも同一視されている。このイツパパロトルは、元来はチチメカ族が信仰した大地の女神であったとも言われている。また、このイツパパロトルは、農耕の女神であり、始まりの楽園タモアンチャンを治める女神であるともされる。またイツパパロトルは星を司り、夜の魔神ツィツィミメの女王であるともされ、イツパパロトルは、日食の時にツィツィミメと共に天から落ちて来て、地上の人間を貪り食らうとも伝えられている。

出典:
ピクシブ百科事典
幻想世界事典
神の文化史事典(白水社)

作者ひとこと:
イツパパロトルのデザインは、背中に蝶の翼を生やし、両手両足がジャガーになっている女神、または女性の魔物の姿に描きました。

2022年11月3日木曜日

「イナラシュ」


イナラシュ<イナラス、イナル、イナラ>

メソポタミア、ヒッタイト神話に登場する、風と空気の女神。イナラシュは、人間である「フパシャシュ」を竜神「イルルヤンカシュ」退治に協力させるため、一夜を共にするという条件を承諾する。イルルヤンカシュを退治したフパシャシュをイナラシュは、神にしてやり、イナラシュは、神となったフパシャシュを夫にした。しかしフパシャシュは、人間界にいる家族の下に帰ろうとした為、イナラシュはフパシャシュを殺してしまった。ヒッタイト神話に登場する女神であるイナラシュは、イルルヤンカシュを気象神「タル」が退治する話で、恋人で人間であるフパシャシュとともにタルに助力したとされる。またイナラシュは、タルの娘とされる事もある。イナラシュは、イルルヤンカシュ退治に助力したフパシャシュに、お礼として家を与え、フパシャシュを神として扱ったが、窓を開けて人間である彼の妻や子供を見ようとしてはいけない、とフパシャシュに言った。しかし家族を恋しくなったフパシャシュは、イナラシュのこの言いつけを破ってしまい、結果としてフパシャシュはイナラシュに殺される事となった。イナル(イナラシュ)は、ハッティ・ヒッタイトの女神である。彼女は、竜神イルヤンカ(イルルヤンカシュ)と天候神の戦いを語る「イルヤンカ神話」に登場する。最初、天候神はイルルヤンカシュとの戦いに敗れる。イナラシュは天候神の側についていたが、天候神の勝利には人間の助力が必要であったらしく、イナラシュは人間フパシヤ(フパシャシュ)に援助を求める。フパシャシュは女神イナラシュに性交を(夫婦となる事を?)求め、イナラシュはそれに同意する。また、イナラシュは宴会を設け、酒を満たした甕を用意してイルルヤンカシュとその子供達を招いた。イルルヤンカシュと子供達は、その宴会でしこたま飲んで食べたので動けなくなった。そこで隠れていたフパシャシュが現れ、イルルヤンカシュと子供達を縄で縛り上げた。そこに天候神が現れ、イルルヤンカシュを殺害した。この後、イナラシュはフパシャシュと自分の住まいで一緒に住んだが、里心が芽生えるのを恐れて、フパシャシュに窓の外を見る事を禁じた。しかしフパシャシュは、イナラシュの命令に背いて外を見て、自分の妻子の姿を認め、家に帰る事をイナラシュに求めた。その後の部分は欠如している 神話によると、嵐の神と竜神イルルヤンカシュが争い、イルルヤンカシュが勝った。嵐の神は復讐しようとし、女神イナラシュに助けを求め、また色々な酒を用意した。女神イナラシュはイルルヤンカシュとわたり合う危険を避ける為に、人間フパシャシュを呼び、この事を頼んだ。フパシャシュはイナラシュと共寝する事を条件に出し、女神はこれを認めた。間もなくイルルヤンカシュがやって来て、酒をたっぷり吞みほした。フパシャシュは隠れていた小屋から出て、イルルヤンカシュを殺した。その後、イルルヤンカシュを退治したフパシャシュを、イナラシュは(人間であるフパシャシュが神の力を得た事を警戒し)、タルッカの国の高台の家に彼を住まわせて、その家の窓を開ける事を禁じた。二十日が過ぎると、フパシャシュは我慢が出来なくなって、窓を開けて外を見た。すると妻や子供が見えたので、イナラシュに、家に帰らせてくれと頼んだ。イナラシュとフパシャシュは口論を始め、ついに怒ったイナラシュはフパシャシュを殺した。

出典:
神様コレクション
神魔精妖名辞典
神の文化史事典(白水社)
世界の神話伝説・総解説(自由国民社)

作者ひとこと:
イナラシュのデザインは、頭に牛の角を生やし、両腕、両足にも角を生やし、背中からも四本の角が生えている女神の姿に描きました。

2022年11月2日水曜日

「ハントゥ・ベリアン」


ハントゥ・ベリアン(ハンツー・ベリアン)

マレーシアに伝わる「ハントゥ(ハンツー)」と呼ばれる霊魂、精霊、妖怪に相当する霊的存在の一種。このハントゥ(ハンツー)は、マレーシアの一部である西マレーシア(「半島マレーシア」とも呼ばれている)に住んでいるマレー人の民間伝承では、悪い精霊の総称とされる。このハントゥ・ベリアンは、虎の精霊である。虎の精霊であるハントゥ・ベリアンは、鳥の姿をしており、虎の背に顕現する。鳥の姿をしているハントゥ・ベリアンは、虎の背中にとまり、虎の毛をつかんで抜き、それを投げる。しかし、それらの毛は落ちる事がない。またハントゥ・ベリアンは、時に人間の使い魔となり、その人間を裕福にするとも言われている。

出典:
幻想動物の事典
神様コレクション
ピクシブ百科事典(「マレーシアの妖怪」のページ)

作者ひとこと:
ハントゥ・ベリアンのデザインは、虎の頭と、虎の二本の尾を持った鳥の姿の精霊に描きました。

2022年11月1日火曜日

「エルリク」


エルリク


アルタイ共和国を中心とし、アルタイ地方やケメロヴォ州などに居住しているアルタイ人の神話に登場する(モンゴルのアルタイ人の神話に登場するとも言われている)悪魔。エルリクは、悪魔であり、死者の国の君主でもある。ある神話では、世界には三つの層があり、創造神「バイ・ユルゲン」は上界、人間は中界、エルリクは下界に住んでいるという。エルリクは、最初の人間とも言われており、バイ・ユルゲンによる大地の創造に関わったという神話がある。だがエルリクは、性格が傲慢で、バイ・ユルゲンと同じ様に自分も人間を造れるなどと豪語したため、地獄に投げ込まれ、悪魔になったのだという。しかし、エルリクは地獄にじっとしてはいずに、「マイデレ(バイ・ユルゲンに仕えている英雄神の一柱)」が創造神の命令で最初の女性を造った時には、エルリクは密かに、マイデレが造った女性に生命を吹き込み、更に「七つの気まぐれ」と「九つの気分」を与えるという悪戯をした。これは神話によると、原初の時代、バイ・ユルゲンは大地を創造した後で、地上に八人の男性と八本の樹木を造った。この時、八番目の男性として、金の山の上に造られたのがマイデレだった。しかし、造られたのは男性だけだったので、七年経っても人類の数は増えなかった。これを見た創造神は、マイデレに人間を増殖させる力を与え、女性を造らせた。だが、マイデレは、造った女性に生命を与えられず、一匹の毛のない犬に女性の番をさせ、創造神の助けを求めに天に向かった。この隙にエルリクが、「毛皮をやるから女を見せろ」と言って、番をしている犬を籠絡し、女性に生命の他に、「七つの気まぐれ」と「九つの気分」まで与えてしまった。マイデレは、これを見て大いに怒り、「お前は死ぬまで人間にこき使われろ」と言って犬を呪ったという。またエルリクは、ある時、地獄から「カラシ」と「ケレイ」という助手を呼び出し、神の使者である「マンディシレ」「マイデレ」と争った事もある。このため、地上は炎の洪水で一度は滅び、創造神バイ・ユルゲンによって新たに造り直されたという。また、悪魔エルリクは、あらゆる災厄を司る存在で、最初の女性「エジ」を誘惑し、彼女に「禁断の果実」を食べさせた、という神話も伝わっている。エルリクは悪魔であり、地下界の神であるとも言われている。悪魔の王であるエルリクは「カラ・ネメ(黒いもの)」とも言われる。エルリクは、創造神バイ・ユルゲンと対立する魔であり、最初の人間達を罪へと導き、バイ・ユルゲンの怒りをかったとされている。ある時バイ・ユルゲンはマイデレを下界に派遣して、人々が自分(バイ・ユルゲン)を畏れ敬う様にしようとしたが、下界に派遣したマイデレはエルリクに殺されてしまった。しかしこの時、殺されたマイデレの血から吹き出した炎は天界に達し、エルリクの手下達は、皆、この炎に焼き殺された。こうしてエルリクは冥界へと追放された。このエルリク、最初の人間とも、創造神バイ・ユルゲンの兄ともされる。普通エルリクは、恐ろしい形相をした人物として描かれるが、時には熊や黒髭を蓄えた老人として描かれる事もある。こういったエルリクの神格は仏教の「閻魔(エンマ)」の特徴がみえる。エルリクは、創造神バイ・ユルゲンが土の塊から造った原初の人間であった。しかし、造られたエルリクは、思い上がりが激しかった為、バイ・ユルゲンの怒りを買い、罰として地下の世界へ退けられて、冥界の王となった。バイ・ユルゲンは冥界においても、自らを至高の神として敬うよう、エルリクを説きふせるため、マイデレを冥界へと送り込んだ。冥界にやって来たマイデレを、エルリクは返り討ちにして殺したが、殺されたマイデレの身体から吹き出した血から炎が上がり、冥界は火の海になったと言われている。エルリクは地下界、死者の世界の支配者である。仏教の入った地域では閻魔大王を指す。エルリクは、元来は至高神「ウリゲン」の兄弟として天界に在り、ウリゲンとエルリク、共に大地や人間の創造に関わるが、善悪の二元論的な枠組みでは、エルリクは悪役を付与され、「悪魔」と訳される事が多い。大地の創造が水鳥の潜水によってなされたとする「潜水神話」は西シベリアを中心として広範な地域に知られているが、天神や創造神が潜水する例も少なくない。アルタイの神話では、エルリクが潜水してウリゲンと共に大地を造り、ウリゲンの造った平坦な土地に、エルリクは山や沼沢を設け、ウリゲンが造った人間に、エルリクが魂を入れて、それを人間の死後、自分のものと定めた。また、鍛冶の道具を使って様々な悪しきものや熊、穴熊、土竜などを打ち出したともいう。エルリクがどのようにして天界から地上に追われ、更には地下に追放されて、その地下世界の主になったのかははっきりしない。一説では、エルリクは毎夜、地下から地上に現れて、煙の出ない銃で人間達を撃ち殺して、その霊魂を奪うといい、エルリクは、人間に死をもたらすばかりでなく、病気や、ありとあらゆる悪をなすという。その反面、エルリクには七人、または九人の息子があって、氏族の守護者となっていると言い、また、二人、もしくは九人の娘がいるとも言う。エルリクが死者の世界の主、悪霊の主であるという観念の他に、ショル人やハカス人では、エルリクはシャマンに人間の守護者となる助手を与えたと伝えている。テレウト人では、子供の霊魂はエルリクから授かるという信仰もある。クマンジン人やショル人では、エルリクは三兄弟で、地下界にはそれぞれに従属する精霊がいるという。また、死後の世界は恐ろしい地獄ではなく、死者はこの世と同じ生活を送っているのだという観念もあり、エルリクの性格は全体としてかなり多岐多様である。

出典:
神魔精妖名辞典
神様コレクション
神の文化史事典(白水社)
東洋神名事典(新紀元社)
「天使」と「悪魔」がよくわかる本(PHP文庫)

作者ひとこと:
エルリクのデザインは、髭を蓄えた、三眼の魔王の様な姿に描きました。