自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2019年10月29日火曜日

「テ・ツナ」



テ・ツナ

タヒチやフランス領ポリネシアのソシエテ諸島、ポリネシアのクック諸島の伝承と信仰、神話に登場する海に棲んでいる怪物の一種。テ・ツナは海に棲んでいる巨大なウナギの様な姿の怪物である。クック諸島に伝わる神話では、昔、マンガイア島に「ヒナ」という名前の少女が住んでいた。島の切り立った崖の下には泉があって、その泉の水はとても暖かくて、良い香りがした。この泉はヒナ以外の人々には知られていなかったので、ヒナは毎日、人知れずこの泉で水浴びをするのを日課としていた。この泉には沢山のウナギが住んでいて、ある日ヒナが泉でいつもの様に水浴びをしていると、泉にいるウナギ達の中でも一番大きな、巨大ウナギがヒナに近寄って来て、ヒナの身体に纏わり付いて、彼女の身体をこする様に動き回った。これはヒナにはとても気持ちが良かったので、それから毎日この巨大ウナギのしたいようにさせておいた。いつもの様に泉に水浴びをしに、ヒナは太陽も昇りきっていない早朝から泉に行くと、あの巨大ウナギが、ハンサムな若い男に変身し、自らを「ツナ」という名のウナギの神であると名乗り、ヒナが美人なので、ツナはこの泉から去って、ヒナと一緒に暮らしたいと、ヒナに申し出た。それを了承したヒナはツナと共に家に帰って来て、恋人同士として仲睦まじく暮らした。しかし、ツナは時々、元の巨大ウナギに戻ってしまう為、ヒナは恋人であるツナの事を誰にも秘密にしていた。やがて時が経ち、ある日ツナは突然、ヒナの元を去らなくてはいけなくなった事を伝えた。その事を聞いたヒナは別れがたく、大いに悲しんだ。悲しむヒナにツナは悲しんではならないと言い、実は今夜この島に大雨が降り、洪水が起こって島全体が海に沈んでしまう、という事を伝えた。驚くヒナに話を続けて、洪水になった時にツナがヒナの元に会いに来る事を伝え、それまでは水が入って来ても決して逃げずに待っていて欲しいと伝えた。更にツナが到着すると、そこで首を突き出すから、ヒナはツナの首を斧で切り落とし、その首を持って水をかき分けて山を登り、水の来ない所まで辿り着いたら、そこに首を埋め、そして毎日埋めた跡がどうなっているか確かめて欲しいと伝えた。そう言い終えたツナは、ヒナの前から姿を消してしまった。その夜、ツナの言う通りに大雨が降り始め、水かさも増していき、朝になる頃には辺り一面水没し、ヒナの喉の辺りまで水かさが増していた。ヒナはそれでも、ツナの言い付けを守って、ツナが来るのを待っていた。すると戸口に巨大ウナギがやって来た。ヒナは夢中で斧を掴むと、巨大ウナギの頭を切り落とし、その頭を抱いたまま、山上へと向かい、そこに丁寧にその頭を埋めた。頭を埋めると大雨は止み、水も引いていった。それから毎日、ヒナはツナの頭を埋めた場所に通った。しばらくすると、そこから一本の緑の芽が出て来た。翌日にはもう一本の芽が生えてきて、互いにゆっくりと育っていき、真っ直ぐに何処までも伸びていった。ヒナもこの時、身籠っており、やがて産まれた子供はすくすくと育ち、ツナの頭を埋めた所から生えた芽も木に変わっていて、子供はその木に登って実った実を採って来た。この木がココナツの始まりで、ツナの所から生えた二種類のココナツからはジュースが採れたり、白い果実が採れた。またそのココナツの白い果実は「テ・ロロ・オテ・ツナ(ツナの脳みそ)」と呼ばれた。

出典:
神魔精妖名辞典
ハワイの神話と伝説
世界の怪物・神獣事典(原書房)

作者ひとこと:
テ・ツナのデザインは、巨大ウナギの姿に描きました。神話にちなんで、斧に巻き付いています。

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