キンカイショクミツオハナアルキ<金灰色ミツオハナアルキ>
ハラルト・シュテュンプケが著したとされる「鼻行類(びこうるい)」の中で紹介されている、奇妙な構造を持つ動物の一種。鼻行類の原産地は、日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人のエイナール・ペテルスン=シェムトクヴィストが発見した、南海のハイアイアイ群島である。ツツハナアルキ科のミツオハナアルキ属に含まれる19種のうちの一つ。この種はカオリミツオハナアルキとともにミタディーナ島に生息するが、キンカイショクミツオハナアルキはこの島の東半分に、カオリミツオハナアルキは西半分に分布する。これらのミツオハナアルキ属の特徴は、真に固着性の種であるということである。すなわち、彼らは鼻で固着して立ち、ふつうは幼獣期に選んだ付着場所から離れることはない。鼻で立ち、鼻から赤味を帯びた黄色の分泌液を出す。この分泌液は時がたつにつれて、大きな柱状の足状部、すなわち鞍になり、この小動物の体(頭胴長約8cm、尾長11cm)はしだいに高く持ち上げられていくことになる。尾、とりわけ毒爪のある先端に皮膚腺が分布し、果実のような香りのする粘着力の強い分泌物を出す。この匂いにおびき寄せられて尾にとまった昆虫は、そこにくっついてしまい、この動物の前肢ではぎとられて口へ運ばれる。きわめて小さな昆虫が飛んできて付着した場合には、いちいち摘まみとったりせずに、ときどき尾を口でしごいてなめとる。海に近い石ころだらけの斜面にコロニーを作って生息する。このコロニーはふつう小さな陸生のカニと共生しており、カニはこのハナアルキの食べこぼしを食べて暮らし、その糞も片づける。繁殖期になると、雄は薄明時に自分の鞍を捨て、すべりながら、かつ前肢でいざりながら雌に近づく。そして交尾を終えると、ふたたび自分の鞍にもどる。
出典:
鼻行類(平凡社)
作者ひとこと:
キンカイショクミツオハナアルキのデザインは、鼻から出る分泌物で固着し、尾からネバネバした分泌物を出している小動物の姿に描きました。