司生虫(シショムシ)
日本に伝わる幻獣、または妖怪の一種。司生虫は、福岡県に伝わる怪虫の類である戦国時代以前、現在の福岡県直方市と若宮町(現在の福岡県宮若市)の境界辺りに「竜ヶ岳城(りゅうがたけじょう)」という山城があり、この山には山城が出来る以前から司生虫が棲み着いていた。この司生虫は、この山の主と言われており、栄螺に似た姿の虫である 普段は姿が見えないが、敵が山城に攻めてくると、この司生虫が夥しく現れて、大群で山を覆ってしまう。敵はこの突然大量に現れた司生虫に足を取られ滑り、弱っている間に、竜ヶ岳城の兵達がその敵目掛けて、上から矢を射かけたり、石や大木を落とす為、たまらず敵は逃げ帰り、竜ヶ岳城は常に安泰だった。敵は、戦いになると必ず姿を現す、この司生虫の居場所を間者を入れて探ったところ、司生虫は多数の井戸から湧き出る様に現れている事が分かり、敵はその井戸を次々に埋めてしまった。その結果、竜ヶ岳城は落城したと言う。また、この司生虫は違う姿で語られている伝説もあるそれによると、やはり同じ竜ヶ岳城の城の麓の沼に司生虫は棲んでおり、その姿はイモリに似ている。竜ヶ岳城に敵が攻め込んで来た時に、この司生虫に米のとぎ汁を注ぎ呪文を唱えると司生虫は巨大化し、雨を呼び風を起こし、山崩れを起こしたりして攻め込んで来た敵を排除した。また司生虫は、攻め込んで来た敵がいくら進んでも、1里の道が2里に見えて、竜ヶ岳城に近付けないという能力も持っていた。司生虫を巨大化させる呪文は竜ヶ岳城城主「杉家(すぎけ)」の血縁の者だけの秘密だったが、杉家がかつて滅ぼした敵「麻生氏(あそうし)」の重臣の遺児「長谷川左近(はせがわ さこん)」の武勇を杉家は認め、この長谷川左近を召し抱え、長谷川左近を姫の婿にした。長谷川左近は姫から司生虫の秘密を聞き出し、遂に長谷観音の力を借りて司生虫を滅ぼした。長谷川左近は更に、旧い麻生氏の旧臣を集めて杉家を攻めたところ、竜ヶ岳城は落城した。
出典:
南の魚座 福岡短歌日乗
和漢百魅缶
作者ひとこと:
司生虫のデザインは、栄螺の様な巻き貝の殻を持った怪虫の姿に描きました。姿は栄螺とイモリを合体させたイメージにしてみました。