モシリシンナイサム
北海道を主な居住圏とする民族であるアイヌに伝わる妖怪の一種。モシリシンナイサムは、その体に白と黒の斑模様のある、馬ほどの大きさの妖怪で、村外れの湿地帯などに現れる。モシリシンナイサムの姿や足跡を見てしまった者は長生き出来ず、その一生を不幸な人生で過ごす羽目になってしまう。またモシリシンナイサムは、様々な動物に姿を変えて人間をつけ狙うとも言われている。例えば、路傍に大きな牡鹿がいたと思ったら、その牡鹿が一瞬にしていなくなってしまう。そんな時はモシリシンナイサムに狙われている証拠だという。あるアイヌが、川の砂地に人が集まっているのを見て、そこに行ってみた。彼らは「ここに馬の足跡があるが、これは新冠(にいかっぷ)の牧場から来たものだろうか」と言った。見てみると確かにそれは馬の足跡であるように見えたが、ここに馬が来るはずがない。これはモシリシンナイサムの足跡だろうと彼は言った。その足跡は川下に向かって行っていた。このアイヌは、この足跡を見たためか、その年は悪いことばかりが起こったという。また、ある人が十勝(とかち)でモシリシンナイサムを追いかけて、この妖怪を仕留めた。と思ったら馬ほどの大きさもあったモシリシンナイサムは、影も形もなくなっていた。その後、この人の五人兄弟は残らず死んでしまった。また、以下の様な伝説もある。大昔、「イタチの神」が天から降りて来て地上に住もうとした時、古くから世界の端に住んでいたモシリシンナイサムがイタチの神に力比べを申し込み、いきなりモシリシンナイサムはイタチの神を火の中に投げ込んだ。モシリシンナイサムが喜んでいると、焼け死んだはずのイタチの神が現れて、逆に今度は、イタチの神がモシリシンナイサムを火の中へと投げ込んだ。モシリシンナイサムは火の中から逃げようとしたものの、イタチの神に阻まれて、そのまま焼け死んだ。その灰からは、猫や狐といった動物が誕生した。こうした経緯で狐は悪の心を持ち、人間を化かすのだという。「モシリシンナイサム」という名前の「モシリ」は「国」、「シンナイ」は「別の」、「サム」は「側」を意味し、「他の世界から来る者」または「世界の乱入者」という意味で付けられた名前である。
出典:
Wikipedia
神魔精妖名辞典
幻想動物の事典
日本妖怪大事典(角川書店)
作者ひとこと:
モシリシンナイサムのデザインは、体に斑模様のある魔物の姿に描きました。体の半身がモヤか霧の様になっているのは、このモシリシンナイサムが様々な動物に自由自在に変化できるイメージを表しています。
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