中国神話に登場する神獣、または怪物。夔龍は一本足の龍である。「山海経」の「大荒東経」には、【東海に流波山があり、この山は海に入り七千里、この山には野獣が住んでおり、形状は牛の様で体は蒼身で角は無く、蹄のある足は一本足であった。海水に出入りする時には大風大雨を伴い、その身体から発する光は太陽や月と同じで、その咆哮は雷鳴と同じであった。名を夔と言った。黄帝は夔を得て、その皮で太鼓を造り、雷獣の骨で造ったバチでその太鼓を叩くと、雷鳴の様な音が五百里の外まで響き渡った。これを用いて天下に威を示した】とあり、「夔(キ)」の事が書かれている。この様に山海経の記述では夔は牛の様な怪物であると書かれているが、古代では夔と言えば蛇や龍の形状として描かれる場合が多く、書物にも龍として書かれている場合が多く見られている。殷の晩期と西周時代には青銅器の装飾で「夔龍紋」は主要な装飾の一つであった。夔龍紋の多くは口を大きく開き、尾を巻いている細長い形状として青銅器に装飾されている。この夔龍は一本足の龍とされる他にも、帝「舜(シュン)」の二人の家臣の事を指しているとする場合もある。夔龍の内の夔は楽官で、龍は諫官であったとも言われている。「書・舜典」には、【伯が稽首の礼で夔龍に譲った】とある。「孔伝」には、【夔龍は二臣名】と書いている。また「夔」という漢字は、古代中国においてかなり大切な意味を持っていたと考えられている。帝「俊(シュン)」や、帝舜、帝「嚳(コク)」は元々、「夔」という神が分かれた存在であるという解釈もある。古籍中には夔が蛇の形状で登場している場合がある。「説文解字」には【夔、神魅也、龍の様で足は一つである】とある。殷時代の末期と西周時代の青銅器に夔は主要な装飾の一つとして用いられてきた。多くは口を張り裂けんばかりに開けて尾を巻いている細長い形である。その姿は青銅器の形状にあわせて描かれている。青銅器上の龍紋はよく夔紋や夔龍紋と呼ばれている。宋代以来の記録中では、青銅器上で表現される一本足で爬虫類の形状をした装飾の図柄は全て夔と称された。これは【夔一本足】という文献の記述によるものである。実際、一本足の動物が二本足の動物の側面に描かれている場合は、夔紋という呼称は用いられずに、この場合は夔龍紋や龍紋と呼ばれている。夔竜文(夔龍紋)は、中国の殷・周代の青銅器に用いられた文様の一種である。龍身で足が一本、角と手がついている架空の動物で、口が上下に反り返っているものを夔竜(夔龍)、上唇が下に曲がって嘴状になっているものを「夔鳳(キホウ)」という。夔竜文は側面獣形の文様で、多くは雷文とともに用いられる。殷から西周前期の文様では一対の夔竜が絡み合う形であるが、西周中期以降では単独、または連続の文様として表現され、夔竜は胴長となり後方に反転したもの、蛇身に近くなったもの、両頭がS字形になったものがある。
出典:
プロメテウス
コトバンク
作者ひとこと:
夔龍のデザインは、三本爪を持った一本足だけを持った龍の姿に描きました。
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