イナラシュ<イナラス、イナル、イナラ>
メソポタミア、ヒッタイト神話に登場する、風と空気の女神。イナラシュは、人間である「フパシャシュ」を竜神「イルルヤンカシュ」退治に協力させるため、一夜を共にするという条件を承諾する。イルルヤンカシュを退治したフパシャシュをイナラシュは、神にしてやり、イナラシュは、神となったフパシャシュを夫にした。しかしフパシャシュは、人間界にいる家族の下に帰ろうとした為、イナラシュはフパシャシュを殺してしまった。ヒッタイト神話に登場する女神であるイナラシュは、イルルヤンカシュを気象神「タル」が退治する話で、恋人で人間であるフパシャシュとともにタルに助力したとされる。またイナラシュは、タルの娘とされる事もある。イナラシュは、イルルヤンカシュ退治に助力したフパシャシュに、お礼として家を与え、フパシャシュを神として扱ったが、窓を開けて人間である彼の妻や子供を見ようとしてはいけない、とフパシャシュに言った。しかし家族を恋しくなったフパシャシュは、イナラシュのこの言いつけを破ってしまい、結果としてフパシャシュはイナラシュに殺される事となった。イナル(イナラシュ)は、ハッティ・ヒッタイトの女神である。彼女は、竜神イルヤンカ(イルルヤンカシュ)と天候神の戦いを語る「イルヤンカ神話」に登場する。最初、天候神はイルルヤンカシュとの戦いに敗れる。イナラシュは天候神の側についていたが、天候神の勝利には人間の助力が必要であったらしく、イナラシュは人間フパシヤ(フパシャシュ)に援助を求める。フパシャシュは女神イナラシュに性交を(夫婦となる事を?)求め、イナラシュはそれに同意する。また、イナラシュは宴会を設け、酒を満たした甕を用意してイルルヤンカシュとその子供達を招いた。イルルヤンカシュと子供達は、その宴会でしこたま飲んで食べたので動けなくなった。そこで隠れていたフパシャシュが現れ、イルルヤンカシュと子供達を縄で縛り上げた。そこに天候神が現れ、イルルヤンカシュを殺害した。この後、イナラシュはフパシャシュと自分の住まいで一緒に住んだが、里心が芽生えるのを恐れて、フパシャシュに窓の外を見る事を禁じた。しかしフパシャシュは、イナラシュの命令に背いて外を見て、自分の妻子の姿を認め、家に帰る事をイナラシュに求めた。その後の部分は欠如している 神話によると、嵐の神と竜神イルルヤンカシュが争い、イルルヤンカシュが勝った。嵐の神は復讐しようとし、女神イナラシュに助けを求め、また色々な酒を用意した。女神イナラシュはイルルヤンカシュとわたり合う危険を避ける為に、人間フパシャシュを呼び、この事を頼んだ。フパシャシュはイナラシュと共寝する事を条件に出し、女神はこれを認めた。間もなくイルルヤンカシュがやって来て、酒をたっぷり吞みほした。フパシャシュは隠れていた小屋から出て、イルルヤンカシュを殺した。その後、イルルヤンカシュを退治したフパシャシュを、イナラシュは(人間であるフパシャシュが神の力を得た事を警戒し)、タルッカの国の高台の家に彼を住まわせて、その家の窓を開ける事を禁じた。二十日が過ぎると、フパシャシュは我慢が出来なくなって、窓を開けて外を見た。すると妻や子供が見えたので、イナラシュに、家に帰らせてくれと頼んだ。イナラシュとフパシャシュは口論を始め、ついに怒ったイナラシュはフパシャシュを殺した。
出典:
神様コレクション
神魔精妖名辞典
神の文化史事典(白水社)
世界の神話伝説・総解説(自由国民社)
作者ひとこと:
イナラシュのデザインは、頭に牛の角を生やし、両腕、両足にも角を生やし、背中からも四本の角が生えている女神の姿に描きました。
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