自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2025年12月23日火曜日

「両面宿儺」


両面宿儺(リョウメンスクナ)<宿儺(スクナ)>

 歴史書『日本書紀(にほんしょき)』に記されている怪物。仁徳(にんとく)天皇治世六十五年のときに「飛騨国(ひだのくに)に一人(ひとりのひと)有(あ)り。宿儺(すくな)と曰(い)ふ。其(そ)れ為人(ひととなり)、体(むくろ)を壱(ひとつ)にして両(ふたつ)の面(かほ)有り。面 各(おのおの)相背(あひそむ)けり。頂(いただき)合ひて項(うなじ)無(な)し。各手足有り。其れ膝有りて膕(よほろ)踵(くびす)無し。力 多(さは)にして軽(かろ)く捷(と)し。左右に剣を佩(は)きて、四(よつ)の手に並(ならび)に弓矢を用(つか)ふ。是(ここ)を以(もっ)て、皇命(みこと)に随(したが)はず。人民(おほみたから)を掠略(かす)みて楽(たのしび)とす。是に、和珥臣(わにのおみ)の祖難波根子武振熊(おやなにはのねこたけふるくま)を遣はして誅(ころ)さしむ」という記述がある。
 岩手県のとある古寺では、その本堂の奥の密閉された空間で、この両面宿儺が、黒ずんだ木箱の中に封じられていたという。その姿は二つの頭が後頭部同士で接合し、腕が左右二本ずつの計四本、体は一つで足は通常通り二本という人間のミイラで、この箱を開けて中身を見てしまうと多くの不幸に見舞われ、直接箱を開いたものは謎の心筋梗塞で死ぬか、精神を狂わされるという被害に遭い、また中身を見ただけの者たちも原因不明の高熱に見舞われたり大怪我をするなどの被害を受けた。その正体は大正時代、ある邪教の教祖が日本国家そのものを呪うために作り出したという怪物。物部天獄(もののべてんごく)という偽名を名乗っていたその男は大正時代、岩手のある部落で生活に困窮した親によって見世物小屋に売られていた結合双生児を大金を出して買い取り、そして彼らを他の奇形の人間たち数人とともに押し込んで殺し合わせる蠱毒(呪術の類)を行った。しかもその儀式は結合双生児が生き残るよう他の者たちにあらかじめ致命傷を負わせた状態で行われ、さらに結合双生児は唯一生き残った後も殺した者の肉や自身の糞尿を食べねばならぬほどの長期間に渡りその地下室に監禁された。そして仕上げとして物部天獄は彼らをまた別の部屋に閉じ込め、食料を与えずに餓死させる。彼はその死体に防腐処理を施し、その死体の腹部に遺跡で発掘された古代において朝廷に反逆していたまつろわぬ民たちの骨を粉状にしたものを入れ、日本神話に語られる怪物、両面宿儺になぞらえた呪物を作り上げた。そして物部天獄はそれを携えて日本中を渡り歩き、実際に彼が訪れた場所ではさまざまな災害が引き起こされたという。最後に物部天獄は相模湾沿岸近辺にて日本刀で喉を掻き切って自害したが、その際に血文字で「日本滅ブベシ」という遺書を残していたという。また彼の自害の直後、関東大震災が発生し、それもまた物部天獄と両面宿儺の起こした災いであった可能性が示唆されている。
 2ちゃんねるオカルト版の「死ぬ程洒落にならない怖い話集めてみない?109」スレッドに、二〇〇五年九月二十一日に書き込まれた怪異、元の話では結合双生児は即身仏にされたといったことが書かれていたが、即身仏は密教系の日本仏教の一部において自らが望んで行う修行であるため、怪物になるために他者から強制される行為には即さないと思われる。『日本書紀』では人民を襲い朝廷に討伐される怪物として記されているが、地元岐阜県では鬼や龍を退治したという伝説が残されていたり、現在も英雄としての信仰が続いていたりと決して悪の側面だけを持つ妖怪ではないことにも留意したい。

出典:
『日本書紀 二』(岩波文庫)
『日本現代怪異事典』(笠間書院)

作者ひとこと:
 ChatGPTで生成。背中がくっついているように見せる構図を出すのに苦戦しました。拙作『アマテラスの力を継ぐ者』に登場する両面宿儺をイメージし、古代の甲冑を身にまとい、片方には剣を、もう片方には弓矢を持たせています。

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