座敷童子(ザシキワラシ)
岩手県を中心とした東北地方では、座敷童子のいる家は繁栄すると言われている。その精霊は、二、三歳あるいは五、六歳くらいの子どもで、顔は赤みを帯びていたり、透きとおるような色白(ごくまれに真青)。別名はザシキボッコ、倉ワラシ、倉ボッコなど。座敷童子には男女両方いるが、女の子の場合が多いそうだ。女の子の座敷童子は黒く美しい髪を長く垂らしていたり、オカッパ頭をしている。着物は赤い色を好んで着るようだ。男の子は株切頭やザンギリ頭で、まれにツルツル坊主もいる。
福の神のような性質があり、棲みつかれた家は繁栄し、座敷童子がいなくなると家が傾く。なので家の人はいつまでも家にいてくれるよう気を使う。小豆類が好きということで、毎日、小豆ご飯などを供えておくようにし、もし食べられていないようだったら、家が傾く前兆と考えた。
寝ているときにイタズラされて睡眠不足になることもあり、たとえば枕を足のほうへ移動させる枕返しを手始めに、体を布団の上から押しつけたり(ひどいときには呼吸ができなくなる)、頭を叩いたり、懐に氷のように冷たい手を入れてきたりと、朝まで眠らせてくれない。
岩手県江刺(えさし)郡では座敷童子を次の三つの種類(階級)に分けていて、それぞれ性質も違うとされている。一つ目は「チョウピラコ」。最も色白できれい。二つ目は「臼搗子(うすつきこ)」。夜中に石臼で米をつき、箕(み。穀物の殻・ごみなどを除く道具。また、ちりとり)で塵を拾う音をさせる。三つ目は「ノタバリコ」。夜半に土間から這い上がってくる赤子のようなもの。
東北地方のなかでも、座敷童子は秋田県に少ないとされる。それは三吉鬼(大人(うし)の類)が自分の縄張りである秋田には下等な妖怪などを入れないとされていたためである。
出典:
『幻想世界の住人たちⅣ〈日本編〉』(新紀元社)
作者ひとこと:
Geminiで生成。拙作『アマテラスの力を継ぐ者』に登場する座敷童子・鶴音(たづがね)をイメージし、着物の柄を鶴にしました。
迷い家(マヨイガ)<迷い処>
柳田国男(やなぎたくにお)の『遠野物語』の六十三話と六十四話に、山中をさまようことでたどり着ける、不思議な異界の話が書かれている。六十三話には、遠野郷の外、土淵村の北のほうにある小国(おぐに)村で、かつて貧しかった三浦家が村一番の金持ちになった由来が語られている。それによれば、軽い知的障害のあった妻が、川沿いに蕗を採りに行き、つい山奥に入ってしまうと、そこに誰もいない大きくて立派な家があった。妻は、そこは「山男の家」で、連れ去られてしまうのではないかという恐怖を抱き、駆け出して家へ逃げ帰った。ある日、妻が川上から流れてきた赤い椀でケセネギツ(ケセネを容れておく箱)のなかのケセネ(米稗その他の穀物のこと)を量ると、ケセネはいつまで経ってもなくならない。この不思議な椀を手に入れたことによって、三浦家は思わぬ幸運に恵まれた。遠野の人は、こうした異界に富の源泉があると信じられていた。しかも、迷い家にたどり着いた者は授かり物として、その家から食器でも家畜でも自由に盗み出していいというのだから、幸福のためには「盗み」をも否定しないという考え方が垣間見られる。それは、妹が姉の霊華をこっそり取ったという遠野三山の女神の話(二話)とも通底するものだろう。ただし六十三話の妻は無欲だったために、何物も盗んでこなかったので、椀が自ら流れてきた。おそらく、少し「馬鹿」と呼ばれた人であるがゆえに、迷って異界の迷い家にたどり着くことができ、しかも無欲であったことで幸運がもたらされた。つまり、この家の繁栄は、まるで座敷童子がいるように、不思議な力をもった妻がいることによって得られた、ともいえる。遠野はこうした魯鈍な人、あるいは心の病を持つ人の神秘的な力を信じて、共生してきた社会だった。彼らはイタコやボサマ(かつて奥州にいた、盲目の門付け芸人のこと)と呼ばれた宗教者たちと同様、神や仏や死者たちの住む異界と交信できる存在だった。
出典:
『NHK「100分 de 名著」ブックス 柳田国男 遠野物語』(NHK出版)
作者ひとこと:
ChatGPTで生成。遠野の曲家(まがりや)をイメージして描かせました。満天の星は、岩手県出身である宮沢賢治(みやざわけんじ)の『銀河鉄道の夜』をイメージしています。イラスト右側には厩舎もあり、灯りに照らされ、馬のシルエットが浮かんでいます。


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