アドニス
ギリシア神話に登場する神、または人物。アドニスという名前は、セム語の「主(adon)」から(旧約聖書のヘブライ語で「主」はアドーナイ)。アドニスという名前が非ギリシア語なこと、神話の舞台がギリシア以外な事から分かるように、アドニスは元来、非ギリシア系の神である。アドニスの父はシリア王「テイアス」、またはキプロス(アッシリアとも)王「キニュラス」で、母はその実の娘「スミュルナ」または「ミュラ」。スミュルナの母「ケンクレイス」は不遜にも自らの美貌が「アフロディテ」に勝ると自慢した。その罰としてアフロディテは、ケンクレイスの娘スミュルナが自分の父に恋をするようにした。スミュルナは侍女の助けを借りて正体を隠して父と同衾した。しかしそれが明らかになり、父は娘スミュルナを殺そうとしたので、スミュルナは王宮から逃れ、アラビア半島を彷徨うが、アフロディテによって、スミュルナはミルラ(没薬)の木に変えられた。スミュルナはすでに妊娠していたので、その木からアドニスが産まれた。アフロディテは幼子のアドニスを箱に隠して、冥界の王女「ペルセポネ」に養育を依頼する。しかしペルセポネは、アドニスの美しさに魅惑され、成長したアドニスをアフロディテに返す事を拒む。そこで「ゼウス」が仲介者となり、一年の3分の1ずつをニ女神のもとで、残りの3分の1はアドニス自身が選ぶところで過ごすようにと定めたが、アドニスは残りの3分の1もアフロディテと過ごすようになった。こうした事はアフロディテの愛人「アレス」の怒りを招き、アドニスは狩りの最中、アレスの放った猪によって殺された。殺されたアドニスの体から流れ出た血からはアネモネの花が咲いた。
出典:
神の文化史事典(白水社)
作者ひとこと:
アドニスのデザインは、手に花の咲いた杖と、アネモネの花を持った男神の姿に描きました。
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