地縛霊(ジバクレイ)
何らかの理由で自分の死が自覚出来ないまま死ぬ、また怨みや憎悪といった激しい感情を抱いて死ぬなど自分の死を受け入れられないまま死んだ場合に、土地や建物など特定の場所に固定化して現れるようになった霊のこと。ただ、同じ場所に出現する以外にも、死の直前の行動を繰り返す、怨んだ相手を滅ぼそうとする、無差別に通りかかった生きている人間に害を加えるなどの行動を取る事がある。現在ではメディアでも使われるなど普遍的な用語となっているが、元々は近代欧米で発展した心霊主義の中で生まれた言葉のようである。春川栖仙著「心霊研究事典」によれば、地上に思いを寄せ、執着を持ち、ただ何となく憑いている状態の未発達の霊魂の事を言い、よく幽霊現象が起きる場所等で怨恨を抱いてじっとしている霊であるとのこと。また同書では地縛霊がその場所に憑く理由として、相手を死滅、一家断絶させようという目的で憑く、戸惑い、偶然によって憑く、地上へ何らかの執着があって憑くと三つの原因を指摘している。日本における地縛霊の歴史も近代まで溯り、1934年に発行された浅野和三郎著「神霊主義」においてすでに「地縛の霊」という言葉が見え、また1941年に発行された「神霊文庫17篇 死者に交わる三十年から」には、浅野氏が1927年に記したという文章の中に「地縛の霊」という言葉が記されている。ここで言う「地縛の霊」は地上から離れられず、より高位の世界である「幽界」や「霊界」に向かう事が出来ない死者の霊、という意味で使われており、現在のような特定の場所に縛られる霊という意味はない。ただし前述した「死者に交わる三十年から」の中で、すでに自分の死に気付かず自殺を繰り返す霊が地縛の霊として数えられているのが見える。また1943年発行の岡田茂吉著「明日の医術」第三篇では自身が死んだ場所から動けなくなった霊の事を「地縛の霊」と呼んでいる。しかしこの時点ではまだこれは一般的な考え方ではなかったようだ。この地縛の霊、もしくは地縛霊が現在の形で広く使われる言葉となったのは恐らく1970年代以降だと考えられ、中岡俊哉氏や、つのだじろう氏らの著作の影響が大きいと思われる。オカルトブームの立役者となった彼らの作品では地縛霊は何らかの理由で特定の場所から動けない死者の霊として扱われている。そして、その他の地上を彷徨う霊については、浮遊霊(フユウレイ)という種類で分けられるようになったようだ。これら現代の地縛霊については大島清昭著「現代幽霊論」にてその特徴が考察されている。それによれば死者がその特定の場所に固定される原因は大別して三パターンがあるとし、「屍体が存在する(した)場所」、「自らが生命を落とした場所」、「生前、関わりが深かった場所」の三つのどれかに固定化されるという。
出典:
日本現代怪異事典(笠間書院)
作者ひとこと:
地縛霊のデザインは、スーツを着た足の無い男性の姿の幽霊に描きました。
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