舞首(マイクビ)
日本の妖怪の一種。この舞首は、天保12年(1841年)刊の怪談集「絵本百物語」にある妖怪である。寛元(1243年~1247年)の頃、鎌倉検非違使の放免(微罪犯を検非違使の手下としたもの)に、小三太、又重、悪五郎という三人がいた。伊豆の真鶴が崎(神奈川県真鶴町)で祭があった時、その酒席でこの三人が争いを始めた。小三太と又重は共謀して大力無双の聞こえある悪五郎を討とうとしたが、悪五郎はそれを見破って一刀のもとに小三太を斬り殺し、小三太の首を切断した。しかし逃げ出した又重を追跡する途中、悪五郎は山中で石に躓き転倒してしまった。この好機に又重は悪五郎に斬りかかり、起き上がった悪五郎は又重を刀で突いて反撃した。又重と悪五郎の両者は組み合い争ううちに足を踏み外し、共に海へと転落してしまった。又重と悪五郎が互いの首を刀で掻き落とすと、二つの首は体を離れた後も海中で争いを続けた。やがて悪五郎の腰に提げられていた小三太の首も躍り出て、この争いに加わった。夜には三人の首が噛みつき合い、火炎を吐いて争い、昼には海水が渦を巻いて巴の様相を見せたため、この場所は巴が淵と名付けられたという。「絵本百物語」の本文ではこの様な話となっているが、絵につけられた詞書では「三人の博徒勝負のいさかひより事おこりて公にとらはれ、皆死罪になりて、死がいを海にながしけるに、三人が首ひとところによりて、口より炎をはきかけ、たがひにいさかふこと昼夜やむことなし」とあり、三人の博徒が勝負上の諍いから捕らえられて死罪になり、海に流された死骸の首が一箇所に集まり昼夜を問わず争うようになったと解説されており、本文と違った解説がされている。
出典:
【妖怪図鑑】新版TYZ
日本妖怪大事典(角川書店)
作者ひとこと:
舞首のデザインは、三つの男性の首の姿の妖怪に描きました。