自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年6月30日金曜日

「ミズチ」


ミズチ

巨蟒(おろち)と並んで、日本で最も古い神の一つ。「ミズ」は水を、「チ」は霊を意味しており、水辺に棲む巨大な蛇のことを示す。蛇は脱皮を繰り返し、死と再生を繰り返す不老不死の神霊であると考えられ、縄文の昔から畏怖され、尊ばれてきた。「日本書紀(にほんしょき)」の巻十一、仁徳(にんとく)天皇六十七年十月の条に「是歳(ことし)、吉備中国(きびのみちのなかのくに)の川嶋河(かはしまがは)の派(かはまた)に、大虬(みつち)有りて人を苦(くるし)びしむ。時に路人(みちゆくひと)、其の処に触れて行けば、必ず其の毒(あしきいき)を被(かうぶ)りて、多(さは)に死亡(し)ぬ」とある。勇ましくて力の強かった笠臣の先祖の県守(あがたもり)は、三つのヒサゴを水に投げ入れ、「自分はお前を殺そう。お前がこのヒサゴを水に沈めるなら、自分が逃げよう。沈めることができぬなら、お前を斬るだろう」と言った。すると竜は鹿になって、ヒサゴを引き入れようとした。しかしヒサゴは沈まなかった。そこで剣を抜いて水に入り、竜を斬ったという。また、同じく仁徳天皇の十一年の条には、武蔵(むさし)の強頸(こわくび)と河内(こうち)の茨田連衫子(まんだのむらじころものこ)の二人を「河神(かわのかみ)」に奉れば、きっと堤防が完成するだろうという神託を得た、と記されている。強頸は泣き悲しんで水に入ったが、衫子は丸いヒサゴを二個とって、河の中に投げ入れて神意を伺う占いをした。「自分を必ず得たいのなら、このヒサゴを沈めて浮かばないようにせよ。もしヒサゴを沈められないなら、偽りの神と思うから、無駄に我が身を亡ぼすことはない」と言うと、つむじ風が俄かに起こって、ヒサゴを水中に引き込もうとしたが、ヒサゴは波の上を転がるばかりで沈まなかった。衫子は死ななかったが、その堤防は完成したという。これらの話が、河童が瓢箪や夕顔を忌むという今日の俗信と関連したものであることは、柳田国男(やなぎた くにお)が指摘している。このような昔話は、我が国に広く分布している。それによれば、老父が蛇または河童に娘を与えることを約束してしまい、娘(多くは末娘)が、蛇または河童に嫁ぐとき瓢箪を持って行く。そして、もしこれを川中に沈めることが出来るなら、あなたの嫁になるという。瓢箪を水中に沈めようと努力するが、すぐ浮き上がってしまい、疲れ果てて降参する、といったような内容だ。現在の昔話において、嫁に行くことになっているのは、仁徳紀に記されたような人身供儀の痕跡であろう。

出典:
幻想世界の住人たちⅣ 日本編(新紀元社)
日本書紀 二(岩波文庫)
日本書紀 上 全現代語訳(講談社学術文庫)

作者ひとこと:
ミズチのデザインは、巨大な蛇の姿の精霊に描きました。体にある無数の渦巻き模様は、渦巻く水流のイメージです。体には瓢箪も巻き付いています。

2023年6月29日木曜日

「野槌」


野槌(ノヅチ)<野椎神(ノヅチノカミ)>


柄の取れた槌(ハンマー)の形をした妖獣。江戸時代、「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」には実在の生物として載り、鳥山石燕(とりやま せきえん)の「今昔画図続百鬼(こんじゃくがずぞくひゃっき)」では、目鼻がなく、兎を呑み込もうとした姿で描かれている。山に棲み、木や藪の中に潜み、口が大きく、人の足に噛みつく。坂を降りるときは速いが、登るときは遅く、そのため襲われたときは、坂道を駆け登れば、追って来られないらしい。もともとは神とされ、「日本書紀(にほんしょき)」にも「古事記(こじき)」にも、「草野姫(カヤノヒメ。鹿屋野比売神)」の別名として、野槌(野椎神)という名が記されている。ノツチは野の精。ツは助詞ノにほぼ同じで、チは勢威あるものという意味。日本書紀が「句句廼馳(ククノチ)」「野槌」と記しているものを、古事記が「久久能智神(ククノチノカミ)」「野椎神」と記したのは、末尾に「神」という語を新たに加えたのだという。「チ」がすでに一つの霊格を示し、ノツチだけで完結しているため、さらにそれを「神」と称するのは一種の重複で、あとからつけ加えたものと見てよい。古事記で、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」とともに生まれた鹿屋野比売神(野椎神)は、大山津見神との間に、「天之狭土神(アメノサヅチノカミ)」「国之狭土神(クニノサヅチノカミ)」「天之狭霧神(アメノサギリノカミ)」「国之狭霧神(クニノサギリノカミ)」「天之闇戸神(アメノクラドノカミ)」「国之闇戸神(クニノクラドノカミ)」「大戸惑子神(オホトマトヒコノカミ)」「大戸惑女神(オホトマトヒメノカミ)」の八柱を生んだ。霧の神、暗闇の神、惑わしの神を生んだノヅチは、山野に棲む妖怪を産んだとされ、はじめ草の女神だったのが、自らも次第に妖怪視されていった。無住法師がまとめた仏教説話集「沙石集(させきしゅう)」では、ノヅチは徳のない僧侶が生まれ変わったものとして登場する。

出典:
幻想世界の住人たちⅣ 日本編(新紀元社)
日本書紀 一(岩波文庫)
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
野槌のデザインは、頭に口のみがある蛇の姿の神に描きました。イラストのイメージは、自然に宿る獰猛な精霊、または蛇神という感じです。

2023年6月28日水曜日

「木霊」


木霊(コダマ)


吉田兼好(よしだ けんこう)の「徒然草(つれづれぐさ)」第二三五段には「あるじなき所には、道行人(みちゆきひと)みだりに立ち入り、狐・梟(ふくろふ)やうの物も、人気に塞(せ)かれねば、所得(ところえ)顔に入り棲み、木霊などいふけしからぬ形もあらはるるものなり」とある。人のいないところには、木霊などの化け物が姿を現し、わがもの顔で棲みつくのだという。また、紫式部(むらさきしきぶ)の「源氏物語(げんじものがたり)」の「手習(てならい)」には「何のさる人をか、この院の内(うち)に捨て侍らむ。たとひまことに人なりとも、狐、木霊やうの物の、あざむきて取りもて来たるにこそ侍らめと、不便(ふびん)にも侍りけるかな。穢(けが)らひあるべき所にこそ侍(は)べめれ」とある。若い女性を救出した際、その場にいた僧が発した言葉。亡くなって葬られた人が息を吹き返したのだろうかと、貴族のひとりが、ここに息をした美しい女性がいることを不審に思い、推測を述べたところ、僧が「なぜ亡くなった人をこの院のなかに葬るのでしょう(空き家ではあるが、皇室の所領ゆえ、死体の捨て場所に選ぶはずがない)、たとえ本当に生きた人間だとしても、狐か木霊のようなものが、騙して連れてきたのでございましょう。不都合でもございますな。(女性が結局ここで死ぬという予測から)穢れのある場所だということになるようですが」と返した。また、「源氏物語」の最終巻とされる「夢浮橋(ゆめのうきはし)」にも「事の心おしはかり思うたまふるに、天狗、木霊などやうのものの、あざむきゐてたてまつりたりけるにやとなむうけ給はりし」とある。

出典:
新版 徒然草 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)
源氏物語 九(岩波文庫)

作者ひとこと:
木霊のデザインは、頭髪の様に頭から木の若芽が無数に生えている精霊の姿に描きました。体は人間でいうところの子供くらいの体型をイメージしています。

2023年6月27日火曜日

「御神橋の擬宝珠」


御神橋の擬宝珠(オミバシノギボシ)

茨城県協和町(現・筑西市)に伝わる。神明様の御手洗池に懸かっていた橋の欄干についていた飾りの擬宝珠で、明治35年(1902年)の台風で橋ごと流されてしまい、今もどこかに沈んでいるが「地上に出たい」という霊気を発しているという。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
御神橋の擬宝珠のデザインは、目口がある擬宝珠の姿に描きました。

2023年6月26日月曜日

「湖坊主」


湖坊主(コボウズ)


作者ひとこと:
湖坊主のデザインは、鼻の長い天狗の様な頭と、鱗の生えた獣の体という姿の妖怪に描きました。

2023年6月25日日曜日

「オゴメ」


オゴメ


作者ひとこと:
オゴメのデザインは、頭から木の芽が生えており、鳥の翼も持っている、木の精霊とも怪鳥ともとれる姿に描いてみました。

2023年6月24日土曜日

「庚申様の田螺」


庚申様の田螺(コウシンサマノタニシ)

栃木県都賀町(現・栃木市)に伝わる「お比丘尼様(八百比丘尼)」の昔話にみられる。昔、庚申様の晩にみんなで集まったときに、煎った大豆に砂糖をまぶして食べていたのだが、そこへたまたま混じった不思議な田螺を食べたことで、お比丘尼様は長生きになったのだと語られる。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
庚申様の田螺のデザインは、三つの目を持った田螺の姿に描きました。

2023年6月23日金曜日

「リブ」


リブ


作者ひとこと:
リブのデザインは、四つの杯を伴った神の姿に描きました。

2023年6月22日木曜日

「文殊菩薩」


文殊菩薩(モンジュボサツ)


作者ひとこと:
文殊菩薩のデザインは、蓮華と剣を手に持った菩薩の姿に描きました。

2023年6月21日水曜日

「普賢菩薩」


普賢菩薩(フゲンボサツ)


作者ひとこと:
普賢菩薩のデザインは、合掌した菩薩の姿に描きました。

2023年6月20日火曜日

「腕取り」


腕取り(ウデトリ)

三宅島(東京都三宅村)に伝わる。夜道に出て来るという妖怪で「うで出せ」と声をかけて出て来るという。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
腕取りのデザインは、影の様に真っ黒な姿の妖怪に描きました。

2023年6月19日月曜日

「日光菩薩」


日光菩薩(ニッコウボサツ)


作者ひとこと:
日光菩薩のデザインは、蓮華の上に乗った日輪を手に持った、菩薩の姿に描きました。

2023年6月18日日曜日

「金剛薩埵」


金剛薩埵(コンゴウサッタ)


作者ひとこと:
金剛薩埵のデザインは、五鈷杵と五鈷鈴を持った菩薩の姿に描きました。

2023年6月17日土曜日

「ブチブクレ」


ブチブクレ

岩手県遠野市綾織町の日増山を歩いていると、味噌玉の様な小さな黒い玉が、コロコロと転がって来る。見過ごせば下まで転がっていくが、手にしている杖などでこれを叩くと、一斗笊ほどの大きさになる。また、逃げれば、どこまでも後を追いかけてくると伝わる。打てば膨れて人に仇を成すので、村人の間ではブチブクレと呼ばれるようになった。

出典:
日本怪異妖怪事典 東北(笠間書院)

作者ひとこと:
ブチブクレのデザインは、真ん丸で一つ目の妖怪の姿に描きました。

2023年6月16日金曜日

「降三世明王」


降三世明王(ゴウザンゼミョウオウ)


作者ひとこと:
降三世明王のデザインは、三つの頭と八本の腕を持った明王の姿に描きました。

2023年6月15日木曜日

「クリシュナ」


クリシュナ


作者ひとこと:
クリシュナのデザインは、横笛を持った神の姿に描きました。

2023年6月14日水曜日

「足絡」


足絡(アシガラミ)

佐藤中陵(さとう ちゅうりょう)「中陵漫録(ちゅうりょうまんろく)」にある怪虫。会津では人の髪を抜いて川の流れに入れておくと「足絡」になるという。佐藤中陵も、実際に溝の中に足絡がいるのを見たことがあり、この様な虫は山水の出るところに生じるものだという。同様の存在は常州では針金虫と呼ぶとの記述があることからも、ハリガネムシなどの水生生物が人毛から変化するという俗信があったものと思われる。

出典:
怪異・妖怪伝承データベース
日本怪異妖怪事典 東北(笠間書院)

作者ひとこと:
足絡のデザインは、真っ黒く細長い、髪の毛の様な姿の怪虫に描きました。

2023年6月13日火曜日

「ガンガー」


ガンガー


作者ひとこと:
ガンガーのデザインは、四本腕の女神の姿に描きました。

2023年6月12日月曜日

「虚空蔵菩薩」


虚空蔵菩薩(コクウゾウボサツ)


作者ひとこと:
虚空蔵菩薩のデザインは、宝剣と宝珠を持った菩薩の姿に描きました。

2023年6月11日日曜日

「ヴァージャ」


ヴァージャ(ヴァージア)


作者ひとこと:
ヴァージャのデザインは、二頭の馬を伴った神の姿に描きました。

2023年6月10日土曜日

「馬面な毒虫」


馬面な毒虫(ウマヅラナドクムシ)

茨城県大野村(現・鹿嶋市)の立原に伝わる。昔、馬が深い田んぼに落ちて死に、その霊がなったという毒虫。大量に発生して作物に大きな被害をもたらしたので、馬の霊を祀ったところ止んだという。一時期、祭礼をしなかったところ、毒虫が再び大発生したこともあったと語られている(「泣き祇園祭」)。6月15日の「泣き祇園」は、この馬の霊を悼むおまつりだと語られている。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
馬面な毒虫のデザインは、馬の頭を持った芋虫の様な姿をした怪虫に描きました。

2023年6月9日金曜日

「月光菩薩」


月光菩薩(ガッコウボサツ)


作者ひとこと:
月光菩薩のデザインは、蓮華の上に乗った三日月を手に持ち、光背が満月と三日月になっている菩薩に描きました。

2023年6月8日木曜日

「カルキ」


カルキ


作者ひとこと:
カルキのデザインは、剣を持った英雄の様な姿に描きました。

2023年6月7日水曜日

「ヴァーマナ」


ヴァーマナ


作者ひとこと:
ヴァーマナのデザインは、剣や蓮華の花などを持った四本の腕の小人の姿に描きました。

2023年6月6日火曜日

「阿弥陀如来」


阿弥陀如来(アミダニョライ)


作者ひとこと:
阿弥陀如来のデザインは、後ろに光背がある如来の姿に描きました。

2023年6月5日月曜日

「アーパス」


アーパス


作者ひとこと:
アーパスのデザインは、三つの眼を持ち、下半身が蛇の様になっている女神の姿に描きました。

2023年6月4日日曜日

「送り狐」


送り狐(オクリギツネ)


作者ひとこと:
送り狐のデザインは、錫杖と巻物を持った狐の姿に描きました。

2023年6月3日土曜日

「バルシ」


バルシ

タイミル半島に居住する先住民族であるガナサン人(日本ではヌガナサン人とも表記される)に伝わる。バルシは、人間の姿をした精霊である。このバルシは、河川、湖沼、海のような水の中に棲み、人々に危害を加える。

出典:
幻想動物の事典

作者ひとこと:
バルシのデザインは、半人半魚の姿の精霊に描きました。

2023年6月2日金曜日

「モーッケーンネーニ」


モーッケーンネーニ

樺太東岸を主な居住域とする少数民族であるウィルタに伝わる。このモーッケーンネーニは、海の神、または水の中に住んでいる人々の事である。

出典:
幻想動物の事典

作者ひとこと:
モーッケーンネーニのデザインは、膝から下が、魚になっている人間の様な姿に描きました。

2023年6月1日木曜日

「ミトグ」


ミトグ


カムチャツカ半島に居住する民族に伝わる精霊。ミトグは、魚の様な姿をしている海の精霊である。このミトグは、嵐を引き起こすという。

出典:
幻想動物の事典

作者ひとこと:
ミトグのデザインは、頭に大きな角を生やした、巨大な魚の姿をした怪物に描きました。