自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2019年10月14日月曜日

「サルディド・ジンボ」



サルディド・ジンボ

オーストラリアの先住民であるアボリジニに伝わる人食い巨人で、サルディド・ジンボは好物の人間を食べる為に追跡する。天地創造の時代「ドリームタイム」に、サルディド・ジンボは、ある日「ママルバリー」という男がカンガルーを巧妙に追跡して殺し、キャンプにいる二人の妻の元へ持ち帰ろうとしているのを物陰からじっと見ていた。ママルベリーが今まさに獲物のカンガルーを肩に担いで、二人の妻のいるキャンプに帰ろうとしている時に、サルディド・ジンボがママルベリーの前に立ちはだかり、ママルベリーに獲った獲物を見せてくれと言った。ママルベリーはこの言葉に少しも疑いもせず、この巨人に獲物を見せようと屈んだところ、巨人は彼の頭を噛みちぎり、更に手足をもぎ取って、夕食用にと、その手足を料理した。サルディド・ジンボは料理した手足をすっかり食べ終えると、ママルベリーの残りの体を持って、ママルベリーの足跡を辿って、彼の待つ二人の妻のいるキャンプへとやって来た。キャンプにやって来たサルディド・ジンボはママルベリーの二人の妻の前に、ママルベリーの頭と胴体を地面に放り投げ、この頭と胴体を料理して食事を作るようにと言った。二人の妻は驚いたが、日頃からママルベリーは二人の妻に、常に頭を働かせるようにと教えていたので二人の妻は夫が殺されて死んだ悲嘆を抑えて巨人の前では何でもない風を装った。そして巨人に言われた通りに食事を作っているふりをしながら、計略を立てた。妻達は、自分達は人間の肉を食べても美味しいとは思わないので大きくて勇敢な貴方に獲って来て欲しい特別な物がある、とサルディド・ジンボに言った。二人の女性にこう言われ、舞い上がったサルディド・ジンボは愛用の棍棒を手に、彼女達が汁気たっぷりのディンゴの雌がいると教えた洞窟に入っていった。洞窟に入っていった巨人を見た二人の妻は洞窟の突き当たりに雌のディンゴがいるので、奥まで進むようにと巨人にけしかけた。その一方で大急ぎで二人の妻は、火の点きやすい低木を集めて、その低木を洞窟の入り口の天井に届くほど積み上げて、その低木に火を点けた。まもなく風によって濃い煙と炎が洞窟に充満し、サルディド・ジンボは洞窟から出ようにも出れなくなった。焦った巨人は燃え上がる炎を飛び越そうとしたが、背の高い巨人である為に、飛び上がった時に頭を洞窟の岩の天井に強く打ち付けて気を失い、燃え上がる炎の真上に落ちて、遂にサルディド・ジンボは焼け死んだ。巨人が死んだのを見届けた二人の妻は、巨人によって切り刻まれた愛する夫の亡骸を葬りながら涙にむせんだ。愛する夫を失った二人の妻の悲しみはあまりにも深く、食事をとる事も、埋葬した場所に夫を残して立ち去る事も出来なかった。二人の妻の父親は偉大な呪術師であり、妻達は父親が此処に来てくれる様にと狼煙(ノロシ)を上げた。狼煙を見て、到着した父親は娘達から娘達の夫が死んだ顛末を聞いて悲しみながらも、死んで光を纏っている人間を生き返らせる権利は誰にも無いのだと娘達に言った。しかし娘達の悲しみがあまりにも深いのを見た父親は娘達に、もし、そこまで夫を愛していて夫と結婚したままでいたいと願うのなら、今の姿を捨ててでも夫と一緒にいたいかと尋ねた。娘達はその言葉を承諾した。父親は娘達の決心がそこまで固いのを知り、愛する娘達を前に大きな悲しみの中、最後に娘達を抱きしめてから、娘達に儀式を執り行い、呪文の詠唱を始めた。間もなく、金色の光に包まれたママルベリーの姿が彼等の前に現れた。ママルベリーは妻達の父親に祝福を与えると、二人の妻の手を優しく取った。すると二人の妻達も金色の光に包まれた。金色の光に包まれた三人は去って行った。父親は一人、ママルベリーの亡骸と娘達の体の方に向かい、それらを埋葬した。

出典:
世界の怪物・神獣事典(原書房)

作者ひとこと:
サルディド・ジンボのデザインは、四つの目を持った鬼の様な姿の巨人に描きました。手には棍棒と、食べたばかりで骨になった人間の腕の部分を持っています。

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