自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年7月30日日曜日

長期休載のお報せ。


本日から長期休載に入ることとなりました。来年(2024)4月3日の再開を目途に、ストックとするイラストを描いていく予定です。

by マゴラカ(ワンタ)

2023年7月29日土曜日

「高龗神」


高龗神(タカオカミノカミ)


日本神話に登場する水の神。「日本書紀(にほんしょき)」の一書(あるふみ)に「伊弉諾尊(イザナギノミコト)、剣を抜きて軻遇突智(カグツチ)を斬りて、三段(みきだ)に為(な)す。其(そ)の一段(ひときだ)は是(これ)雷神(イカヅチノカミ)と為る。一段は是大山祇神(オホヤマツミノカミ)と為る。一段は是高龗と為る」とある。別の一書や「古事記(こじき)」に記されている「闇龗神(クラオカミノカミ)」の代わりに、軻遇突智を斬った際の剣の頭から滴る血によって誕生した神として、ここでは登場している。「龗」とは、いわゆる龍の古語であり、中国の霊獣。普段は水中や地中に潜むが、時折その咆哮で嵐を起こし、竜巻とともに天へ昇ると言われている。従って「高龗」とは、山の高みで水を掌握する龍神、「闇龗」とは暗い谷底で水を支配する龍神といった意味になる。両者は同一、または対の神であり、その総称を高龗神という。全国に約450社を数える貴船(きふね)神社や、その総本社である奈良県の丹生川上(にうかわかみ)神社などに祀られ、祈雨(きう)・止雨(しう)などの御利益がある。

出典:
日本書紀 一(岩波文庫)
週刊 日本の神社 50号(デアゴスティーニ)
週刊 日本の神社 83号(デアゴスティーニ)

作者ひとこと:
高龗神のデザインは、頭に一本角を生やした、馬頭龍身の神の姿に描きました。

2023年7月28日金曜日

「闇龗神」


闇龗神(クラオカミノカミ)<闇淤加美神>

日本神話に登場する水の神。「古事記(こじき)」には「次に御刀(みはかし)の手上(たかみ)に集まれる血、手俣(たなまた)より漏(く)き出(い)で成れる神の名は、闇淤加美神。次に闇御津羽神(クラミツハノカミ)」とあり、「日本書紀(にほんしょき)」の一書(あるふみ)には「復(また)剣の頭(たかみ)より垂(しただ)る血、激越(そそ)きて神と為(な)る。号(なづ)けて闇龗と曰(まう)す。次に闇山祇(クラヤマツミ)。次に闇罔象(クラミツハ)」とある。どちらも「伊邪那岐命(イザナキノミコト)(伊弉諾尊)」が息子である「迦具土神(カグツチノカミ)(軻遇突智)」を斬った際、刀の柄から滴った血から誕生したところは一致している。「豊後風土記(ぶんごふどき)」直入郡(なおりのこおり)の条に「球覃郷(くたみのさと)。此の村に泉有り。同じき(景行)天皇、行幸(いでま)しし時、奉膳(かしはで)の人、御飲(みもひ)に擬(あ)てむとして、泉の水を汲ましむるに、虵龗(おかみ)有り。淤箇美(おかみ)と謂(い)ふ。茲(ここ)に、天皇、勅(みことのり)して云(の)りたまひしく、「必ず臰(くさ)く有らむ。な汲み用(もち)ゐしめそ」とのりたまひき。斯(こ)れに因(よ)りて、名を臰泉(くさいづみ)と曰(い)ひ、因りて名を為す。今、球覃郷と謂ふは、訛(よこなま)れるなり」とある。オカミは蛇身で、下級の水の神であり、主として沼や淵や泉などに棲むと考えられていた。「古事記」においては、女神のクラミツハと対になる男神であるらしい。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
日本書紀 一(岩波文庫)
風土記 下 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
闇龗神のデザインは、湿った水辺にいる生き物である、蛇、ナメクジ、蛙が合体した様な姿の龍神に描きました。

2023年7月27日木曜日

「大戸惑女神」


大戸惑女神(オオトマトイメノカミ)(オホトマトヒメノカミ)


「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「大戸惑子神(オオトマトイコノカミ)」とともに生まれた四組目の神。名前の由来は未詳だが、「古事記伝」には「土より霧の発(たち)、その霧によりて闇く、闇きによりて惑ふ」とある。漢字とは別に、音で解釈しようとするのは当時一般的であり、漢字は借物で言の本質は音にこそありとするのが国学者の本領であり、事実それは正当なものだった。しかし、日本語の表記が漢字を以てしか行われなかった時代に、たとえ神名であっても、その漢字のすべてを借字と見なすわけにゆかぬのは、これまた当然な話であろう。さもなければ、「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」「伊邪那美命(イザナミノミコト)」というふうに、みな一字一音で表記されたはずである。もっとも、その程度のことなら「古事記伝」を著した本居宣長(もとおり のりなが)も承知済みで、ここの神名を上記のように字とは別に音ととして追求しながらも、いわば自己の信条を裏切るような形で、宣長は「狭土狭霧(さづちさぎり)の狭は、多く詞の上に加ふる辞、土も霧も闇(くら)も惑も、皆字の意にて(中略)、闇きによりて惑ふ云意」と密かに漏らしたのだろう。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
大戸惑女神のデザインは、顔に目も鼻も口もない女神の姿に描きました。

2023年7月26日水曜日

「大戸惑子神」


大戸惑子神(オオトマトイコノカミ)(オホトマトヒコノカミ)


「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「大戸惑女神(オオトマトイメノカミ)」とともに生まれた四組目の神。名前の由来は未詳だが、「古事記伝」には「土より霧の発(たち)、その霧によりて闇く、闇きによりて惑ふ」とある。漢字とは別に、音で解釈しようとするのは当時一般的であり、漢字は借物で言の本質は音にこそありとするのが国学者の本領であり、事実それは正当なものだった。しかし、日本語の表記が漢字を以てしか行われなかった時代に、たとえ神名であっても、その漢字のすべてを借字と見なすわけにゆかぬのは、これまた当然な話であろう。さもなければ、「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」「伊邪那美命(イザナミノミコト)」というふうに、みな一字一音で表記されたはずである。もっとも、その程度のことなら「古事記伝」を著した本居宣長(もとおり のりなが)も承知済みで、ここの神名を上記のように字とは別に音ととして追求しながらも、いわば自己の信条を裏切るような形で、宣長は「狭土狭霧(さづちさぎり)の狭は、多く詞の上に加ふる辞、土も霧も闇(くら)も惑も、皆字の意にて(中略)、闇きによりて惑ふ云意」と密かに漏らしたのだろう。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
大戸惑子神のデザインは、顔に目も鼻も口もない男神の姿に描きました。

2023年7月25日火曜日

「国之闇戸神」


国之闇戸神(クニノクラドノカミ)

「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「天之闇戸神(アメノクラドノカミ)」とともに生まれた三組目の神。「クラ」は谷のことを指し(「古事記伝」)、また朝鮮語のKol(谷)、満州語のHolo(谷)と同系統の語だともいわれる(「大系本書紀」)。しかし「鶯の鳴くクラタニ」(「万葉集」巻十七・3941)という句もあるので、クラと谷が、まったく同一というわけでもなさそうである。クラは、断崖絶壁をなしたところを指すという説(「古事記講義」)もあり、クラマやウバクラなどの地名も存在し、それらは谷、峡谷、絶壁、断崖、岩山というような意に用いられているという(山中「地名語源辞典」)。だが後に見るように、クラドのクラは闇(くら)い意をも持つわけで、さもなければド(処)という言い方は納得できないだろう。すべての神名の字を、単に借字とするか有意の正字と見るかは難しい問題で、個々の場合に応じて判断するほかない。その判定がなかなかつきにくいところに、記紀の神名の両義性があるというべきで、谷または崖なりと注するだけでは片手落ちになる。ここの文脈では、クラは同時に、霧が立ち込めて暗いことをも暗示しているからである。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
国之闇戸神のデザインは、山の谷に住む精霊、または神というイメージで描きました。

2023年7月24日月曜日

「天之闇戸神」


天之闇戸神(アメノクラドノカミ)

「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「国之闇戸神(クニノクラドノカミ)」とともに生まれた三組目の神。「クラ」は谷のことを指し(「古事記伝」)、また朝鮮語のKol(谷)、満州語のHolo(谷)と同系統の語だともいわれる(「大系本書紀」)。しかし「鶯の鳴くクラタニ」(「万葉集」巻十七・3941)という句もあるので、クラと谷が、まったく同一というわけでもなさそうである。クラは、断崖絶壁をなしたところを指すという説(「古事記講義」)もあり、クラマやウバクラなどの地名も存在し、それらは谷、峡谷、絶壁、断崖、岩山というような意に用いられているという(山中「地名語源辞典」)。だが後に見るように、クラドのクラは闇(くら)い意をも持つわけで、さもなければド(処)という言い方は納得できないだろう。すべての神名の字を、単に借字とするか有意の正字と見るかは難しい問題で、個々の場合に応じて判断するほかない。その判定がなかなかつきにくいところに、記紀の神名の両義性があるというべきで、谷または崖なりと注するだけでは片手落ちになる。ここの文脈では、クラは同時に、霧が立ち込めて暗いことをも暗示しているからである。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
天之闇戸神のデザインは、山の切り立った崖や谷を自在に行き来する、カモシカの様な蹄を足に持った、半人半獣の姿の神というイメージで描きました。

2023年7月23日日曜日

「国之狭霧神」


国之狭霧神(クニノサギリノカミ)


「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「天之狭霧神(アメノサギリノカミ)」とともに生まれた二組目の神。文字どおり霧の神である。ここに「天之……国之……」と対になった三組の神名が記されているが、これは調子を整えるための修辞であって、特に深い意味はない。天狭霧神という名は「大国主神(オオクニヌシノカミ)」の系譜にも出てくるが、一種つなぎの役をしているだけである。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
国之狭霧神のデザインは、首元に雲か霧の様なものを纏った神の姿に描きました。イラストの国之狭霧神の身体についている無数の「⦿」の様なものは、天気記号の「霧」をモチーフにしてみたものです。

2023年7月22日土曜日

「天之狭霧神」


天之狭霧神(アメノサギリノカミ)


「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「国之狭霧神(クニノサギリノカミ)」とともに生まれた二組目の神。文字どおり霧の神である。ここに「天之……国之……」と対になった三組の神名が記されているが、これは調子を整えるための修辞であって、特に深い意味はない。天狭霧神という名は「大国主神(オオクニヌシノカミ)」の系譜にも出てくるが、一種つなぎの役をしているだけである。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
天之狭霧神のデザインは、二本の蛇の様な尾を持った神の姿に描きました。イラストの天之狭霧神の身体についている無数の「⦿」の様なものは、天気記号の「霧」をモチーフにしてみたものです。

2023年7月21日金曜日

「国之水分神」


国之水分神(クニノミクマリノカミ)


「古事記(こじき)」において、「速秋津日子神(ハヤアキツヒコノカミ)」と「速秋津比売神(ハヤアキツヒメノカミ)」の二柱の間から、「天之水分神(アメノミクマリノカミ)」とともに生まれた三組目の神。水田の灌漑(かんがい)を司る神。「ミクマリ」は「水配り」で、農の水を掌る神をいい、多く分水嶺や山の口に祀られていた。「神名帳」にも、いくつかの水分神が登録されているが、特に「祈年祭祝詞」等に記された「吉野」「宇陀」「都祁」「葛城」にある水分社が有名である。「天」「国」は、特別な意味を有する場合もあるが、この場合は神名を対にするため添えた接頭語であろう。速秋津日子・速秋津比売の生む神々が、海のことからミクマリのことに及んだのは、どちらも水に関するからで、「海幸彦(ウミサチヒコ)」「山幸彦(ヤマサチヒコ)」の物語の段に、ワタツミの神の言として「吾水を掌(し)れる故に」とあることからも、両者が同じ範疇に属していたことがわかる。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
東洋神名事典(新紀元社)
新版 古事記 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
国之水分神のデザインは、「水分神」と描かれた石に宿っている、蛇形の神というイメージで描きました。

2023年7月20日木曜日

「天之水分神」


天之水分神(アメノミクマリノカミ)


「古事記(こじき)」において、「速秋津日子神(ハヤアキツヒコノカミ)」と「速秋津比売神(ハヤアキツヒメノカミ)」の二柱の間から、「国之水分神(クニノミクマリノカミ)」とともに生まれた三組目の神。水田の灌漑(かんがい)を司る神。「ミクマリ」は「水配り」で、農の水を掌る神をいい、多く分水嶺や山の口に祀られていた。「神名帳」にも、いくつかの水分神が登録されているが、特に「祈年祭祝詞」等に記された「吉野」「宇陀」「都祁」「葛城」にある水分社が有名である。「天」「国」は、特別な意味を有する場合もあるが、この場合は神名を対にするため添えた接頭語であろう。速秋津日子・速秋津比売の生む神々が、海のことからミクマリのことに及んだのは、どちらも水に関するからで、「海幸彦(ウミサチヒコ)」「山幸彦(ヤマサチヒコ)」の物語の段に、ワタツミの神の言として「吾水を掌(し)れる故に」とあることからも、両者が同じ範疇に属していたことがわかる。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
東洋神名事典(新紀元社)
新版 古事記 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
天之水分神のデザインは、「水分神」と書かれた石に宿っている、鳥頭の龍の姿をした神というイメージで描きました。

2023年7月19日水曜日

「風木津別之忍男神」


風木津別之忍男神(カザモツワケノオシオノカミ)(カザモツワケノオシヲノカミ、カザゲツワケノオシヲノカミ)

「古事記(こじき)」において、国土を生み終えた「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」と「伊邪那美命(イザナミノミコト)」が、「大屋毘古神(オオヤビコノカミ)」の次に生んだ神。「石土毘古神(イワツチビコノカミ)」から始まる、住居に関する六神を総称した「家宅六神(かたくろくしん)」の一柱に数えられる。家宅六神の六番目。家宅六神は、家屋の成立までを順序だてて系列的に語るものと解され、家の材料や建築作業を神格化した家の守り神である。風木津別之忍男神の「木津」の意味は不明だが、字面のとおりだすれば、風に縁のある神名であると解釈される。風害を防ぐ家の神。「木」を仮名に用いた例は「万葉集(まんようしゅう)」にある「木丘開道乎(もくさくみちを)」の一点のみである。本居宣長(もとおり のりなが)の「古事記伝(こじきでん)」では、この訓注には字の誤りがあるとして、「カザゲツワケ」と訓(よ)んでいる。西郷信綱(さいごう のぶつな)によれば、「今はしかし、「得」「俗」などをト、ゾの仮名に用いているのからして、仮名の木の音はモであろうから、意味はわからぬが、カザモツという訓みに従っておく」としている。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
日本の神々 完全ビジュアルガイド(KANZEN)
図解 日本神話(新紀元社)
東洋神名事典(新紀元社)
新版 古事記 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
風木津別之忍男神のデザインは、手に矛を持ち、鎧に身を包んだ男神の姿に描きました。イラストの風木津別之忍男神は、家の屋根を吹き飛ばそうとする悪い風の神を、手に持った矛で追い払う、家を護る神という感じで描きました。

2023年7月18日火曜日

「天之吹男神」


天之吹男神(アメノフキオノカミ)(アメノフキヲノカミ)

「古事記(こじき)」において、国土を生み終えた「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」と「伊邪那美命(イザナミノミコト)」が、「大戸日別神(オオトヒワケノカミ)」の次に生んだ神。「石土毘古神(イワツチビコノカミ)」から始まる、住居に関する六神を総称した「家宅六神(かたくろくしん)」の一柱に数えられる。家宅六神の四番目。家宅六神は、家屋の成立までを順序だてて系列的に語るものと解され、家の材料や建築作業を神格化した家の守り神である。天之吹男神の名義は不明だが、おそらく屋根を葺く意か、それとも風の神の一種だろうか。「神名帳」に天乃夫支売(あめのふきめ)神社(山城国)がある。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
日本の神々 完全ビジュアルガイド(KANZEN)
図解 日本神話(新紀元社)
東洋神名事典(新紀元社)
新版 古事記 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
天之吹男神のデザインは、天之吹男神が屋根を葺く事に関連ある神とされる説もある事から、イラストでは、頭が草で葺かれた屋根の様になっている神の姿に描きました。手に持っているのは、屋根に茅を葺く時に使う針です。

2023年7月17日月曜日

「大戸日別神」


大戸日別神(オオトヒワケノカミ)(オホトヒワケノカミ)

「古事記(こじき)」において、国土を生み終えた「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」と「伊邪那美命(イザナミノミコト)」が、「石巣比売神(いわすひめのかみ)」の次に生んだ神。「石土毘古神(イワツチビコノカミ)」から始まる、住居に関する六神を総称した「家宅六神(かたくろくしん)」の一柱に数えられる。家宅六神の三番目。家宅六神は、家屋の成立までを順序だてて系列的に語るものと解され、家の材料や建築作業を神格化した家の守り神である。戸とあるので、家の出入り口の守り神だろうか。「戸」を「処」と見れば、居所の神かもしれない。大戸日別神の名義について、大した意味はない、と解説している本もある。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
日本の神々 完全ビジュアルガイド(KANZEN)
図解 日本神話(新紀元社)
東洋神名事典(新紀元社)
新版 古事記 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
大戸日別神のデザインは、手に剣を持ち、大きく見開かれた目で睨みつけ、家の外から入ってこようとする魔を家の中に入らせない、家の守護神というイメージで描きました。

2023年7月16日日曜日

「大事忍男神」


大事忍男神(オオコトオシオノカミ)(オホコトオシヲノカミ)

「古事記(こじき)」において、国土を生み終えた「伊邪那岐命(イザナキノミコト)」「伊邪那美命(イザナミノミコト)」が、最初に生んだ神。その名義は明らかではなく、国生みという大事を成し終えたので、この名があるとも、以下生まれてくる諸々の神々の先触れとして、枕詞風におかれた名ではないかとも思われる。「忍男」は称え名である。

出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
大事忍男神のデザインは、狩衣を身に纏い、顔を紙製の面で隠し、頭に冠を被った神の姿に描きました。

2023年7月15日土曜日

「ちんちんちん袴」


ちんちんちん袴(チンチンチンバカマ)

小楊枝を無駄づかいしてはぽいぽい捨てていた長者のお嬢さんが、夜に便所に行こうとすると、なんだかわからないものが「ちんちんちんばかま、夜も更けそーろー、きしなる神様、やちっちょこやちっちょこやっちょこな」と、唄い踊っていた。怖いので家の者に話しても、誰も信じないし、乳母と便所に行ってもすがたをみせないので、どうしようもなかった。ある晩、勇気を出してお嬢さんがこのよくわからないものにひとりで近寄り、その体に火をつけてみた。翌朝になって調べてみると、小楊枝が焦げて落ちていたという(「川越地方昔話集」)。安房国(千葉県)で語られていたという昔話にみられるもので、楊枝の化けたもの。

出典:
和漢百魅缶
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
ちんちんちん袴のデザインは、袴を履いた楊枝の妖怪に描きました。

2023年7月14日金曜日

「棚っ小僧」


棚っ小僧(タナッコゾウ)

家の棚(屋根裏)にいるという妖怪。神奈川県津久井町串川(現・相模原市)に伝わる。神奈川県相模原市緑区では、囲炉裏の火がよく燃えず、煙が目にしみたら、棚小僧(タナッゴゾウ)のところへ行けと唱えた。

出典:
怪異・妖怪伝承データベース
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
棚っ小僧のデザインは、大きな眼をもった子供姿の妖怪に描きました。

2023年7月13日木曜日

「茶釜転がし」


茶釜転がし(チャガマコロガシ)

夜道を歩いていると、ごろんごろんと茶釜が転がって来るというもの。ひとの足に当たって来たりするという。群馬県新里村(現・桐生市)などに伝わる。灯りを点けてみても、茶釜そのものは目に見えなかった(「勢多郡誌」)といわれることから考えると転がって来る音と、足に当たる感覚が主となる妖怪だったようだ。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
茶釜転がしのデザインは、茶釜の姿の妖怪に描きました。

2023年7月12日水曜日

「玉転がし」


玉転がし(タマコロガシ)

群馬県水上町青木沢(現・みなかみ町)に伝わる。木の葉の上で玉を転がしているような音をさせてくるという。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
玉転がしのデザインは、真ん丸の玉の様な体と、木の葉の様な手足を持った妖怪の姿に描きました。

2023年7月11日火曜日

「水かけ」


水かけ(ミズカケ)

平尾魯仙「谷の響」に記される怪虫。谷川の沢によくいる虫で、髪の毛のような形で長さ六から九寸ほど、色は薄赤く、あまり動かない。鱈の体内にも同様の虫がいて、沢のものより体は短く赤みが強い。ともに猛毒があり、用心せねばならない。紺屋町の新割町(現・青森県弘前市)の隠居が井戸水を飲んだとき、口に髪が入ったと思い吐き出した。髪はよく見るとゆるやかにぬめり動いており、これが水かけかと恐れをなした。このような虫がいるので、水は濾してから用いるべきだという。

出典:
日本怪異妖怪事典 東北(笠間書院)

作者ひとこと:
水かけのデザインは、細長い虫の姿に描きました。

2023年7月10日月曜日

「宇比地邇神」


宇比地邇神(ウイヂニノカミ)<埿土煑尊(ウイヂニノミコト)、埿土根尊(ウイヂネノミコト)>


「古事記(こじき)」において、神世七代(かみよななよ)の三世代目の神として登場するのが、「宇比地邇神」と「妹・須比智邇神(スイヂニノカミ)」。「日本書紀(にほんしょき)」の本文や「先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)」においては、「埿土煑尊」と「沙土煑尊(スイヂニノミコト)」と表記される、四世代目の神である。また、別名として「埿土根尊」「沙土根尊(スイヂネノミコト)」も併記されている。日本書紀三段目の一書(あるふみ)においても、二柱で一対となる最初の神だ。ここから独神(ひとりがみ)ではなく、性別が誕生したことになる。ウヒヂニ・スヒヂニの「ヒヂ」「ニ」は、どちらも泥の意味を持つ。「ウ」と「ス」の差は不明だが、「植(う)える(埋めて固定する)」「据(す)える(動かないよう置く)」など、対立した形を持つ語が存在しているから、これも基本的な意味が同じで対偶形に仕立てたものだろう。ウヒヂネ・スヒヂネは、ウヒヂニ・スヒヂニの音転であり、意味は同じと思われる。

出典:
神さま別に読む「古事記」「日本書紀」

作者ひとこと:
宇比地邇神のデザインは、身体が泥や砂で出来た、巨大な男性神の姿に描きました。

2023年7月9日日曜日

「神産巣日神」


神産巣日神(カミムスヒノカミ)<神皇産霊尊(カミムスヒノミコト)>


「古事記(こじき)」において、「高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)」に次いで誕生した三番目の神。「日本書紀(にほんしょき)」では、神皇産霊尊と表記している。また、造化三神(ぞうかさんしん)や別天(ことあま)つ神の一柱とされている。配偶神のいない独神(ひとりがみ)であり性別もないが、「高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)」を男性的な神格であるとするのに対して、神産巣日神は女性的な神格であると考える説もある。また、同じ性格を持つ二柱だが、高御産巣日神が高天原(たかまのはら。天)を中心として神話に関わるのとは対照的に、神産巣日神は出雲国(いずものくに。地)にまつわる神話に多く登場する。殺された「大穴牟遅神(オオナムヂノカミ)」を蘇生されるために「𧏛貝比売(キサガイヒメ)」と「蛤貝比売(ウムギヒメ)」を派遣したり、のちに国づくりを始めたら今度は「少名毘古那神(スクナビコナノカミ)」を派遣したり、「大気津比売神(オオゲツヒメノカミ)」の死体から生えた五穀を取ったりと、記紀神話では裏からサポートする役回りに徹している。出雲国風土記にしか登場しない神々の祖神として、出雲国風土記の至るところ(「生馬郷(いくまのさと)」や「楯縫(たてぬい)」など)にも名前が散見される。

出典:
神さま別に読む「古事記」「日本書紀」
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
古事記注釈 第二巻(ちくま学芸文庫)
古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)

作者ひとこと:
神産巣日神のデザインは、神産巣日神が生産や生成を表す神でもあるので、そこからイメージして巨大な妊婦の様な姿の女神や、地母神をイメージしたイラストにしてみました。

2023年7月8日土曜日

「玉のようなもの」


玉のようなもの(タマノヨウナモノ)

夜に山道を歩いていると、崖ぎわの道などで玉のようなものが足にまとわりついたりして来たという。群馬県糸之瀬村(現・昭和村)に伝わる。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
玉のようなもののデザインは、奇妙な模様のある玉の様な姿の怪異に描きました。

2023年7月7日金曜日

「一つ目玉」


一つ目玉(ヒトツメダマ)

事八日(2月8日や12月8日)の日に家々にやって来るとされる一つ目の妖怪。子供たちは「一つ目玉が来るから早く寝ろ」などと大人から言われた。茨城県下妻市などで呼ばれている。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
一つ目玉のデザインは、一つ目で、体中毛むくじゃらの姿の妖怪に描きました。

2023年7月6日木曜日

「隠し坊主」


隠し坊主(カクシボウズ)

日暮れ過ぎまで遊んでいる子供を隠してしまうと語られる存在で、子供たちは暗くなってくると「カクシボウズが来るから、帰ろう」と言っていたという。群馬県吾妻町本宿(現在の東吾妻町)などに伝わる。群馬県多野郡上野村では、隠し坊主は、子供を脅すために使われる妖怪である。「夜になると隠し坊主がくる」と脅すという。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)
妖怪邸・妖堂 日記帳

作者ひとこと:
隠し坊主のデザインは、牙の沢山生えた大きな口を持つ、僧侶の様な姿をした妖怪に描きました。

2023年7月5日水曜日

「六首沢」


六首沢(ロククビサワ)


神奈川県津久井郡内郷村(現在の相模原市緑区)に伝わる怪異。「六首沢」と呼ばれる場所に大きなケヤキの木があり、そこを通ると六つの首が下がってくるといわれている。

出典:
妖怪邸・妖堂 日記帳

作者ひとこと:
六首沢のデザインは、六つの男女の生首の姿の怪異に描きました。

2023年7月4日火曜日

「ちゃんころりん石」


ちゃんころりん石(チャンコロリンイシ)


作者ひとこと:
ちゃんころりん石のデザインは、丸い石の怪異の姿に描きました。

2023年7月3日月曜日

「隠しん坊」


隠しん坊(カクシンボ)


作者ひとこと:
隠しん坊のデザインは、縦に長い異様な頭を持った、僧侶の様な姿の妖怪に描きました。

2023年7月2日日曜日

「一口拍子木」


一口拍子木(ヒトクチヒョウシギ)


作者ひとこと:
一口拍子木のデザインは、神の顔をイメージした面から拍子木が伸びている姿に描きました。

2023年7月1日土曜日

「夜刀神」


夜刀神(ヤトノカミ)

「常陸国風土記(ひたちのくにふどき)」行方郡(なめかたぐん)の条に記されている神。谷のことを古語でヤトといい、葦原のような湿地帯のことをヤチという。夜刀神はこの音からついた名前で、湿地帯や谷、沢に棲む神であったようだ。茨城県行方郡玉造町(現・行方市)には、この神を祀る夜刀神社がある。「常陸国風土記」によると、継体(けいたい。第26代)天皇の御代(6世紀前半)に、箭括(やはず)の氏の麻多智(またち)という人がいた。郡役所の西にあたる谷の葦原を、開墾して新田を造成した。このとき、夜刀(やと)の神が群をなし引き連れて、一匹のこらずやって来た。あちこちとなく妨害をし、田の耕作をさせなかった。土地の人の言うには、蛇のことを夜刀の神という。その形は蛇の身で頭に角がある。一族を蛇の災難より逃れさせようとするとき、振り返って蛇を見る人がいると一家を破滅させ、子孫が絶える。おしなべて、郡役所の傍の野原に甚だたくさん棲んでいる。そこで麻多智はたいそう怒りの心情が昂り、甲鎧を身につけ、自ら仗(ほこ)を手にして、打ち殺し追い払った。山の登り口まで追ってきたところで、境界の標識としての杖を堀に立て、夜刀の神に宣言して言った、「ここから上は神の土地とすることを許そう。ここから下は人が田を耕作する。今から後、自分が神を祀る司祭者となって、永久に敬い祭ってやろう。どうか祟らないでくれ、恨まないでくれ」といって、社を定めて初めて夜刀の神を祭ったという。また神田十町あまりを開墾して、麻多智の子孫がつぎつぎと受け継いで祭を行い、現在まで絶えることがない。その後、孝徳(こうとく。第36代)天皇の御代におよんで、壬生連磨(みぶのむらじまろ)が初めてその谷に立入禁止の標示をして、池の堤を築かせた。そのとき、夜刀の神が池の辺の椎の樹に上り集まって、いつまでも退去しない。そこで麿は大声をあげて叫び、「この池の堤を修築させたのは、要するに民を生活させるためである。どこのなんという名の神が、天皇の威徳に不服だというのか」といった。工事に働く民に命じて言うには、「目に見えるいろいろな物は、魚類・虫類となく気兼ねしたり恐れたりすることなく、すべて打ち殺せ」と言い終ると同時に、蛇神は逃げ隠れたのである。

出典:
幻想世界の住人たちⅣ 日本編(新紀元社)
風土記 上 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)

作者ひとこと:
夜刀神のデザインは、頭に大きな鹿の枝角の様な角を生やした、巨大な蛇の姿の神に描きました。