自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年6月28日水曜日

「木霊」


木霊(コダマ)


吉田兼好(よしだ けんこう)の「徒然草(つれづれぐさ)」第二三五段には「あるじなき所には、道行人(みちゆきひと)みだりに立ち入り、狐・梟(ふくろふ)やうの物も、人気に塞(せ)かれねば、所得(ところえ)顔に入り棲み、木霊などいふけしからぬ形もあらはるるものなり」とある。人のいないところには、木霊などの化け物が姿を現し、わがもの顔で棲みつくのだという。また、紫式部(むらさきしきぶ)の「源氏物語(げんじものがたり)」の「手習(てならい)」には「何のさる人をか、この院の内(うち)に捨て侍らむ。たとひまことに人なりとも、狐、木霊やうの物の、あざむきて取りもて来たるにこそ侍らめと、不便(ふびん)にも侍りけるかな。穢(けが)らひあるべき所にこそ侍(は)べめれ」とある。若い女性を救出した際、その場にいた僧が発した言葉。亡くなって葬られた人が息を吹き返したのだろうかと、貴族のひとりが、ここに息をした美しい女性がいることを不審に思い、推測を述べたところ、僧が「なぜ亡くなった人をこの院のなかに葬るのでしょう(空き家ではあるが、皇室の所領ゆえ、死体の捨て場所に選ぶはずがない)、たとえ本当に生きた人間だとしても、狐か木霊のようなものが、騙して連れてきたのでございましょう。不都合でもございますな。(女性が結局ここで死ぬという予測から)穢れのある場所だということになるようですが」と返した。また、「源氏物語」の最終巻とされる「夢浮橋(ゆめのうきはし)」にも「事の心おしはかり思うたまふるに、天狗、木霊などやうのものの、あざむきゐてたてまつりたりけるにやとなむうけ給はりし」とある。

出典:
新版 徒然草 現代語訳付き(角川ソフィア文庫)
源氏物語 九(岩波文庫)

作者ひとこと:
木霊のデザインは、頭髪の様に頭から木の若芽が無数に生えている精霊の姿に描きました。体は人間でいうところの子供くらいの体型をイメージしています。

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