シャコガイタバハナアルキ
ハラルト・シュテュンプケが著したとされる「鼻行類(びこうるい)」の中で紹介されている、奇妙な構造を持つ動物の一種。鼻行類の原産地は、日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人のエイナール・ペテルスン=シェムトクヴィストが発見した、南海のハイアイアイ群島である。クダハナアルキ科のタバハナアルキ属に含まれる2種のうちの一つ。シャコガイタバハナアルキは、群島全域の潮間帯に分布する。幼獣と雄は、干潟の波の静かな場所にたまった泥のなかや、サンゴ塊のすきまにある泥のなかに棲んでいる。他の鼻行類、とくに他の管鼻類にくらべても恒温性の発達がなおきわめて不完全である。この種が酸化的代謝を相当に阻害されてもかなり長時間耐えることができるのは、このことと関連している。実際この小動物は、1日に15分から30分くらいしか波をかぶらない潮間帯上部に棲んでいる。けれども彼らは3時間にわたって大気を遮断されても耐えられる。そのようなときには一種の麻痺状態に陥って、(体にまったく毛がないので)体全体が青白くなり、ふたたび空気を吸うと、ただちにもとの黄色味を帯びた肉色にもどる。性的成熟に達したシャコガイタバハナアルキの雌たちは、満潮時にシャコガイの開いた貝にとりつき、すばやく外套膜と貝殻のあいだにもぐりこむ。まもなくそこには、こぶし大から子どもの頭大の外套瘤ができるが、真珠層を形成するのはその一部だけである。干潮時にこの瘤はシャコガイによって空気を満たされ、鰓室内にヘルニア蓑のように隆起する。寄生者はその口吻で寄主の体液と生殖物質の一部を摂取する。交尾は漂流中の雄によって夜間の満潮時におこなわれる。ごく小さな子が産みおとされるのも、やはり夜間の満潮時でろうと思われる。
出典:
鼻行類(平凡社)
作者ひとこと:
シャコガイタバハナアルキのデザインは、長く伸びた口と鼻を持った動物の姿に描きました。
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