自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2020年11月24日火曜日

「玃猿」


玃猿(カクエン)<玃(カク)、猳国(カコク)、馬化(バカ)>

中国に伝わる怪物または幻獣の一種。この玃猿は猿に類するものであり、中国明の医師・本草学者である「李時珍(リ ジチン)」が著した本草書「本草綱目」には、この玃猿は、猴(コウ、猿の事)より大きいもので、その体色は青黒く、人間の様に歩き、よく人間や物を攫う。この玃猿は雄ばかりで雌がいない為、人間の女性を捕らえて子供を産ませる、とある。また本草綱目には、この玃猿が老いた猿であるという記述もあり、西晋・東晋時代の道教研究家・著述家の「葛洪(カツ コウ)」の著書「抱朴子」によれば、獼猴(ミコウ、アカゲザルの事)が800年生きると、「猨」となり、それから更に500年を生きると玃猿になるとある。4世紀に東晋の政治家・文人の干宝(カンポウ)が著した怪異説話集「捜神記」や、三国時代魏から西晋にかけての政治家・文人の張華(チョウ カ)の著作「博物志」には玃猿は「猳国(カコク)」、「馬化(バカ)」の名で記述がある。それによると、玃猿は、蜀(現在の四川省・湖北省一帯、及び雲南省の一部)の西南の山中に棲むもので、その姿は猿に似ており、身長は7尺(約1.6m)程で、人間の様に歩く。この玃猿は山中の林の中に潜み、人間が通りかかると、男女の匂いを嗅ぎ分けて女性のみを攫い、その様にして攫った女性は自分の妻として子供を産ませる。子供を産まない女性は山を降りる事を許されず、その様な女性達は、やがて10年も経つと姿形や心までが、玃猿と同化し、人里に帰りたいという気持ちも失せてしまう。子供を産んだ女性は、玃猿によって子供と共に人里へと帰されるが、里へと帰された後に、その子供を育てなかった女性は死んでしまう為、女性達はそれを恐れて玃猿との間の子供を育てる。こうして、玃猿と人間の女性との間に産まれた子供は、姿は人間に近く、育つと常人と全く変わらなくなる。本来なら姓は父の姓を名乗るところだが、父である玃猿の姓が分からない為、仮の姓として皆が「楊」を名乗る。蜀の西南地方に多い「楊」の姓の者は皆、玃猿の子孫なのだ、とある。また、中国南宋の政治家・儒学者である洪邁(コウ マイ)が編纂した̪志怪小説集「夷堅志」には「渡頭の妖」と題し、以下のような話がある。ある谷川の岸に夜になると男が現れ、川を渡ろうとする者を背負って向こう岸に渡していた。ある人が、その男に理由を尋ねても、男は「これは自分の発願であり理由はない」と、殊勝に返事をしていた。ある時、黄敦立という胆勇な男が、その男を怪しみ、同じように谷川を渡してもらった。その三日後、黄敦立はお礼に、今度は自分がその男を背負って谷川を渡そう、と言い、拒む男を無理に抱えて谷川を渡り、渡りきって向こう岸に着くと、抱えていた男を、谷川の岸にある大石に投げつけた。大石に投げつけられた男は悲鳴を上げたので、黄敦立が、その男を松明の明かりで照らすと、その男の姿は玃猿に変わっていた。黄敦立は、その玃猿を殺して焼くと、この臭気は数里先にまで届いたという。

出典:
Wikipedia
愛蔵版 妖怪画談(岩波書店)

作者ひとこと:
玃猿のデザインは、狒々の様な、大きな猿の様な姿の怪物に描きました。女性を孕ませるイメージから、西洋のインキュバスや悪魔のイメージも合体させ、脚を山羊の蹄にしてみました。

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