自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年2月17日金曜日

「アヌビス」


アヌビス

エジプト神話に登場する神。アヌビスは、黒犬の頭に人間の身体を持った姿をしており、死者、特に墓地を守る冥界の神である。このアヌビスは元々、冥界の王「オシリス」などよりも古くから信仰されていた神である。アヌビスは墓を守り、死者を冥界へと導く役割を担う神である。餌を求めて墓場をうろつく野犬の姿が死者を守っている様に見えた事から、墓地の番人として信仰されるようになったとされる。アヌビスという名前は、ギリシアやローマ人によってつけられたもので、エジプトでは「若い犬」を意味する「インプ(インプウ)」という名で呼ばれた。一方、アヌビスは従来ジャッカルだとも言われていた。というのも、その姿は犬科の特徴を表しているが、その尻尾は幅が広くて太い棍棒の様な形をしているからだ。そのため、黒犬とジャッカルをかけあわせた動物である可能性もある。アヌビスの様なジャッカルの姿の神はおそらくエジプトの王朝時代以前から複数存在し、信仰を集めた。アヌビスは、「山野に居る者」「聖なる地(=墓地)の主」「ミイラ作りに居合わせる者」という別名があるように、遺体の処置に関わる儀礼を司り、都市郊外の埋葬地の守護神として信仰を集めた。アヌビスの、このような職能は、砂漠地帯にある墓地を徘徊するジャッカルの習性に由来すると考えられる。アヌビスは、猫の女神「バステト」の子ともされるが、後代になってオシリスと、その妹「ネフティス」の子とされるようになった。ところが、ネフティスは、砂漠の神「セト」の妻。オシリスとネフティスの子であるアヌビスは、いわば不義の子とされるようになった。不義の発覚を恐れたネフティスによって捨てられたアヌビスは、オシリスの妻「イシス」に拾われ、義母であるイシスを補佐していく。その神話が、アヌビスによるミイラ作りである。砂漠の神セトによってバラバラにされたオシリスの身体をつなぎ合わせてミイラとして保存し、オシリスの復活を助けたのだ。これは神話の中ではじめて行われたミイラ作りで、そこからアヌビスは、ミイラ作りの職人の守護神とされるようになった。古代エジプトで、「神秘の長老」と呼ばれる神官の長は、死体を整え墓へ運ぶ儀式の際、犬の頭の形をした仮面をかぶりアヌビスの役を演じたという。また、墓地などで行われた儀礼においては、アヌビスの覆面をした神官が死者の生命力を回復させる「口開け」の儀礼を行った。アヌビスが持つ、もう一つの重要な役割は、冥界で死者の魂を計量する事である アヌビスは死者を、冥界の王オシリスの裁きの間へと導き、死者の心臓と法の女神「マアト」の羽を天秤にかける。重さがつり合わなければ罪があるとされ、死者の心臓、つまり魂は、幻獣「アメミト」に食べられてしまうのだ。死者を導く役割から、アヌビスはギリシア、ローマ時代には冥府に死者を導く「ヘルメス」と同一視され、生と死に関する秘儀を司る知識の神ともされた。またアヌビスは、イシス信仰の広がりとともにイシスの随伴者として信仰を集めた。アヌビスの主な信仰中心地は上エジプト第十七州キュノポリス(犬の街)やメンフィス周辺(ヘリオポリス、トゥーラ、サッカラ)などで、アヌビオンに代表される大規模なイヌ科動物の集団墓地が知られている。

出典:
ゼロからわかるエジプト神話(イースト・プレス)
神の文化史事典(白水社)

作者ひとこと:
アヌビスのデザインは、天秤の付いた杖を持った、黒犬、またはジャッカルの頭と人間の身体という姿の神に描きました。

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