国之闇戸神(クニノクラドノカミ)
「古事記(こじき)」において、「大山津見神(オオヤマツミノカミ)」と「野椎神(ノヅチノカミ)」の間に、「天之闇戸神(アメノクラドノカミ)」とともに生まれた三組目の神。「クラ」は谷のことを指し(「古事記伝」)、また朝鮮語のKol(谷)、満州語のHolo(谷)と同系統の語だともいわれる(「大系本書紀」)。しかし「鶯の鳴くクラタニ」(「万葉集」巻十七・3941)という句もあるので、クラと谷が、まったく同一というわけでもなさそうである。クラは、断崖絶壁をなしたところを指すという説(「古事記講義」)もあり、クラマやウバクラなどの地名も存在し、それらは谷、峡谷、絶壁、断崖、岩山というような意に用いられているという(山中「地名語源辞典」)。だが後に見るように、クラドのクラは闇(くら)い意をも持つわけで、さもなければド(処)という言い方は納得できないだろう。すべての神名の字を、単に借字とするか有意の正字と見るかは難しい問題で、個々の場合に応じて判断するほかない。その判定がなかなかつきにくいところに、記紀の神名の両義性があるというべきで、谷または崖なりと注するだけでは片手落ちになる。ここの文脈では、クラは同時に、霧が立ち込めて暗いことをも暗示しているからである。
出典:
古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)
作者ひとこと:
国之闇戸神のデザインは、山の谷に住む精霊、または神というイメージで描きました。
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