自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年4月20日木曜日

「アプスー」


アプスー

メソポタミア神話に登場する神の内の一柱。アプスーは、淡水の神である。シュメール神話やアッカド神話におけるアプスーは神ではなく、知恵の神「エンキ」の領域である土地の名だった。アプスーは、英語で深海、混沌、奈落を意味する「abyss(アビュス)」の語源にもなっている。かつてエンキは、地下にある深淵の都に暮らしていたが、そこには淡水の海があったという。古代メソポタミア人は、地上にある川や湖などは、その地底の水が漏れ出したものと信じており、聖なる水が湧き出る土地を神格化した。こういった土地は「聖なる場所」「文明を司る場所」としても知られており、エンキだけでなく、エンキの妻「ダムキナ」や子の「マルドゥク」、母「ナンム」なども暮らしていたという。この様に、元々は名前だけの神であったアプスーだったが、時代が下りバビロニアの創世神話「エヌマ・エリシュ」では、アプスーは神々の創造を担う存在となる。世界も神もまだ何もない時代、アプスーと、その妻である海水の女神「ティアマト」が現れ、エンキをはじめとした様々な神々を生み出した。しかし若い神々が増えると世界は途端に騒々しくなり、その騒々しさに耐えきれなくなったアプスーは妻のティアマトに「彼らを殺したい」と相談する。多くの神々の母でもあるティアマトは夫をたしなめるが、アプスーは懲りず新しい神々を殺そうと企んだ。しかしそれに気付いた神がいた。アプスーの息子のエンキである。エンキは先んじてアプスーを眠らせると、衣や冠を奪ってからアプスーを殺し、あろうことか父であるアプスーの遺体の上に住居をつくって、そこで妻と交わり、太陽の神マルドゥクを生み出したのだ。ティアマトはこれに怒り、孫にあたるマルドゥクと血で血を洗う戦争を起こす事となる。新しい神が古い神を殺すのは神話における通過儀礼の様なものだが、アプスーは特に抵抗らしい抵抗を見せずに殺されてしまう。むしろその仇討ちに動いた妻のティアマトの方が目立つ神話となっているのがおもしろい。

出典:
ゼロからわかるメソポタミア神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
アプスーのデザインは、頭に冠を被り、長い髭を生やした神の姿に描きました。

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