自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2021年3月31日水曜日

「産泰様」


産泰様(サンタイサマ)

日本で信仰されている神。昔は出産の時に命を落とす事も多かった。医療が発達した今日でも不安を感じ、神仏に祈願して安産を願う女性は多い。産泰様は、産婦と赤ん坊の無事安泰を保障する神様である。古来、日本ではお産を不浄として、その汚れを忌む習俗があり、そうした時の産婦は神、または神のいる聖域に近づく事が許されなかった。ところが産泰様だけは、出産時の女性の側にいる事が出来るとされたのである。そういう意味では、出産の時に立ち会うとされる「便所神(ベンジョガミ)」や「箒神(ホウキガミ)」といった家の神と同じ様な性格がうかがえる。一方、子授け・安産の祈願の対象となる産神(ウブガミ)という意味では、基本的に「子安神(コヤスガミ)」と同じ性格を持つと考えられている。ただし、この神様の場合は、もっぱら出産時の母子の安泰という点に祈願の重きがおかれているところに、本来的な特色がある。産泰様のお使いが犬であるという信仰が、群馬県や栃木県の一部にある。犬はしばしば出産や育児に関わる呪いや俗信に登場するが、これは犬が何匹もの子犬を軽く生むからとも、或いは犬に邪霊除けの霊力があるからとも言われる。こうした信仰は、かなりの広がりが見られる様で、例えば茨城県、千葉県、栃木県、福島県、宮城県などの地方では、子安神の信仰に関連した女性達による安産祈願の行事に、犬供養と称して村堺や川岸に犬卒塔婆(いぬそとうば)を立てるという習俗がある。産泰様の神使としての犬も、こうした習俗に見られる様な犬の霊力に対する信仰と、基本的に共通していると見ていいだろう。産泰様の信仰は、関東北部の群馬県や埼玉県北部を中心として広がっている。その総本社と言われているのが群馬県前橋市の産泰神社である。元は三胎神社と呼ばれていたが、江戸時代の頃、前橋城主だった「酒井雅楽守(さかい うたのかみ)」が非常に熱心に産泰様を信仰、新しく社殿を建てた事から産泰神社を改められ、信仰も広がったという。以降、遠方の信者の間では産泰講なども作られ、集団でお参りするといった風習も生まれた。この産泰神社への祈願は、子授け・安産のから子供の無病息災といった子宝・子育て関係、更には病気平癒まで広がっている。安産祈願に参拝した妊婦は、神社で底の抜けた柄杓を授与してもらい、出産の時にその柄杓をしっかり握っていると、まるで底が抜けた様に楽に子供が産めるとされている。そして無事に出産したら、その柄杓を神棚に供える事になっている。

出典:
日本の神々 多彩な民俗神たち(新紀元社)

作者ひとこと:
産泰様のデザインは、おくるみの中に入っている赤ん坊姿の神に描きました。

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