自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2020年11月12日木曜日

「羅刹鳥」


羅刹鳥(ラセツチョウ)

中国に伝わる怪物、妖怪または、怪鳥の一種。羅刹鳥は、中国清代の文人・詩人の「袁枚(エン バイ)」の文言小説集「子不語」に登場する怪鳥である。この羅刹鳥は、灰色の鶴の様な姿をしており、しかし鶴よりはずっと大きい怪鳥である(黒鷺の様な姿をしているが、それよりも大きい怪鳥、とも言われている)。この羅刹鳥は普段は墓場に住んでいる。また、この怪鳥は、変身能力を持ち、様々な姿に化ける事が出来る。また、人間に祟る事も出来る。この羅刹鳥は人間の目を好んで喰らう怪鳥である。羅刹鳥は、墓地の死体から出る陰の気が積もり積もって凝り固まり、年を経て怪鳥となったものだと言われている。また、この怪鳥は、羅刹鳥という名前が示す通り、インド伝来の鬼神「羅刹(ラセツ、ラークシャサ)」の種類に属するものと考えられていた。清の雍正年間(1723年~1735年)のこと、北京内城に住むある人が嫁を迎えた。その人の花嫁となった女性が駕籠に乗り北京内城へ、花嫁行列で向かった。花嫁行列一行が古い墓の傍らを過ぎようとすると、その墓から突風が吹き、花嫁の乗った駕籠の周りを数回巡った。この突風によって砂が舞い、行列の人々は舞った砂が目に入って目を開けていられず、この突風に皆がたじたじとなったが、しばらくすると、その突風は治まった。やがて花嫁行列は北京内城の新郎の家に到着し、新郎の家の大広間で駕籠の簾を上げると、駕籠の中には全く瓜二つの二人の花嫁が入っていた。二人の花嫁は、顔ばかりではなく服装までが全く同じで、そこにいる誰もが、どちらが本当の花嫁か見分けがつかなかった。しかたがないので、そのまま婚礼を執り行う事になり、新郎を中央において、その両側に花嫁を配して式を行った。新郎は花嫁が二人になったので、内心は喜んでいた。さて、夜も更けて、新郎は二人の花嫁をつれて床に入る事になった。召使い達は別室に下がり、新郎の両親が寝ついた頃、突然新郎の悲鳴が響き渡ったのである。家の者達が慌てて、新郎と花嫁のいる部屋に駆け付けると、部屋中血だらけで、新郎は寝台の下に倒れており、その周囲は血溜まりとなっており、花嫁の一人も血溜まりの中に仰向けになって気絶して倒れていた。ところが、もう一人の花嫁が何処に行ったのか分からない。部屋の中が暗いので、明かりをつけて照らしてみると、部屋の梁の上に一羽の大きな鳥がとまっている。その鳥は黒っぽい灰色をした鳥で、鉤の様に曲がった嘴を持ち、雪の様に白い大きな爪を脚に生やしていた。人々は手に武器をとって、この怪鳥を攻撃したが、剣や刀などの短い武器では、怪鳥にとどかず役に立たなかった。人々は弓や長矛を持って来て怪鳥を攻撃しようと言い合っている内に、突然この怪鳥が翼を羽ばたきだして、ギャギャと鳴き出したかと思うと、目を青い燐光の様に光らせながら、入り口を突き破って外へと飛び去って行った。倒れていた新郎と花嫁は治療のかいあって一命をとりとめた。新郎と花嫁に何があったのかと、人々が新郎と花嫁に話を聞くと、新郎は「私の左側に寝ていた花嫁が、袖をふると、私の両目が抉り取られて、その痛さに耐えかねて私は失神してしまいました」と言い、また花嫁は、「旦那様が悲鳴を上げた時、私は、どうしたのかと旦那様の方を見ると、あの女は既に鳥の姿になっており、私の目を突いて来ましたので、私もそのまま失神してしまったのです」と言った。新郎と花嫁の二人は、その後、仲がきわめてよい夫婦であったが、あの怪鳥に突かれてしまった目だけは元に戻らず、二人共に盲目になってしまっていた。

出典:
妖怪邸・妖堂 日記帳
幻想世界の住人たちⅢ<中国編>(新紀元社)

作者ひとこと:
羅刹鳥のデザインは、鷺の様な鶴の様な首の長い怪鳥の姿に描きました。首回りの羽毛には目の模様が多数付いています。

0 件のコメント:

コメントを投稿