自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2020年4月18日土曜日

「雪鬼」



雪鬼(ユキオニ)

日本の秋田県鹿角市に伝わる妖怪または鬼。昔、町から遠く離れた山奥に一軒家があって、そこに夫婦が仲良く暮らしていた。ある冬の日、その日は朝から雪が物凄く降り、雪と共に吹く風も物凄く吹きすさぶ日であった。その日、夫は町に用がある為、「こんなに雪の降る日に出掛けなくてもいいのに」と妻が止めるのも聞かず町へと出掛けて行った。あまり雪が降るので妻が何の気なしに外を眺めていると、夫が出掛けて行ってからしばらくして、雪の降る中を妻のいる家に向かってやって来る者がいた。妻はてっきり、あまりの吹雪に夫が町へ行くのを諦めて家に引き返して来たのかと思ったのだが、その者の顔をよく見れば、頭には長い角が生え、口には鋭く尖った牙を生やした鬼であった。妻は慌てて、囲炉裏の上にある火棚の上に上がって隠れた。それから間もなく鬼は家に入って来た。鬼は座敷に上がって来て戸棚や板戸を乱暴に開け放ち妻の姿を捜し回った。鬼はしばらく捜している内に、火棚の上から妻の黒い長い髪が下がっているのを発見し、その長い髪を鬼は引っ張って、妻を火棚の上から座敷に引きずり下ろした。それから鬼は、座敷に引きずり下ろした妻を頭からむしゃむしゃと食ってしまった。やがて、何も知らない夫が町での用を済ませて帰って来た。家に帰って来ると妻の姿は無く、家の中はあちらもこちらも辺り中、血まみれであった。夫は妻が鬼に食べられたのだと気付き「大変だ。妻は鬼に食べられてしまったんだ。今朝行く時、妻が止めたのに……ああ、行かなければよかった。なんというむごい事をしてしまったのか」と出掛けた事を悔やんだが、もうどうしようもない事だった。次の日も、やはり雪が沢山降っていた。夫は「きっと今日も鬼が現れるかもしれない」と思って、囲炉裏に隠れてじっと座って待っていた・すると、大雪の中、やはり鬼がやって来た。鬼は「居るか?」と言って戸口から入って来て、座敷に上がって来た。鬼は囲炉裏の近くにじっと座っている夫の姿を見つけると「なんだ、居るのか。居るのなら返事をしたらいいだろう!」と言った。それでも夫は押し黙って下を向いてじっと座っていた。すると鬼は夫を食べようと、毛むじゃらの大きな手で、夫の肩をむんずと掴み掛かった。その時、夫は振り向きざまに鉈で鬼の額を斬り付けた。額を斬り付けられた鬼は「痛い!」と一声上げて外に飛び出した。夫も外に逃げた鬼の姿を追って外に出てみたが、そこにはもう鬼の姿は無かった。ただ、真っ白い雪の上に鬼の額から流れた血がポタポタと跡になって続いていた。夫はその血の跡を辿って行った。血の跡は山を二つも三つも越えており、その先に一本の大木があって、その大木の所で血の跡は消えていた。夫は恐る恐るその大木の後ろに回ってみると、その大木の洞になっていて、その洞の中で鬼が丸くなって死んでいた。夫は洞に入ろうとしたが「待てよ、本当にこの鬼は死んでいるんだろうか?」と思った。恐る恐る鬼の肩に手をかけて揺すってみたが、鬼は動かなかった。夫はそれを確認し、「鬼はやっぱり死んでいるな。これでやっと、妻の仇討ちが出来た」とそう思うと、夫の目から涙がすっとこぼれた。その帰り道、夫は妻との色々な思い出を思い出しながら、家に帰って来た。しかし、妻の居ない我が家は寒く、また、とても寂しかった。それからしばらくして夫は風邪を引き、その風邪をこじらせて死んでしまった。その様な事があってから、「雪が沢山降る日は外へ出るものではない。雪鬼が現れる」と言われるようになったのだという。

出典:
妖怪尽くし
スーちゃんの妖怪通信

作者ひとこと:
雪鬼のデザインは、人を喰おうと大きな口を開けた鬼の姿に描きました。

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