自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年5月2日火曜日

「岩殿山の悪竜」


岩殿山の悪竜(イワドノサンノアクリュウ)

埼玉県東松山市岩殿の正法寺(しょうぼうじ)に伝わる。比企の山々に住み大風や砂石を吹き散らし、夏に雪を降らせ冬には雷を落として作物や田畑を大いに荒らしていた悪竜。この悪竜は、岩殿の観音の力添えを受けた坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)によって征伐されたという(「坂東観音霊場記」)。岩殿にある不鳴の池(なかずのいけ)は、この悪竜が封じられているといい、ここの池の蛙は決して鳴かないとされている(「川越地方郷土研究」)。また、埼玉県唐子村(現・東松山市)にはこの悪竜の誕生に関する昔話がある。昔、鬼婆が「子供が欲しい」と岩殿の観音に願掛けをしたところ、仁王門に卵が落ちていた。それを拾って帰り抱いて眠ると、女の子を授かった。しかし、その子は七歳になると夜中に家を抜け出して水の中に入るようになり、大蛇の姿になってしまったという(「川越地方郷土研究」)。田村将軍が悪竜退治をした六月一日、悪竜はものすごい雪を降らせた(「坂東観音霊場記」)とされるが、岩殿山の「大蛇」が雪を降らせたので人々がみんなで火を焚いたという年中行事に関する話としても、この悪竜退治が広く語られている。埼玉県の比企・入間郡などの地域では、六月一日に小麦饅頭をつくったり、「尻焙り(しりあぶり)」と称して麦藁を焼いたりした。この火にあたると一年間健康であるといわれる(「川越地方郷土研究」)。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
岩殿山の悪竜のデザインは、頭に一本角を生やした怪竜の姿に描きました。

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