自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年5月23日火曜日

「ア・バオ・ア・クー」


ア・バオ・ア・クー


中国のチトールにあるという、「勝利の塔」に棲む半透明の怪物。その皮膚は桃の様な肌触りであり、体全体でものを見るとされる。この怪物は、普段は塔の下で眠っているが、塔を上るものが現れると、影のように付いて行くという。塔の上階に行くほどに、ア・バオ・ア・クーの体は青い光を放ち、もし塔の頂上に到達するものが現れれば、このア・バオ・ア・クーも完全な姿を獲得できると言われている。このア・バオ・ア・クーという怪物の存在は、実に曖昧である。ア・バオ・ア・クーは、作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの紹介で有名だが、その出所が皆目わからない。ボルヘスによれば、チトールの勝利の塔に、この怪物は棲むという。ア・バオ・ア・クーは、人間の影に敏感で、体全体で物事を見る事が出来、触れた感触は、桃の皮の様だと言われる。しかし、その色は透明に近く、姿形がはっきりしない。ア・バオ・ア・クーは、普段は塔のいちばん下で眠っている。だが、巡礼者が塔の螺旋階段を登りはじめると、目を覚まして階段を登る人間の影にまとわりつく。螺旋階段の外側を登っていくと、透明な体が一段ごとに色を増し、青みがかった光が輝きを放つ。そして、最上段についたときにア・バオ・ア・クーは、完全な姿を現わす。だが、塔の最上段に登った人間は涅槃に達して、いかなる影も落とさなくなるため、影につき従うア・バオ・ア・クーは、いつも最上段まで登れない。完全な姿になれないア・バオ・ア・クーは苦痛にさいなまれ、色も輝きも失い、絹のすれる様な悲鳴をあげる。そして、人間が階段を降りると、最初の段に転がり落ちて次の巡礼者を待つ。ただ、一度だけ、ア・バオ・ア・クーは、最上段に登りつめたことがあるという。

出典:
世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本(PHP文庫)
図説 幻獣辞典(幻冬舎コミックス)

作者ひとこと:
ア・バオ・ア・クーのデザインは、この怪物が「体全体で物事を見る事が出来る」というので、そこからイメージして、体中に沢山の目を持った怪物の姿に描きました。

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