自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年5月4日木曜日

「垢舐」


垢舐(アカネブリ)

江戸(東京都)の堀田家の屋敷の湯殿に出たというもの。小さな子供の様で、浴室をちょろちょろと歩いたりした。屋敷のお局様の入浴中に侵入して来て、背中をぺろっとなめた事があったとも語られる。玄紀先生「日東本草図纂(にっとうほんぞうずさん)」(巻十二)にみられる話で、いっしょに載せられている別の話(「或浴室」とあるので堀田家とは別の湯殿の話のようである)では、朝に召使いが浴室の掃除をしていると何か蠢いているものがいたので、手で押さえつけて捕まえようとしたが、不意に跳ね返されて逃げられ、あとにはブチュッとした卵の黄身の様なものがあっただけだった、と語られている。後者は特に「あかねぶり」とはされていないが、似たような浴室の妖怪の例として収録されたもののようである。絵のみで具体的な話を持ちあわせていない「垢嘗(アカナメ)」たちとの前後関係ははっきりしない。しかし、日東本草図纂の「垢舐」の項目内には、この二つの話にそのまま続けて「諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)」(巻一)の「尼が崎伝左衛門湯治してばけ物にあひし事」にある有馬温泉(兵庫県)に出た女の妖怪(背中の垢掻きをして来て、肉を取ってしまう)と似た内容の話が出て来る点を考えると、この「垢舐」の話自体も先行する版本や写本にあったものなのかも知れない。

出典:
日本怪異妖怪事典 関東(笠間書院)

作者ひとこと:
垢舐のデザインは、長い舌を出した妖怪の姿に描きました。

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