自己紹介

このブログでは、僕が描いた神話や伝説などに関する絵や、その絵の解説を載せています。
(イラスト、記事の執筆:マゴラカ、ワンタ) ※2024年度より、月・水・金曜日の21時に更新していきます。

2023年5月5日金曜日

「アダド」


アダド

メソポタミア神話に登場する神の内の1柱。アダドは、手に稲妻の光の穂を持った戦士の姿で現される天候神である。アダドという名は、アッカド語の呼び方で、シュメール語では「イシュクル」となる。その信仰の歴史は古く、紀元前3000年以前の初期王朝から存在が見られるという。イシュクルは嵐、雷、洪水、風などを司り、象徴は稲妻。乾燥した大地と二つの大河に左右される水事情を反映した、厳しい自然の神格化と思われる。イシュクル信仰の中心地はカルカル、風を表す文字が名についた街だ。一方、アッカドのアダドは慈雨、渓流など恵みの水を象徴する。このアダド、通常は天空の神「アヌ」の息子とされるが、古くはアヌの子である大気の神「エンリル」の息子であったともされる。アダドの妻は農耕の女神「シャラ」である。このアダドは、厳しい自然と恵みの雨の二面性が神格化された姿と考えられている。このアダドの二面性は神話の中にも見られる。洪水神話でアダドは神々に頼まれて天候を操った。エンリルが人間を減らそうとしてアダドに旱魃を起こさせた時は、人間が供え物をして祈祷すると、アダドは機嫌を良くして雨を降らせたという。天候が予測不能なのと同様に、アダドの行動も気まぐれなのだ。だが再度、エンリルが人間を滅ぼそうとした時には、要請のとおりに配下の「シュラット」と「ハニシュ」を従えて雨嵐を起こして、世界を洪水で覆ってしまった。アダド信仰は南部よりもメソポタミアの北西で盛んだった。シリアやパレスチナでは「ハダド」と呼ばれ、ミタンニ王国をつくったフルリ人は自身の雷神「テシュプ」とアダドとを同一視した。ユーフラテス川の中流域にあったマリにおいて、アダドは最高神に近い重要な神で、王女イニブ・シナはアダドの女大神官であったという記録が残る。地中海東岸のウガリト王国でも、アダドは彼らの神話の神と習合した。その神とは「主人」を意味する「バアル」。バアルは様々な神の神性を集めたものともいわれ、その中心的な神性をアダドが形成していたという。片手に持つ棍棒を振り上げた戦士の姿で描かれるところも、バアルとアダドはそっくりだ。

出典:
ゼロからわかるメソポタミア神話(イースト・プレス)

作者ひとこと:
アダドのデザインは、頭に牡牛の角を生やし、手に稲妻を持った神の姿に描きました。

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