チャロンアラン
インドネシアのバリ島に伝わる舞踊劇の一つ「チャロナラン」や様々な伝説に登場する強大な魔力を持った魔女。バリの王国の王妃であったチャロンアランは、魔女である事が王にばれて、娘共々、王国を追放されてしまった。やがて王が死んで自由を取り戻したチャロンアランは、太后として王国に戻り、バリをその手中におさめた。しかしチャロンアランは、亡き王にされた仕打ちを未だに忘れ去っておらず、その恨みを王子「エルランガ」に果たそうと思った。この時エルランガは、その才覚によって、ジャワの王国の王になっていた。チャロンアランとエルランガの確執はやがてバリ対ジャワの戦争にまで発展した。チャロンアランは魔女「ランダ」に変化すると、使い魔である「レヤック」をジャワに放って、ジャワの国土に疫病や災害をまき散らした。エルランガはバリに軍勢を送ってチャロンアランが変化したランダを討ち取ろうとするが、魔力も神の加護もない身ではとうてい勝ち目が無かった。ランダは勝利を目前にして喜び、辺りを踊り回った。一方、形勢が不利なエルランガは、秘かに別の策を考えていた。チャロンアランには娘が一人いたが、彼女の親であるエルランガが恐ろしいために、この娘には誰一人として言い寄ろうとする男はいなかった。そこでエルランガは、とある若者をバリの宮廷に送って、チャロンアランの娘と親密な仲にさせて、魔女チャロンアランの秘密をうまく探り出させたのである。こうしてチャロンアランの秘密を手に入れたエルランガは、今度は僧侶「ムプ・バラタ」をバリに送り込んだ。ムプ・バラタは、若者が探り出したチャロンアランの秘密の情報をもとに魔女チャロンアランの魔力を封じ、呪文によってランダ(チャロンアラン)を滅ぼしたのである。しかしこれでは、魔女の怨念がまたいつか悪霊として復活してくるかも知れない。そこでムプ・バラタは再び呪文によってランダ(チャロンアラン)の心臓を動かし、彼女を蘇らせた。蘇ったランダ(チャロンアラン)に、ムプ・バラタは事の道理を説き、彼女に悔い改めて懺悔するように言う。ムプ・バラタにそう言われて、自らの一生を振り返ったランダ(チャロンアラン)は、死に望んで改心し、呪文から解放されて天界へと旅立ったのである。
出典:
幻想動物の事典
幻想世界の住人たちⅡ(新紀元社)
作者ひとこと:
チャロンアランのデザインは、豪華に着飾った后の姿をした魔女に描きました。
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